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ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

ふと宿りやがて心の染みとなるユリの花粉のようなジェラシー

2020年08月05日 14時53分24秒 | owarai
恋はきらいだけど、片思いは
好きだという人だっている。
何歳になっても、片思いしか
しない人だっている。

たとえば、パリが好きだから
パリに行かない人だっている。
パリの町について、どんな旅行
者よりもくわしく知っているの
に、
実際に出かけたがらないんだ」

「臆病な人なのね」
と女の子が訊きました。

「かも知れない。でも、そうい
う人は、パリは実在しなと思っ
ている。旅行してたどりつく
のは、どこにでもあるような
ヨーロッパの都市で、

自分の想像力のなかの花の
都と同じじゃないっ てこと
を知っているのだ。

恋についてだって同じこと
だよ。
一人で想っているときは、
幻滅しないですむ、
だけど、それは恋なんかじゃ
ないんだよ」

たった一人のやさしい女よ
二日のあいだ恋をしようよ

YouTube
Fly Me to The Moon - Diana Panton

https://www.youtube.com/watch?v=xBSuxSQQkFE

予感という言葉が透けてくる朝(あした) 赤タマネギは羽を脱ぎおり

2020年08月05日 13時42分18秒 | owarai
始まりは、声だった。
「こんにちは」とわたしの

背中に届いた、伸びやかな
その声、

「はい」と答えてふりむくと、
そこに、あの人が立っていた。
それから ゆっくりと、
言葉がやってくる
―――



YouTube
Nouela - The Sound of Silence (Amazing cover of Simon & Garfunkel's song)

https://www.youtube.com/watch?v=Ntkyzh4NV7A

さりげなく家族のことは省かれて語られてゆく君の一に

2020年08月05日 12時55分26秒 | owarai
深い夜に、レールの向こうで
たくさんの蛍が光る。
そのうちにそれが、紫の羽を
持った無数の蝶に変わり、

なぜか白いシーツをバックに
舞っている。

それを小さな少年が、瞳をこら
して見ている。

横に、なぜかお下げ髪の少女に
なっている私がいて、怖くてそば
へ行けない。

「帰ってきて、帰ってきて」と、
叫ぶだけだ。

 目覚めると、寝返りをうった彼
の寝息がかすかに聞こえる。

その体を、私はしがみつくように
抱きしめた。

朝、彼を送り出すときの、背中を
見るのがつらかった。
 彼に妻子がいようがいまいが
どうでもよかった。

ただ、
いつも判然としない想いにおそわ
れる。
これが、最後ではないかと・・・・・。
背を向けて遠ざかる時、

一瞬、
カレの存在自体が消えるような
気がした。

海底で指をつなげばあなたしか見えなくなった南半球

2020年08月05日 11時59分42秒 | owarai

あなたは燃ゆる火の鳥で
あたしはついてく恋の鳥

夜霧のふかき神戸の
密航船の船底で
たしかめあった愛などは
忘れかけた軍衆の
中にまぎれてゆくあなた

あなたは燃ゆる火の鳥で
あたしはついてく恋の鳥

ともに入った監獄も
つめたい壁にへだてられ
信じるだけの月あかり
美は乱調にありながら
みだれ過ぎたる黒髪を

せめてあたしも火の鳥と
なって翼を燃やしたい

 

 

YouTube

David Garrett - AIR (Johann Sebastian Bach).

https://www.youtube.com/watch?v=x1ByRGNIpFA

 


前奏は、光こぼれる夏の午後に始まった。

2020年08月05日 05時22分58秒 | owarai

大好きな人の瞳の中に
とまどう自分を見つけた
とき

流れの早い川に押し流されて
いくような感じがした
片思いでなくなたとき
そんなふうに喜びと悲しみが
同時にやってきました

私は流れに逆らって
水面に張り出す枝をつかもう
とするけれど
指先に弾けて小さな痛みが
残るだけ

だけど同じ流れの中にいる
あの人を見つけたとき
私はあの人の気持ちを知り
ました

思わず手を差し伸べて
水の中でキスしました。



YouTube
We Don't Talk Anymore - Selena Gomez SOLO full song (Selena's Version)

