http://digital.asahi.com/articles/ASJ237V5VJ23UTIL05X.html?rm=920
朝日新聞デジタル
「自宅に1人」見図り強制捜査 清原容疑者本格内偵1年
阿部朋美 後藤遼太 八木拓郎2016年2月4日05時16分
引退後の清原容疑者をめぐる動き
覚醒剤所持の疑いで逮捕された元プロ野球選手の清原和博容疑者(48)。警視庁は1年ほど前から内偵捜査を本格化させていた。暴力団関係者の関与や再犯率の高さが特徴の覚醒剤事件。薬物犯罪に詳しい人たちは、影響の大きさを心配し、社会復帰を支えるシステムの必要性を訴える。
清原容疑者宅のゴミから覚醒剤成分 強制捜査につながる
特集:清原容疑者逮捕
薬物捜査の関係者によると、清原容疑者の薬物疑惑は数年前から浮上。2014年3月には週刊文春が覚醒剤を使用している疑いを報じた。清原容疑者は別の週刊誌などで疑惑を否定していたが、警視庁は1年ほど前から、薬物捜査が専門の組織犯罪対策5課による内偵捜査を本格化させた。
警視庁は、昨春ごろに薬物事件で逮捕した清原容疑者の知人と称する人物から「(清原容疑者と)一緒に覚醒剤を使ったことがある」との供述を得たという。だが、当時は具体的な証拠を得るまでに至らず、捜査を続けた。
昨夏には、複数の週刊誌が薬物疑惑や立件の可能性を報道した。捜査関係者は「このころから清原容疑者の行動パターンが変わっていった」。自宅マンションや車を売却したのも確認したという。
警視庁はその後も、都内の複数のホテルや自宅などを転々とする生活だった清原容疑者について行動確認を継続。その結果、覚醒剤を所持している疑いが強いとの確証を得て、2日夜に強制捜査に踏み切った。「預かっただけだ」「他人のものだ」といった言い逃れができないよう、自宅に1人でいるところを狙ったという。(阿部朋美)
■「仕事のため」手を染めるケース目立つ
俳優、タレント……。有名人の薬物犯罪は後を絶たない。薬物問題に詳しい小森栄弁護士(東京弁護士会)は「芸能界が薬物にまだまだ甘い。芸能人御用達の密売人もいる」と指摘する。
小森弁護士によると、近年目立つのが「職業型」の薬物犯罪。仕事や生活のストレスから逃れ、加齢で衰える体力や集中力を補おうと、社会的地位のある人も手を出すという。清原容疑者について「現役引退後に芸能活動など慣れない仕事を始め、私生活でも離婚があった。生活を立て直せずのめり込んでしまったのでは」と推測。「有名人の薬物使用は社会的悪影響が大きい。若者が『清原も使っていた』と安易に考えないといいが」と危惧する。
ログイン前の続き全国薬物依存症者家族会連合会の林隆雄理事長は「今までの生活をすべて投げ出し、ゼロからやり直す覚悟が無いと薬物依存からは抜け出せない。有名人だと難しい」と心配する。薬物の多幸感を味わうと、自分一人ではやめるのが難しく、施設などで時間をかけて治療する必要がある。
林さんは「日本社会は薬物犯罪者に対して刑罰を科すだけで、社会復帰を支えるシステムが未成熟だ」と指摘。「芸能人が逮捕される度にマスコミが騒ぎ、罰せられて終わり。その繰り返しでは、薬物依存者の再発を防げない」と話す。(後藤遼太)
■薬物事件8割が覚醒剤
国内の薬物事件の最重要課題は依然として覚醒剤だ。警察が年間に薬物事件で摘発する容疑者の8割超が覚醒剤事件だ。
覚醒剤事件の特徴の一つは、暴力団関係者が関与している比率が高いことだ。警察庁によると、2014年に摘発された覚醒剤事件の容疑者は1万958人で、このうち暴力団関係者が6024人(55・0%)に上った。05年以降、過半数を占める状況が続く。警察庁幹部は「暴力団の資金源になっている可能性が高く、強い関与状況が続いているのではないか」とみる。
再犯率の高さも突出している。14年は7067人で64・5%を占め、増加傾向にある。初犯が約8割を占める大麻や「ゲートウェー・ドラッグ(入門薬物)」と呼ばれる危険ドラッグとは対照的だ。
覚醒剤の単純所持や使用、譲渡などの容疑で摘発された「乱用者」の平均年齢は41・7歳。大麻(31・9歳)や危険ドラッグ(33・4歳)と差が大きく開いた。覚醒剤は30歳未満の割合が低い。警察庁は、覚醒剤はほかの薬物と比べて依存性が高く、中年になってもやめられず使用を続けているとみている。(八木拓郎)
