黒砂台鍼灸あん摩治療院

鍼灸院の日常日記

自然療法と乳児死亡事件 代替医療について

2010-08-21 13:07:17 | 東洋医学について
livedoor「BLOGOS」で見つけた記事に非常に興味深くかつ鍼・灸・あん摩という代替医療にかかわる人間として考えさせられる記事がありました
これについてずっと考えていたので少しだけ

この記事で言いたいことはホメオパシー療法の糾弾では有りません
代替医療に関わる人間として思うところを素直に述べていきます

詳しくは上記BLOGOS記事で読んでいただきたいのです
発端となった読売新聞の記事、わかりやすいホメオパシーの説明を行っている毎日新聞の記事、そして日本でホメオパシー療法を薦める日本ホメオパシー医学協会に詳細に取材を行った朝日新聞の記事と縦横無尽にリンク引用を行いすばらしい記事になっています

発端となった7月9日付けの読売新聞の記事

「ビタミンK与えず、自然療法の錠剤」乳児死亡で助産師を提訴…山口

 山口市の助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。
助産師は自然療法の普及に取り組む団体に所属しており、錠剤はこの団体が推奨するものだった。母親(33)は助産師を相手取り、約5640万円の損害賠償訴訟を山口地裁に起こした。
母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれ、母乳のみで育てたが、生後約1か月頃に嘔吐(おうと)し、山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。
新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚労省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促し、特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。
しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。
助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。日本助産師会(東京)によると、助産師はビタミンKを投与しなかったことを認めているという。助産師は読売新聞の取材に対し、「今回のことは何も話せない。今は助産師の活動を自粛している」としている。
ビタミンK欠乏性出血症 血液凝固因子をつくるビタミンKが不足して頭蓋(ずがい)内や消化管に出血を起こす病気。母乳はビタミンKの含有量が少ない場合がある。   
2010年7月9日読売新聞より


この新聞記事には書かれていませんが助産師がビタミンKのかわりにレメディーと呼ばれるホメオパシー療法で用いられる錠剤との事です

この後、朝日新聞ならびに同新聞のネット記事等でで詳細な取材による追記がなされています

問われる真偽 ホメオパシー療法 
気が遠くなるほど薄めた「毒」を飲むことで病気を治す、という欧州生まれの代替医療ホメオパシーが「害のない自然な療法」と日本でも女性層を中心に人気が高まりつつある。だが、この療法が公的医療の一角を占める英国は今年、議会委員会がその効果を全面否定、公的医療から外すよう政府に勧告した。日本でも裁判が起こされるなど、その効果を巡ってホメオパシーは批判対象にもなってきている。(長野剛)
2010年7月31日朝日新聞東京本社朝刊beより抜粋


「問われる真偽 ホメオパシー療法」
↑上記に序文を引用した朝日新聞apital掲載の記事へのリンクです
「apital ホメオパシー特集」
↑以降もかなり詳細な記事の掲載が続いています


これら朝日新聞の記事に対しては取材元である日本ホメオパシー医学協会からコメントが出されています
「日本ホメオパシー医学協会のコメント」




非常に残念な事件ですが、これは断じてホメオパシーのみに限った問題というわけではありません


自分も含めての話ですが代替医療に関わる者にとってもっとも怖いのは行き過ぎた自己肯定と他者否定だとおもうんです

誰しも自分が行っていることは正しいと思いたいものです
自分にしてもそうです
鍼も灸もあん摩も大好きです
すごく良いものだと思っています
だからこそ気をつけたいとも考えています

自己を肯定し他者を否定することは簡単です
治療と言う領域ならばもっと簡単です
自分が神であるかのように患者にふるまえばいいのですから

そうなってはならない、そうならない為にも我々代替医療に関わるものは学ばなければならないと思っています
自分で言えば鍼・灸・あん摩を
そして何より現代医学について学んでいかなければならないのだと思います

そして患者さんを前にしたら絶えず考えるんです
この患者さんに鍼・灸・あん摩の治療をしていいのか?
お医者さんに行って貰うべきではないのか?
その判断をした上で確信を持って治療するべきなんです

代替医療に関わる人間は誰よりも現代医学の知識に貪欲でなければならないと自分は考えています
他者を不幸にする“はだかのおうさま”にならないためにもです






続きにも少しだけ書いています







以下に日本ホメオパシー協会のコメントを引用させていただき、自分の意見を少しだけ述べさせていただきます

朝日新聞等のマスコミによるホメオパシー一連の報道について その1
8月5日付朝日新聞朝刊、社会面にトップに掲載されている(1)~(8)の記事内容について、日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)からコメントします。
http://www.asahi.com/national/update/0804/TKY201008040482.html


