黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

好転反応という言葉のマジック

2010-08-23 12:48:08 | 院長のひとり言
「好転反応」という言葉があります

もともとは東洋医学(鍼・灸・あん摩、漢方薬)で使われていた言葉です
あん摩では「もみ返し」、鍼灸や漢方薬などでは「瞑眩(めんげん)」ともいわれるものです
治療の過程で出る一時的な体の反応を示す言葉として使われてきました

治療後1日~2日程度ででる場合がおおく
あん摩ではだるさやほてり、施術部の違和感などとしてでてきたりすることがあり
鍼・灸では貧血やだるさや眠気、ほてりがでることがあります


でも、適切な技術で適量の刺激により治療が行えていればこういった反応がでることはすくないため、最近の鍼・灸・あん摩の世界では「好転反応」という言葉を使用する治療院は少なくなっているように思います
当院でも「好転反応」という言葉は使わないように心がけています
好転反応という言葉を使う怖さを知っているためです

このため治療にいらしていただいた場合
「明日違和感やもみ返しがでるようなら、お手数ですがもう一度ご来院ください」
と患者さんには治療後必ずお伝えするようにしています
もちろんそういった場合は治療のし直しですから費用はいただきません


好転反応という言葉を使う怖さというのは
治療の失敗や副作用を隠してしまうという点です

この「好転反応」という言葉を初めて知ったのは健康食品の開発会社に勤め始めたころ
本来は東洋医学で用いられてきたはずの言葉ですが健康食品などの代替医療の現場でよく用いられています

○この反応は体の中の毒素が一気に排出されるから発生するもので、一時的なものです。
○この反応が出たということは、治療効果がある事の証明です。ここでやめてしまっては、苦労の甲斐がありません。

 (上記2例文はWikipedia 「好転反応」より引用) 
などというようにセールストークとしてマニュアル的に組み込まれているような感じでした


入社したすぐのころ
「好転反応という言葉を使うのはやめるように」
としきりに社長が言っていました
健康食品を社会的にもキチンとしたものにしたかったんでしょう
アレルギーなどの副作用や効果がなく症状を悪化させるようなケースを「好転反応」という言葉の中に埋没させるのは良くない
まずはすべてクレームとしてあげてから検証するようにとの考え方です

この社長の方針は正しかったと思います
「好転反応」という言葉は売る側にとって都合の良い言葉のマジックです
副作用や効果のないケースをすべてひっくるめて責任転嫁できるわけですから

だからこそ真摯に取り組もうというのであれば使わないはずです
「好転反応」という言葉を聞いたらまず疑ってかかる
それぐらいでもいいと思います
少なくとも「好転反応」を使用するのであれば「副作用」「無作用」をあわせた3つをきちんと説明しなければなりません

ちなみに医薬品でないもの(健康食品やレメディーやメディカルハーブ等)を販売する際に「好転反応」という言葉を使用すると薬事法違反となります
そういう意味でもマトモな業者なら「好転反応」なんて言葉は使わないはずなんですが