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混迷の日韓関係、処方箋は?(創論) 姜昌一氏/小此木政夫氏

2018年01月30日 07時19分29秒 | 市場動向チェックメモ
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26275180Z20C18A1TCR000/?n_cid=DSTPCS001

混迷の日韓関係、処方箋は?(創論) 姜昌一氏/小此木政夫氏
時論・創論・複眼
2018/1/30付

慰安婦問題を巡る15年の日韓合意が揺らぐ(ソウル)=共同

 日韓関係が再び難路に入り込んでいる。文在寅(ムン・ジェイン)政権は「未来志向の韓日関係」をうたう一方、2015年の日韓合意では「従軍慰安婦問題を解決できない」と表明。慰安婦を象徴する少女像設置は韓国内外に広がる。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の台頭が東アジア情勢に影を落とすなか、日韓の混迷脱出に処方箋はあるか。韓国の姜昌一・韓日議員連盟会長と小此木政夫慶応大名誉教授に聞いた。

◇  ◇

■文氏のジレンマ 理解を 韓日議員連盟会長 姜昌一氏

カン・チャンイル 日韓関係史の学者出身。与党「共に民主党」所属。著書に「近代日本の朝鮮侵略と大アジア主義」。66歳。

 ――慰安婦合意は日韓間の正式な合意です。文大統領は再交渉を求めないとしつつ、「重大な欠陥がある」と守る意思を示していません。

 「我々は安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の2人の間の合意にすぎず、国家間の合意とはみなさないと主張してきた。合意には手続きと内容に様々な問題点があることが確認された。どの国の政府も個人の請求権は放棄することができないのに、そこに立ち入り、被害者たちの同意を得ていない。日本でも韓国でも国会は同意しておらず、法的拘束力がない」

 「政府は継続性をもっており、政府間合意を破棄はできない。それで中途半端な発言になった。国内問題だけを考えれば感情的には破棄したいが、韓日は北朝鮮の核・ミサイル挑発に直面する運命共同体。合意破棄で関係を壊すことはできなかった。文大統領が話したのは、韓国国民や全世界の人たちが理解できるよう自発的に心を込めて立場を表明して下さいという日本へのお願いだ。文政権のジレンマを日本は理解してほしい」

 ――日韓合意では慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認しています。

 「韓国側が当初主張したのは『最終的かつ不可逆的な反省と謝罪』だ。日本政府は歴史問題について何度も反省する、謝罪すると言っておきながら、政権が代わると継承しなかった。合意文にも日本政府が責任を痛感し、安倍首相がおわびと反省の気持ちを表明するとあるが、その後の日本政府に謝罪や反省の姿勢はみえない。安倍氏の国会答弁などを聞くと韓国国民は日本には真心がないと感じる」

 ――ソウルや釜山の日本公館前に市民団体が設置した慰安婦少女像は、日本の対韓感情を悪化させています。

 「私個人は日本公館前に置くのは国際儀礼上問題があると思うが、強制撤去は難しい。ソウルの像はすでに歴史的な遺跡になっており(撤去・移転は)簡単ではない。釜山の像は日本の観光客が多く訪ねる公園や埠頭に設置するのがよいと思うときもある」

 ――日本には韓国が対北朝鮮の制裁包囲網から離脱するのではとの懸念があります。

 「韓国国民はむしろ日本が北朝鮮問題を軍事大国化に利用しないか懸念する。日米はアジアや世界の平和という大きな観点で問題を解決する意思と努力をみせてほしい」

 ――政治対立の半面、日韓経済は相互依存が強まっています。相手国の文化にひかれる若者もたくさんいます。

 「韓日間には(豊臣秀吉が朝鮮に出兵した)文禄・慶長の役や1910年の韓国併合があったが、ドイツやフランス、英国が数十年ごとに戦争していたのに対し、我々は互いの文化を伝えたり、学んだりしてきた。経済や文化のつながりが深く、民間交流も多いのに、政治家が相手国を利用し両国関係を悪化させた。悪口を言い人気を上げる近視眼的な政治行為ではなく、大きな歴史をみながら韓日関係を考えなければならない」

 ――保守派の安倍氏と進歩(革新)派の文氏という組み合わせをどうみますか。

 「韓国は進歩と保守の区別が難しいが、外交は国益第一に考える。経済は大企業中心の保守と、庶民中心の進歩で違う。安倍氏には日本一国主義を超え、アジア全体をみた寛容な姿勢を望みたい」

 ――歴史認識の違いを抱えながら、日韓はどう付き合っていくべきでしょうか。

 「3路線が必要だ。国の最も大きな役割は政治、外交と安全保障。経済や文化交流は民間が担うもので、すでに緊密だ。歴史問題は市民社会団体が中心になっている。朴前政権の対日政策が失敗したのは、3つをすべて国がやろうとしたため。核・ミサイル問題は国の最重要領域で、そのため(両首脳間の)シャトル外交も進めるべきだ」

 「韓日共に『易地思之』(相手の立場で考えること)の成熟した姿をみせる必要がある。今年は金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相の日韓共同宣言から20周年で、新宣言を両国政府に要請しようと考えている。(日韓議連会長の)額賀(福志郎)先生も大賛成してくれた」(聞き手は峯岸博)