この山口地裁の訴訟については、昨日(8/4)、第1回の口頭弁論があり、JPHMA会員の助産師側は、損害賠償請求の棄却を求めています。つまり、原告の請求事実を認めず、裁判の場で争い、事実を明らかにしていくというプロセスに入ったので、真相は裁判を通じて今後明らかになっていくものです。このように事実に争いがある中で、予断をもったマスコミの報道姿勢に基づく一方的な内容の記事には、大きな問題があると考えています。
また、本件に関連したマスコミ報道の中で、あたかも乳児死亡がホメオパシーに原因があるかのような印象をもつような記事も見かけますが、そもそもホメオパシーレメディーをとって死亡することはありません。
この記事を読んだ読者が誤解しないように、誤解しそうな部分を抜粋し以下にひとつひとつ説明していきます。
なお、山口での訴訟に関係する内容については、現在民事訴訟が進行中ですので、JPHMAとしては現段階でのコメントを控えさせていただきます。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者


係争中の事件について安易に意見を述べるのは問題がありますが一言だけ
この件に関してはホメオパシーレメディーに原因がないとする協会の言い分
これに関しては同感です
限りなく糖質のみで形成されているレメディーの摂取は直接の死因にはなりえないでしょう
但し、この場合のもっとも大きな問題は、ホメオパシーレメディーに死亡原因が有るか無いかではなく、有用性が認められているビタミンKの予防投与を行わず、“正当な予防の機会を損失させた”ということのはずです


(1)「ワクチンを打つなとか、薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーグループも存在する」

ホメオパシーを医者だけに推進している、川嶋朗准教授の発言として掲載されていますが、この記事を読んだとき、人はJPHMAがあたかもそのグループであると誤認してしまうことが懸念されます。川嶋氏は以前にも、このように事実でないことをJPHMAの問題責任のように、ある雑誌に発言していたことがありました。
川嶋氏に、その事実の確認を依頼しましたが、なかなか回答が得られず、弁護士を通じて、回答するように抗議をした結果、最終的には、JPHMAの問題ではないということを明らかにした事例がありました。
JPHMAは、法律的に義務化されていない限り、国民1人1人がワクチンやクスリの害と効用をしっかりと知り、選択すべきものであると認識しています。当然、ワクチンを打つなとか、薬を飲むななど主張する立場でもなく、そのような主張を行っているという事実も全くありません。国民1人1人が判断する材料として、ホメオパシーの考え方や臨床経験から情報提供しているのみです。
また、JPHMAは、協会倫理規定にも書かれている通り、現代医学とホメオパシー医学の両者の長所を生かして医療機関との協力体制を理想とする姿勢を1998年の設立以来一貫して打ち出しています。
現在、川嶋氏に上記発言の事実確認、事実である場合、過激なホメオパシーグループは本当に実在するのか?実在するとしたらそれはどのグループなのか確認しているところです。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者

  
協会としてはそうでしょう“現代医療(西洋医療)を否定しない”という立場でしょう
これについては別の観点からしばらくしたら書いていこうと思います


(2)「レメディーを投与するのは医療行為である。」

川嶋氏の発言として掲載されていますが、この発言が事実であれば、川嶋氏は、医師法17条の解釈を間違って解釈していると考えられます。すなわち、医師法の17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」の解釈として、治療してよいのは医師だけであると川嶋氏は判断していると考えられます。しかしそうすると、日本国憲法の職業選択の自由に抵触しますから、必然的に、医師法17条が意味するのは、「現代医学を修得した医師しか、現代医学に基づく治療をしてはならない」と解釈しなければなりません。
治療法は現代医学の治療法以外にもたくさんあり、それぞれの治療法を習得したプロフェッショナルであれば、その知識と技能を用いることを生業としてよいわけです。
ホメオパシーは200年前から世界的に膨大な治療実績がある治療法であり、日本ホメオパシー医学協会が認定するホメオパスは、プロの基準を満たしているので、ホメオパシー治療を職業とするのに何の問題ないというわけです。なお、川嶋氏に発言の事実確認および事実であるなら発言の根拠を求めていきます。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者

  
まず朝日新聞の記事中の「レメディーを投与するのは医療行為である。」と言う部分についてです
レメディーを投与することだけでは医療行為には当たりません
レメディーの組成自体は薬事法上の解釈から考えても医薬品とは考えにくいからです
但し、患者に治療効果が有ると説明をしていたり、それをを期待させて与えているとすれば別の話
この記事の文章では協会も異議をとなえたくなるでしょうね