https://www.youtube.com/watch?v=XljjeGEW4sw


「砂丘のたもとにて」 ―XIV―

2020年08月05日 05時19分06秒 | owarai

最後の夜にしようって、決めて
いました。最後にあと一度だけ。
順ちゃんの腕のなかで、握りつ
ぶされそうな小鳥になりたいっ
て。

未練なんかじゃありません。
いいえ、やっぱり未練です。
正真正銘、どこからどう見て
も、紛(まご)うかたなきり
っぱな未練です。

順ちゃんは、何も知らなかっ
た。気づいていなかった。天
真爛漫な人でしたからね。

人を疑うことを、知らない人
でしたから。いつものように、
わたしの部屋まで車で一緒に
もどってきて、部屋に着くな
りわたしを抱きしめ、

翌朝は日の出とともに、風の
ように去ってゆきました。
 すがすがしい気持ちで、わ
たしは順ちゃんを見送りました。

その姿が小さく小さくなって、
すっかり見えなくなるまで、
手をふりながら。絶対に、
うしろをふり返って、わたし
の方を見たりはしない順ちゃ
んでした。

その朝もいつもと同じ。順ちゃ
んは一度も、ふり返りません
でした。

それで完全に、お仕舞いにできた
つもりでした。
何もかも。きれいにさっぱりと。

音羽さん。
今年の冬は暖冬のようです。
いつもならとっくに雪が積もって、
窓の外には、かき寄せられた雪が
防波堤のような土手を築く季節
なのに。

音羽さんのところは、どうですか?
ここよりも南だから、もっと暖かい
のでしょうか?

書きかけの手紙を、最後まで書き終
えることができないまま、いたずら
に時が流れてしまって、手術の日が
あしたに迫ってきました。どこまで
書けるのか、わかりませんけれど、
力をふりしぼって書き進めます。

もしかしたら、これが、最後の手紙
になるかもしれないから。

もちろん、そんなことにはなって
欲しくないけれど、でも非常に
難しい手術になるだろと、あらか
じめ説明も受けているので、それ
なりの覚悟はしています。

順ちゃんと別れたあと、わたしは
新しい町に引っ越して、新しい生
活を始めようとしていました。

仕事も一からやり直そうと考え、
大学の夜間コースに申し込んで、
小学校の教員免許を取ろうと
がんばっていたのです。

小学校の先生―――できれば
過疎地の―――になりたいと
いうのは、もともとわたしの
目標といにか、子どもの頃から
の夢だったのですね。

だけど、わたしの出た大学の
学部では社会科の免許しか取れ
なくて、それで小学校の先生は
あきらめていたのだけれど、
チャレンジするなら、今がいい
チャンスだと思って。

そんなある日、わたしは躰の
変調に気づきました。

妊娠していたのです。病院で
診てもらったところ「おめで
たです」って、言われました。


「三ヶ月ですよ」って。


「砂丘のたもとにて」 ―最終回 前篇―

2020年08月05日 05時16分50秒 | owarai

「三ヶ月ですよ」って。

わたしにとってこの妊娠は、ちっと
もおめでたくありませんでした。
歓迎もできない、喜べもしない、実
に厄介なことが起こってしまった、
とわたしは途方に暮れました。

あんなにも好きだった、好きで
好きでたまらなくなって、それな
のに泣く泣く別れた、順ちゃんの
子どもですよ。だけど、わたしに
とっては、迷惑でしかなかったの
です。

この子を産んで、この子とふたり、
残りの人生をけなげに生きていこ
う、そんなこと、露ほども、思え
なかった。自分勝手だと思うし、
冷酷で、非常だと思うけれど、で
もそれがその時のわたしの正直な
気持ちでした。

順ちゃんのことは、好きだった。
だけど、わたしが好きだったの
は順ちゃんであって、決して順
ちゃんの子どもではなかった、
そんな理屈というか、

言い訳を
自分に対して一生懸命しながら、
わたしは「中絶しよう」と決め
ました。ひと晩だけ悩んで、
決心したのです。


そして、最初に診察してもらっ
た産婦人科ではなくて、電車で
三十分くらい離れたところにあ
る、市立病院で手術を受けるこ
とにしました。

どうしてだと思いますか?
それはね、市立病院の方が日取り
が早かったから。一日でも早く、
このことから開放されたかった
のです。

けれど、思いもよらないことに、
その病院では、前のから入院し
て、堕胎は翌朝におこなう、と
のこと。
がっかりでした。こんなことな
ら最初の病院にするべきだった。
でも後悔先に立たず。

夕方、子宮口を広げるという処
置を受け、その夜は、六人部屋
だったか、八人部屋だったか、
ほかの患者さんたちとアコーデ
ィオンカーテン一枚で仕切られ
た一角の、冷たいベットの上に
横たわっていました。

その夜のことです。
ひと晩中、悶々として、一睡も
できないまま、蛹(さなぎ)み
たいに身を硬くして、天井や窓
や壁を意味もなく眺めていたの
だけれど、明け方、ふっと何か
が舞い降りてきた気配のものを

