はてしなく
うちよせる
岸部に立ち
思い 悩む
どうすれば
いいのか
なにひとつわからない
思いは
乱れ
どの波のうえの
しずくの中にも
閉じ込められ
さまよっている
YouTube
Sade - Smooth Operator - Live
https://www.youtube.com/watch?v=j5lUyucohBU
はてしなく
うちよせる
岸部に立ち
思い 悩む
どうすれば
いいのか
なにひとつわからない
思いは
乱れ
どの波のうえの
しずくの中にも
閉じ込められ
さまよっている
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Sade - Smooth Operator - Live
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もし今、
居心地のあまり良くない場所
にいたら、それは、
幸せなこと。
居心地の良すぎるところに
いる人は、
そこから抜け出して
成長することが一生できない。
居心地のいい場所は、
人の力を奪ってしまう。
ちょっと居心地が悪いから、
そこから抜け出そうとして、
成長することができるのだ。
日本骨髄バンクの普及広報
委員会副委員長、大谷貴子
さんは、
自らも大学院の二年生のと
きに慢性骨髄性白血病と診
断され、移植手術を受けた。
彼女は、「自分が必要とする
ときには、必ず必要な人に
出会える」と語る。
「自分が白血病にかからな
かったら、人の優しさや思
いやりを心からありがたい
と思える人間になっていた
かどうか・・・・。
私がどんな小さなことにも、
手を合わせて『ありがとう』
と感謝できるのは、病気の
お蔭と言えるかもしれません。
なぜなら、私は病気をしたこ
とによって、多くの人の温か
さに触れることができたから
です。
私は病気になり、様々な人た
ちに命を助けられてきました。
ですから、『人間は、一人で
は生きられない』という言葉
が切実に感じられるのです」
そういう出会いの中で今日を
生きる姿は美しい。
誰でも、病気になることは
不本意なことです。しかし、
弱者になってみてはじめて
見えてくるものがあります。
自分の不幸をただ嘆くので
はなく、そこから何を得る
かが大切だと思います。
有田英光さんは、パリのオペラ
座にバレエを観に行ったとき、
こんなことがあったと言う。
ロビーにたたずんでいた和服
姿の初老の日本人女性の手も
とから、スカーフが床に落ちた。
かたわらをすり抜けようとし
たフランス人女性が、それを
拾い上げて日本の婦人に手渡
した。
日本人女性は、「ありがとう
ございます」と口調のはっき
りした日本語で言い、軽い
会釈をして受け取った。
相手の好意に対して、婦人は
日本語でしかお礼が言えなか
ったのだろうが、そこには
気品が漂っていた。
するとフランス人女性は
ふち立ち止まり、一瞬表情
を引きしめながら「なんで
もないことですわ、
お気に留めることでもござ
いません」とていねいな
フランス語で答えた・・・。
「お互いに言葉の意味はわ
からなくても、二人の心は、
意をあまくなすこなく交流
したに違いなかった」と
有田さんは語る。
コミュニケーションには
言葉が重要な役割を演じ
ます。が、もっと大切な
ことは、
その人の思いではないで
しょうか。
「思いは通じる」と昔から
言いますが、思いさえあれば
言葉はなくても通じます。
逆に、思いがなければ、どん
な言葉を尽くしても真意は
通じません。
生きていることはそれだけで
素晴らしい。
人はでも、そのことを普段、意識
しないように生きている。
あるいは、知らないで生きている。
知らないで生きている人も、一緒に
ごたまぜに、この世界にいる。
奇跡の中に私たちはいるのだ。
そのことを、たまには思い出したい。
そのひとカケラでも私はだれかに
手渡したくて、その素晴らしさの
中にいるという奇跡を
一瞬でも感じさせたくて、私は
今日もまだ、見ぬあなたに
会いたくて生きている。
「お客様、大丈夫ですか?」
すぐ近くで物音がしたような
気配がして、あなたははっと
我に返る。