次いで職業選択の自由に関する解釈ですが、これについてはうーんと言う感じ
まず第一に、医師法17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない」と言う条文について、憲法の職業選択の自由を引用して「現代医学を修得した医師しか、現代医学に基づく治療をしてはならない」と解釈としています
この職業選択の自由についての記載は昭和35年のHS式無熱高周波療法についての判例より述べているものと思われます
このあたりの話はちょっと飛躍するし、長くなりすぎるので別の機会にでも
でも「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(あはき法)第一条には
「第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」
とあります
つまり医業の範囲の中に現代医学ではないはり・きゅう・あん摩という領分があることが明記されています

「日本ホメオパシー医学協会が認定するホメオパスは、プロの基準を満たしているので、ホメオパシー治療を職業とするのに何の問題ないというわけです」
とのコメントもありますが・・・まあこの点も別の機会に

(3)「薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。」

川嶋氏の発言として掲載されていますが、ホメオパシーのレメディーは、薬ではなく食品となっており、レメディーを与えることは医療行為に当たりません。レメディーがあたかも薬であるかのような表現をすることは、事実誤認であり、多くの人に誤解を与える表現です。
ホメオパシーは現代医学とは全く異なる考え方をし、専門知識が必要であり、ホメオパシーをしっかり学んで資格をとったものがプロのホメオパシー療法家としてホメオパシー療法を行うべきであり、現代医学の医師や歯科医師といえども、ホメオパシーをしっかり学んでいないものが行うべきではありません。
一方で、全世界的にもホメオパシーは代替医療の主流と認められており、世界各国の空港、スーパーマーケット、ドラッグストア等で誰でもレメディーを購入することができ、セルフケアの方法としても一般的です。川嶋氏の医師しかホメオパシーを扱うべきではないという考えは世界的な流れに逆行するものです。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者

 
これは矛盾が有るなあと感じます
「薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。」
この一文だけをとれば協会が言うのはごもっとも
一方で「ホメオパシーをしっかり学んでいないものが行うべきではありません」としながら「世界各国の空港、スーパーマーケット、ドラッグストア等で誰でもレメディーを購入することができ、セルフケアの方法としても一般的です」と紹介するのはいかがなものでしょう?

(4)「日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。」

これは日本助産師会の発言として掲載されていますが、JPHMAは日本助産師会からそのような申し入れを受けたという事実を有しておらず、今、日本助産師会に事実確認を行っているところです。このような書き方をした場合、あたかもJPHMAが通常の医療を否定しているかのような印象を人々がもってしまいます。事実は前述した通り、JPHMAは通常医療を否定しておらず、現代医療と協力してやっていくという立場をとっています。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者


この件にはコメントなし
  
(5)「ホメオパシーを全面的に否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」

これは日本助産師会の岡本専務理事の発言として掲載されていますが、これもこの記事を読んだ場合、JPHMAがビタミンK2の使用や予防接種することを否定しているかのような印象をもってしまいます。事実は前述(1)した通りです。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者

  
これも無し、と言うか協会としてはそうでしょう

(6)「元の物質の分子が残らないほどに希釈した水を含む砂糖玉が体に作用を及ぼす」との考えが科学的におかしいのは明らか。」

大阪大の菊池氏の発言として掲載されていますが、もしこれが事実としたら、研究もせずに、自分の持つ価値観、自分が学んだ範囲でのみ考えて結論を出し、頭から否定するというのは、科学者として頭が固すぎるといわざるを得ません。過去の歴史からも、未知のものを既知としていくところにこれまでの発見があり、発展があるということを学ぶことができるのに、そのことさえも認識されていません。
科学的に根拠に関しては、以下のRAHUK体験談の管理人のコメントが参考になると思います。
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?mode=allread&no=2329
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者

  
科学的根拠という件に関してはコメントしません
まだキチンと勉強してないので、ランセットの論文も入手できていませんし

(7)「限りなく薄めた毒飲み「治癒力高める」

あたかも毒が入っているような表現であり、ホメオパシーに関する誤解を生じかねません。この記事の中で毒が強調されているように思いますが、レメディーの原料として確かに毒物もありますが、毒物でないものもたくさんあります。また原料として毒物として使うものも最終的には無毒化されており、薄めた毒という表現は適切ではありません。
朝日新聞8月5日付 福井悠介、岡崎明子記者


これは朝日新聞の記載で間違いないのでは?
レメディーの一般的な作り方から考えたら無毒化されたのではなく毒性が無くなるまで希釈されていると考えるほうが正しい気がします
  
(8)100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない

100倍希釈を30回繰り返した場合、10の60乗倍希釈となり、原成分はほぼ残っていないのではなく、1分子も全く、残っていません
※約10の24乗倍希釈で原成分は1分子もなくなります。


これも朝日新聞が正しいでしょうね希釈という工程では完全に物質がなくなるとは言いません
限りなくゼロに等しくなるのみです
「1分子も全く、残っていません」
とはならない気がします

もう少し勉強して、考え、またこの件やこの領域のお話を書きたいと思っています