感じて、朝まばたきの闇のなか、
懸命に目を凝らすと、一羽の小
鳥がわたしのベットの縁に止ま
って、じっとわたしの方を見つ
めてたのです。まっ白な小鳥。

今までに一度も見たことのない、
きれいな形をしていました。
小鳥は、わたしにそっと囁きま
した。なんて言ったのか、その
時はわからなかった。

だけど確かに、小鳥の声が聞こ
えたの思うです。
幻か何かだと思うでしょう?
そんなの、目の錯覚だって。
もちろんわたしもそう思いま
した。

純白の小鳥が見えたのは一瞬
だけ。もしかしたらそれは、
窓から射し込んできた明けの
明星の一瞬の光だったかもし
れません。

朝が来ました。わたしはスト
レッチャーに乗せられ、手術室
に運ばれていきました。
前日の午後から、何も食べては
けないと言われていたので、お
なかがぺこぺこでした。

おまけに睡眠不足で、心身とも
によれよれです。
なのに、わたしの躰のいったい
どこに、あのような力が残って
いたのでしょう。

手術室に着いて、今まさに手術台
に移し替えられようとしている
時、自分でも制御できない力が、
身の内から湧き上がってくるのを
感じていました。

看護婦さんたちの腕や手を払い
のけるようにして、わたしは
床の上に足を下して仁王立ち
になり、
「やめます」
と、言ったのです。


「砂丘のたもとにて」 ―最終回 後篇―

2020年08月05日 05時12分09秒 | owarai

「やめます」
と、言ったのです。

若い看護婦さんと、少し年配の看護婦
さん。ふたりは唖然とした表情で、わ
たしを見ていました。驚きのあまり、
あるいは、呆れてしまって、声も言葉
も出ないという感じすです。

わたしは彼女たちを残して、手術室か
ら走り出ると、もといた部屋までもど
って、手術着を脱ぎ捨て、そこに置い
てあった旅行鞄のなかから、衣服を取
り出しで、まるで脱走するかのように、
病院から飛び出しました。

大通りまで出て、流しのタクシーを拾
って駅まで行き、そこからは電車に揺
られて、アパートまでもどったのです。

帰り道、少しだけ出血があったけれど、
すぐに止まりました。本当は走ったり
してはいかなかったのだけれど、わたし
の赤ん坊は強かった・・・・・。

ねえ、音羽さん。
その時はたぶんまだ、親指の先くらい
の大きさしかない、頼りない細胞のか
たまりですよ。まるで木の芽のような
小さな儚い生命が、わたしに「生きた
い」と言ったのです。烈しい力で、大
木をなぎ倒すようにして、わたしに
中絶をやめさせたのです。

それが、あなたです。
わたしが身籠っていたのは、音羽さん、
あなたなの。

あなたがわたしに「生まれたい」と
言ったのです。
あなたの力が浅はかな女を、罪深い
人間を、動かしたのよ。あなたが、
わたしを、救ってくれたの。

 お願いです。そのことを、どうか
覚えていて。

この手紙の最後に、あなたのお母さん
に対する感謝の言葉を書きたいと思い
ます。

あなたのお母さんは、
出産時の麻酔事故と出血多量で昏睡
状態に陥り、そのまま目覚めなくなっ
たわたしの代わりに、あなたを引き取
り、

順ちゃんと一緒に、おふたり子ど
もとして慈しみ、可愛がり、美しく
聡明な女性に育て上げて下さいました。

あなたのお母さんはこの世にただひ
とり、あなたを育て上げてくれた人
しかいません。そして、あたなたの
お母さんはわたしに、この手紙を書
くことを許してくれました。

この世の中には、奇跡としか思えな
いようなことが、満ちあふれていま
す。素晴らしい奇跡もあれば、悲し
い奇跡もあります。

人はそれらをすべて、受け入れるこ
としか、できないのです。受け入れ、
許し、愛することしか、できない。
わたしがそうであったように、
あなたを、愛することを、やめられ
ないの。

もうじき、夜が明けます。
手術が成功して、もしも歩けるよう
になったなら、わたしはまっさきに、
あなたに会いにいきます。

腕が自由に動かせるようになったら、
まっさきにあなたの躰を抱きしめた
い。口がきけるようになったなら、
わたしがまっさきに呼びたい名前
は、あなたの名前。

音羽さん。
愛しい順ちゃんの娘。
わたしの娘。おとはちゃん。
この手紙を読んだら、あなたの
握りしめている白い小鳥を飛び
立たせて。

わたしの青空に、あなたの小鳥を、
放して。
You White Bird,Released Into My
Azure Sky.

待っているから。
真っ白な小鳥が、わたしの青空を
飛ぶ日を、待っているから。
今までずうっと待ってきたんだ
もの。

大丈夫、これからも待てる。
あなたを愛しているから。

砂丘のたもとにて
  とき子より