弟子の子貢がある日、孔子に向かって、こんな質問をした。
「貧乏であっても、へつらう事なく、金持ちであっても、驕り高ぶる傲慢さがない…、こういう人物は如何なものでしょうか。理想的な生活態度と言えるでしょうか」
孔子は、次の様に答えた。
「それは、まあ結構な態度だと言えよう、でもな、それよりもっと素敵な生き方とは、貧乏であっても、その日その日を元気に明るく、皆んなと楽しみ、お金持ちになっても、和やかで優しく礼儀のキチンとした毎日を送る事だね。
お金の有る無しではなく、毎日の生活を礼を尽くして、元気に明るく楽しく生きられる様に工夫する事だ」
すると、子貢がこれを受けて言った。
「『詩経』にある‘’切磋琢磨‘’ですね」
「切」とは、象牙とか玉石岩を切り取る事。
次にそれを「磋」する。
磋とは、ヤスリで磨く事。
さらに「磨」とは、ノミでコツコツと美しい形を作る事。
最後に「磨」で砥石や金剛石でさらさらとピカピカに磨き上げる。
一口に、毎日毎日を常に明るく楽しく、礼儀正しく生きよと言われても、ああそうですかと言って、簡単に自分の生活のクセを、変える訳には行かないだろう。
この生き方は、真に簡単に一言で言いきれるが、実行は甚だ難しい。
一年、二年、三年と「切磋琢磨」、実践・実修して、少しずつ身に付けて行くのである。
「山上更に山有り」ーーこれは禅語である。
山の上には、更に高い山がある。
人生の修養に終点はない。