◇  ◇

■「歴史問題」分離は画期的 慶応大名誉教授 小此木政夫氏

おこのぎ・まさお 朝鮮半島政治を研究。現代韓国朝鮮学会会長、慶応大法学部長などを歴任した。72歳。

 ――日韓慰安婦合意を守ろうとしない文政権の態度を巡り、日本国内では批判の声も上がっています。

 「韓国の慰安婦支援団体はきわめて原理主義的で、政府間の合意順守より合意内容の正しさの点検に熱中している。(前政権を罷免に追い込んだ)ろうそく集会から誕生した文政権は、そうした運動団体に対して融和的にならざるを得ず、これで収まるかは予断を許さない。日本側が違和感を持つのは当然だ」

 「文政権は歴史問題と日韓の未来の関係を分離して努力する『ツートラック』を掲げている。過去について論争しないわけではないが、将来とはなるべく切り離し、未来に向けた関係をつくろうとしている。日本も、韓国が合意を順守するかどうかの問題と、日韓の未来関係は別のものととらえた方がいいだろう」

 ――南北対話も動き出しています。日本への影響は。

 「今回の南北対話は緊急避難的な印象を受ける。北朝鮮を巡って緊張が高まるなかで(米朝の)武力衝突を避けねばならないという懸念が南北で共有されている。北朝鮮はまず韓国から始め、今秋の米国の中間選挙前までに米朝対話を目指す『先南後米』の姿勢だ。米国との対話に必要なら南北首脳会談をしてもいい、と考えているだろう」

 「今回の南北対話は日本に直接関係がないとみる人も多い。しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、米国を対話の席に引っ張り出すために韓国との対話だけでは不満なはずだ。北朝鮮は切り札として日朝交渉を持ちかけてくる可能性もある」

 ――領土問題や歴史問題を抱える日韓関係は現政権下でどうなっていくでしょう。

 「日韓双方が満足するような関係ができるのは簡単ではない。しかし、文政権がツートラック方式を掲げているのは画期的なことだ。朴槿恵(パク・クネ)前政権の対日外交の失敗から学んだ教訓であり、前政権との差別化政策でもある。1998年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相が緊密な友好関係を掲げて署名した日韓共同宣言の意義を再評価しているのもそのためだ。今年は共同宣言から20周年だ。文政権の掲げるツートラックが可能ならば、日本にとっても良いことだろう」

 「韓国と北朝鮮は分断国家だということを念頭に置くべきだ。東西ドイツや南北ベトナムもそうだったが、北朝鮮と韓国、どちらの政権が正当なのか論争は続いている。たとえば文氏が(日本の植民地時代に朝鮮半島出身者の独立運動の拠点だった)中国・重慶の大韓民国臨時政府を視察すると、歴史を掘り起こして日本を批判していると考えがちだ。だがこうしたパフォーマンスは、韓国の歴史の正当性を主張するために北に向けられたものだ。歴史問題や領土問題は、韓国が日本に少しでも譲歩すれば北朝鮮から痛烈に批判される」

 ――中国の台頭は日韓関係に影響するでしょうか。

 「中韓関係はまだ形成途上だ。朴前政権は中国傾斜と批判されたことがあった。しかし中国側は、韓国が米国との同盟関係を捨ててまで中国に肩入れすることはない、と見切っている面がある。中国が平昌冬季五輪に派遣するのは共産党序列7位の韓正氏といわれているが、こうした点にも中国の考えが表れている」

 「ただ、経済関係は密接であり、中国はそれをてこに韓国に影響を及ぼそうとするだろう。韓国も中国リスクに気づき、(生産拠点の中国一極集中を避ける)チャイナプラスワンの動きが出ている。中国経済の存在は大きく、韓国外交にとって、米国の次に重要な国は中国だ。残念だが今後、日本が中国より注目されることはないだろう」

 ――歴史問題などで対立する一方、昨年の訪日客は韓国が中国に次いで2位です。

 「韓国は儒教の伝統から論争好きだが、基本的に議論と好悪の感情は無関係だ。世論調査があれば公式の態度として『歴史問題も領土問題もある』と否定的に出るが、決して日本嫌いではない。国家間で論争があるから観光客が来なくなるという論理は、韓国人には理解できないだろう」(聞き手は松本史)

■〈聞き手から〉先を見据えて率直な外交を

 韓国の文政権にとって慰安婦問題は「国内問題」の要素が大きい。朴前政権の排他性や密室性を糾弾するうえで、日韓合意が格好の標的になっている。その振る舞いが外交にどうインパクトを与え、韓国から日本人観光客の足を遠のかせているかを自覚していない。国際感覚に欠ける言動は常に日韓関係のリスクだ。

 それでも文政権がツートラック(2路線)方式の対日政策を掲げているのは「画期的だ」と小此木氏は注目する。日本に「外交戦争も辞さない」と威嚇した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権や朴政権と比べ、過去を外交舞台から切り離し、日本と未来に向けた関係を築こうとしている。

 歴史学者の姜氏は、数千年単位でみれば日韓ほど仲良く暮らしてきた隣人は世界でも珍しいと話す。経済や文化は民間レベルで深く結びついている。日韓の不仲を喜ぶのは北朝鮮や中国だ。国内でともに「1強」をなす安倍氏と文氏。いずれも大型の国政選挙を予定していない今年、両国には「先」を見据えて言うべきことを言う外交術も問われる。

(ソウル支局長 峯岸博)

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