「はい?」
問い返したあなたの真正面に
立って、あなたを見つめている
バーテンダーのまなざしにぶつ
かる。が、その目は微妙にぶれ
て、ふたつではなくて四つ、あ
るように見える。おかしい。突
然、乱視になってしまったのか。
あなたはあわてて目をこする。
「少し、お具合が悪そうにお
見受けしましたの・・・・」
「あ、いえ、そんなことない
です、大丈夫です」
強いカクテルのせいなのか、ほ
んのつかのま、カウンターの上
に両肘をついたまま、片足だけ、
夢の世界に引きずりこまれてい
たようだ。
それにしても、気持ちのいい夢
だった。いつまでも見ていたい、
永遠に醒めたくないと思えるよう
な。夢のなかで、ふたりはベット
のなかにいて、彼はあなたに囁い
ていた。
あなたの体を優しく抱きしめて、
「妻にきみのことを打ち明けた」
と。何もかも話したよ。別れる
つもりだ。俺にはもう、きみしか
いない・・・・・。
腕時計を見ると、午後七時を
三十分以上、回っていた。
「同じものを、もう一杯」
あなたは注文する。バーテンダー
の背中に向かって、ため息をつく。
彼はまだやって来ない。どこからも、
姿を見せない。エレベーターの扉は
さっきから何度も、開いたり、閉ま
ったりしている。が。彼は乗って
いない。
あなたは気づく。やっとのことで、
悟る。今夜、彼は来ないのかもし
れない。いや、来ない。来ないに決
まっている。今日の約束は、あの
約束だったのだ。
あの約束――――
いつだったか、このバーのちょうど
真下にあるはずのベットの上で、
交わした指切り。
「いつものように待ち合わせをして、
仮にどちらか現れなかったら、それを
『別れ』のメッセージにしよう。
きれいさっぱり、あと腐れなく、
別れよう」
ついさっき見た、気持ちのいい夢が
一瞬にして、悪魔にすり替わる。
夢のなかで、誰かの体を抱きしめて
いるのは夫だ。夫は恋人の耳に囁い
てる。
「妻にきみのことを打ち明けた。何
もかも話した。別れるつもりだ。
俺にはもう、きみしかいない・・・・」
まぶたをこすっても、こすっても、
あなたの目にはすべて二重に映って
いる。
新幹線が名古屋駅を出て五分ほど
した頃、会社から携帯電話に連絡
が入った。
デッキまで出て、メッセージを聞
いた。
「桜木さん、編集二課の深澤です。
ついさっき京都の永田先生の秘書
の方から、お電話がありまして・
・・・・・」
これから会うことになっている
絵本作家に急ぎの用事ができてし
まい、わたしとの約束を一時間
だけ、遅らせて欲しいという。
誰かがわたしに、一時間をプレ
ゼントしてくれた。そんな気が
した。
わたしは折り返し、会社に電話
をかけて「了解しました」と伝
えた。
列車が京都駅に着くと、地下通
路を通って八条口を抜け、学生
時代にアルバイトをしていた書
店へと向かった。地下からビル
ディングに入り、エスカレター
でゆっくりと、六階まで上がっ
ていく。
一階上がるごとに、十代の記憶
が、二十代のわたしが、そして
「あの日」が近づいてくる。
この書店を訪ねるのは、実に
十三年ぶりのことだ。売場に
着くと、わたしは「ちっとも
変わっていない」と驚いたり、
「昔のままだ」と嬉しくなった
り、「すっかり変わってしまっ
た」と感慨にふけったり、目
まぐるしく行き交う情報を楽
しみながら、通路を歩き、
書棚を見て回った。
気がついたら、わたしの持ち
場だった洋書売場に来ていた。
ペーパーバックの棚の前で、
清楚が横顔をした女性の店員
さんが、在庫チェックのよう
な仕事をしていた。
アメリカ出版された村上春樹
の作品集『The Elephant V
anishes』が、棚の中央に黄
色い表紙を表にして置かれて
いる。その隣に日本語版。
わたしはその場所にはいつも、
映画化された話題作を並べて
いた。
それからわたしは、絵本売場
へと向かった。
わたしが担当し、編集した絵本
も何冊も置かれていたし、会社
で出しているシリーズ物もちゃ
んと揃っていた。そのことを
確認したあと、
絵本売場の責任者がいれば、名刺
交換だけさせてもらおうと思い、
レジの方に向かって歩き始めた、
その時だった。
―――こんにちは。