黒猫亭日乗

題名は横溝氏の「黒猫亭事件」と永井荷風氏の「断腸亭日乗」から拝借しました。尚掲示板が本宅にあります。コメント等はそちらへ

椿三十郎

2008年01月09日 | 映画のページ
椿三十郎

監督・森田芳光

出演・織田裕二・豊川悦司・松山ケンイチ

評価☆☆☆

あらすじ・とある朽ちた神社の社で、井坂伊織をはじめとする9人の若侍たちが、藩の上役の汚職を暴くための密談をしていた。そこへ社の奥から身なりの粗末な浪人が現れ、彼らの話の弱点を鋭く突く。浪人はたまたま社をねぐらにしていたため、彼らの話を聞いてしまったのだった。大事な話を盗み聞きされ怒る若侍たちだったが、浪人の指摘通りに社が追手に囲まれてしまう。正義感に溢れるものの血気盛んで短慮な若侍たちを見かねて、浪人は持ち前の機知と見事な腕で彼らを助けることになる。名前を問われて、ふと見た花を元に浪人が答えたその名は椿三十郎。

感想・黒澤明監督の名作を、全く同じ脚本でリメイクされた話題作である。監督をはじめ出演者の主要なキャストも時代劇にあまり縁のなさそうなメンバーという本作、実は一体どうなることかと思いながら見はじめた。今日びの時代劇は「座頭市」で苦い体験を一度経験しているので、覚悟をしていたのだが、殺陣やら所作やらに違和感は無かった。さすがは完璧主義の織田裕二である。一ヶ月や二ヶ月でよくあのレベルまでもっていったものだ。世界のミフネ対織田裕二、その溢れる存在感はさすがに前者に軍配が上がるのは致し方ないが、その分を脇の豊川悦司・風間杜夫・西岡徳馬・佐々木蔵之介といった面々が固める。浮世離れしてピントがずれているようで要所は鋭い城代家老の奥方役の中村玉緒さんははまり役。
前作をみたのはかなり昔にテレビで一度きりなので、観客の反応などは解るべくも無いが、本作は笑い所が随所に溢れる娯楽時代劇となっている。ただ、小田裕二の演技が少々大げさな感は有。
一番の見所はやはりラスト少し前の場面。実はこのシーンを確認したいがために映画館に足を運んだといっても過言ではない。三船敏郎と黒沢明監督が調べに調べて練り上げたあの場面を、一体どう処理したのかをどうしても知りたかった。考え尽くされたあのシーンをそのまま映像化していたら、激しくけなしてやろうかと思っていたのだが、まあ納得の出来か。少しほろっとさせながらも颯爽とした織田三十郎の後姿が格好良かった。


その他の映画評もこちらにあります。→黒猫亭日乗