忘れられる】
一口に失恋といっても、
男と女とではかなり違い
がある。
女は現在幸せで充実した
恋をしていれば、以前の男の
ことなんか忘れてしまうところ
がある。
男はそういかない。意外にいつ
までも、過去の女性の面影を
引きずって歩いてゆくところが
ある。
セックスでも、実際には女のほう
が男よりも動物的。男のセックス
はもっと知的、というか、単なる
生理的営みいうことからちょっと
離れた夢、ロマンみたいな部分を
求める。
女性は生理的に、新しい恋人が
できれば古い男のことなんか
忘れてしまえる
失恋した場合でも女は一時的
にかなり傷つくけれど、立ち直る
のも早い。次の男が現れるや、
もう古傷なんかなんのその、
前の男が生きているのか死
んでいるのかさえ興味がなく
なってしまう。
それが女というものの本性
なのである。
女がこんなふうに水くさくでき
ていること、それはあながち
非難できない。
というのもそれは女が、自分
で自分を守ろうという本能から
発したものであるという気が
するからだ。
実際、女の心と躰は、男のよう
にいつまでも昔のことを引き
ずっていたら、生きてゆけない。
故に、神さまがそのように作って
くださった配慮なのだろう。
男の場合は「オレは百人の女
を知っている」というと、英雄色
ヲ好ムで勲章になるけれど、
女が「男を百人知っています」
などど言っても自慢の端くれ
にもならない。
そういう意味でも女は過去の
ことを忘れられないと生きて
いられない。
処女を捧げた男のことが生涯
忘れられません、なんてやって
いたら、次の恋とは生きていけ
ないのである。
神さまは実にうまく作ってくだ
さった。自分のなかの女を大事
に守ってゆくために、前のこと
をすっぽり忘れられる生理を
プラスして。
つまりこういう具合に失恋といって
も、男と女では様子が違うので
ある。