朝日新聞デジタル
「自宅に1人」見図り強制捜査 清原容疑者本格内偵1年
阿部朋美 後藤遼太 八木拓郎2016年2月4日05時16分
引退後の清原容疑者をめぐる動き
覚醒剤所持の疑いで逮捕された元プロ野球選手の清原和博容疑者(48)。警視庁は1年ほど前から内偵捜査を本格化させていた。暴力団関係者の関与や再犯率の高さが特徴の覚醒剤事件。薬物犯罪に詳しい人たちは、影響の大きさを心配し、社会復帰を支えるシステムの必要性を訴える。
清原容疑者宅のゴミから覚醒剤成分 強制捜査につながる
特集:清原容疑者逮捕
薬物捜査の関係者によると、清原容疑者の薬物疑惑は数年前から浮上。2014年3月には週刊文春が覚醒剤を使用している疑いを報じた。清原容疑者は別の週刊誌などで疑惑を否定していたが、警視庁は1年ほど前から、薬物捜査が専門の組織犯罪対策5課による内偵捜査を本格化させた。
警視庁は、昨春ごろに薬物事件で逮捕した清原容疑者の知人と称する人物から「(清原容疑者と)一緒に覚醒剤を使ったことがある」との供述を得たという。だが、当時は具体的な証拠を得るまでに至らず、捜査を続けた。
昨夏には、複数の週刊誌が薬物疑惑や立件の可能性を報道した。捜査関係者は「このころから清原容疑者の行動パターンが変わっていった」。自宅マンションや車を売却したのも確認したという。
警視庁はその後も、都内の複数のホテルや自宅などを転々とする生活だった清原容疑者について行動確認を継続。その結果、覚醒剤を所持している疑いが強いとの確証を得て、2日夜に強制捜査に踏み切った。「預かっただけだ」「他人のものだ」といった言い逃れができないよう、自宅に1人でいるところを狙ったという。(阿部朋美)
■「仕事のため」手を染めるケース目立つ
俳優、タレント……。有名人の薬物犯罪は後を絶たない。薬物問題に詳しい小森栄弁護士(東京弁護士会)は「芸能界が薬物にまだまだ甘い。芸能人御用達の密売人もいる」と指摘する。
小森弁護士によると、近年目立つのが「職業型」の薬物犯罪。仕事や生活のストレスから逃れ、加齢で衰える体力や集中力を補おうと、社会的地位のある人も手を出すという。清原容疑者について「現役引退後に芸能活動など慣れない仕事を始め、私生活でも離婚があった。生活を立て直せずのめり込んでしまったのでは」と推測。「有名人の薬物使用は社会的悪影響が大きい。若者が『清原も使っていた』と安易に考えないといいが」と危惧する。
ログイン前の続き全国薬物依存症者家族会連合会の林隆雄理事長は「今までの生活をすべて投げ出し、ゼロからやり直す覚悟が無いと薬物依存からは抜け出せない。有名人だと難しい」と心配する。薬物の多幸感を味わうと、自分一人ではやめるのが難しく、施設などで時間をかけて治療する必要がある。
林さんは「日本社会は薬物犯罪者に対して刑罰を科すだけで、社会復帰を支えるシステムが未成熟だ」と指摘。「芸能人が逮捕される度にマスコミが騒ぎ、罰せられて終わり。その繰り返しでは、薬物依存者の再発を防げない」と話す。(後藤遼太)
■薬物事件8割が覚醒剤
国内の薬物事件の最重要課題は依然として覚醒剤だ。警察が年間に薬物事件で摘発する容疑者の8割超が覚醒剤事件だ。
覚醒剤事件の特徴の一つは、暴力団関係者が関与している比率が高いことだ。警察庁によると、2014年に摘発された覚醒剤事件の容疑者は1万958人で、このうち暴力団関係者が6024人(55・0%)に上った。05年以降、過半数を占める状況が続く。警察庁幹部は「暴力団の資金源になっている可能性が高く、強い関与状況が続いているのではないか」とみる。
再犯率の高さも突出している。14年は7067人で64・5%を占め、増加傾向にある。初犯が約8割を占める大麻や「ゲートウェー・ドラッグ(入門薬物)」と呼ばれる危険ドラッグとは対照的だ。
覚醒剤の単純所持や使用、譲渡などの容疑で摘発された「乱用者」の平均年齢は41・7歳。大麻(31・9歳)や危険ドラッグ(33・4歳)と差が大きく開いた。覚醒剤は30歳未満の割合が低い。警察庁は、覚醒剤はほかの薬物と比べて依存性が高く、中年になってもやめられず使用を続けているとみている。(八木拓郎)