ことこと愛する日々

『ことことカフェ』@よしだあゆみのつれづれ日記
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黙々と書く朝

2008-06-07 18:51:12 | 書道のこと
 休日の早朝。夫はまだ寝ていて、あたりもまだひっそりしている静かな時間。

 和室の真ん中に大きな下敷を敷き、紙を広げ、墨をする。
 硯の上で墨をする音。この小気味よい摩擦音と指に伝わってくるわずかな抵抗感、ひんやりとした墨の感触が好き。墨をすったときにだけ漂う香りが好き。墨汁ではこの香りは出ない。

 墨をするという行為には、ヒーリング効果がある。これはほんとうに。
 ゆっくりと時間をかけてすっているあいだに気持ちが鎮まり、無心になれる……。こうして書に入っていく時間を、とても愛おしく感じられる。

 書道を長くつづけてこられたのは、書が心を落ちつかせてくれたり、一服の清涼剤のような役割をしてくれていたからだと思う。
 墨をすり、筆をもって紙に向かうと、わたしはわたし自身を取り戻すことができた。
 病気のことで不安でいっぱいだったときも、子どもがいないさびしさを感じたときも、文章をかくことがうまくいかなかったときも、心の闇に呑み込まれそうになっていたときも、書をかくことだけはできた。書くとよい気分転換になり、夫が帰ってくるまでのあいだに気持ちを切り替えることもできた。

 書道は、わたしにひっそりと寄り添って、ずっと心の友でいてくれたのだと思う。父が言ってくれた‘芸は身を助ける’の言葉通りに、ちがう意味でも助けてもらっていたのだなぁと思う。

 紙に向かって黙々と書く。
 一枚書いたら下げて並べてみて、今度はここをこうしたほうがいいかな、とかあれこれ考え、また書く。ひたすら書く。

 きょうのところはこのくらいで終わりにしようと片づけたところで、ちょうど夫が起きてきた。なんてタイミングのいい人!
 お天気がよかったので、2人で散歩がてら外へブランチに出かけることにした。

 朝から墨をすって書をかくと、いつもより気持ちがぱりっとした1日を過ごせるような気がする。