天井から吊るした器具の動きに合わせて下の面に白い線や模様が描かれ、すぐ消えてしまいます。
名古屋市民ギャラリー矢田(地下鉄ナゴヤドーム矢田下車)で開催中の市内在住の現代工芸作家・秋田和弥さん(63歳)の個展。なぜ?首を傾げつつ見とれ、楽しめました。9月1日(日)まで。
秋田さんは自動車メーカーの技術部門を3年前に定年退職。素材を加工したりエレクトロニクスなどを使って、見る人の感性を刺激するアートの創作に取り組んでいるそうです。
定年後の趣味とはいえ、その本気度は驚くばかり。複数の大学の研究生や聴講生として学び、研究に没頭、わずか3年間なのに次々と成果を発表しています。
最初に手掛けたのは、地元特産の三河森下紙を使った造形。三河森下紙は現代工芸美術の先駆者として知られる藤井達吉(1881~1964)によって、美術工芸の小原和紙としての地位を確立したのですが、一方で最大の消費先だった番傘が消えて衰退していることに関心を持った秋田さんは、行灯や石ボタルなどといった作品を創作してきました。
「紙は面白いですが歴史が長いので新しい作品作りは大変です」と秋田さん。現在向き合っているのが今回の展示作品というわけです。
熱によって物質の色が変化するサーモクロミックという顔料を接着剤とともに塗った紙を板に張り、上から吊るした管を左右前後に揺らして50~60度前後の空気を吹き当てます。
するとここに掲載した写真のように白い線や模様が描かれ、消えていく仕組みのようで、作品名もずばり「現れて・消えていく」というわけです。
見ていると揺れ方によって楕円形や四角形、曲線などさまざま。同じ模様は出現しません。
筒先と面の距離や室内の気温でも違います。秋田さんの勧めで自分の手のひらを面に当ててみました。手が冷たいと薄くしか白色が付かないようです。
開催中のあいちトリエンナーレでも、いろいろな作品を見かけますが、この「現れて消えていく」のような作品だと子どもだけでなく大人たちも結構楽しめそうだな、と思いました。
僕の手のひらを置いてみました