Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

在宅緩和ケアのマニュアルが必要

2012-02-07 19:58:05 | 日記
緩和医療学会でガイドラインの作成が行なわれており、疼痛、消化器症状、
鎮静といった内容のガイドラインがサイトからダウンロード出来るように
なっています。出来る限りエビデンスに沿った内容になっており、とも
すると“自己流”になりやすい緩和ケアという分野で、定規のような役割
を果たしてくれていると思います。私もガイドラインに戻って診療を見直す
事にしています。

しかし、在宅をやってみて思ったのは、ガイドラインは全てホスピスや
病院を想定して作成されており、在宅の内容は殆ど含まれていません。
ひとつは、ガイドラインを作成されている先生方が主に病院で活躍されて
いる先生で、残念ながら在宅での御経験が少ないという事もあると思い
ますし、エビデンスなんて殆どない、総合病院の常識ではとても文章化
出来ないような一面を持つことも原因のひとつかもしれません。

しかし、これだけ厚労省が在宅医療を推進しているにも関わらず
在宅緩和医療が伸びない原因のひとつは、在宅向けの緩和医療の良い指針
がない事もひとつの理由ではないかと思います。
保険のシステムも分かりにくいです。

例えば、在宅でサンドスタチンを使いたいと考えたとしましょう。
サンドスタチンは持続皮下注しか保険が通っていません。
皮下注に使えるポンプは高額で、レンタルを取り扱っている業者も
少ない。ディスポーザブルポンプが、サンドスタチンでは使えない
(保険請求出来ない)という事実を、どれだけの家庭医が知っている
でしょうか。高額な薬剤であり、訪問回数の問題を考えると、どれだけ
薬剤をシリンジに詰めたら良いのか…点滴静注では保険が通らないのか、
どこにもヒントはありません。
初めて使用する先生にはとても敷居が高いと思います。

ほかにも、法の整備が出来ておらず、“グレーゾーン”が多い中で
保険で切られるのではないか、法律違反にはならないのか、等の
ストレスの中で多くの医師は選択を迫られています。
知識の浸透もまちまちです。近所で開業されている、緩和ケア領域では
有名な先生とお話した時、「プレペノンは患者宅に保管しても良いのでは」
と明らかに間違った事をおっしゃっていました。
これを聞いて、果たしてどれだけの医師がきちんとした知識で
在宅緩和ケアに携わっているのか…と疑問に思いました。
もちろん、役所に問い合わせても各課をたらい回しにされ、回答が
得られないという経験を何度もしました。

ガイドラインというものは難しいかもしれませんが、在宅でモルヒネを
使用する時に必要な法的な知識、具体的な使用法のヒント・注意など
分かりやすいマニュアルは出来ないものでしょうか。