Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

がん代替治療を考える

2012-04-03 08:44:46 | 日記
『がん患者会シャローム代表個人ブログ!』に代替療法の勉強会の
記事が出ていました。代替治療を行う前に一度眼を通すべき内容
ではないかと思います。

http://sugitocancer.blog87.fc2.com/blog-entry-1940.html


代替療法も私が臨床に出てからの12年間程度
でも、次々に治療法が廃れ、また新しい治療が出て来ています。
冷静に考えれば「効かない」という事実が知られると姿を消す、
の繰り返しである事がすぐに推測出来ますが、必死な御家族や
患者様御本人には「新しいこの治療は効くかもしれない」と
考えることだと思います。

残念な事ですが、人の弱みに付け込み詐欺を働く人達がたくさん
います。そんな人達にとって健康食品市場は格好の稼ぎ場です。

ただ、私はそれでも「全てを頭ごなしに止めさせること」だけが
医療者の正しい態度なのか、といつも考えてきました。
がんの代替治療について過去に書いた記事があります。

健康食品について
http://blog.livedoor.jp/kotaroworld/archives/12723713.html#more

リンパ球療法について
http://blog.livedoor.jp/kotaroworld/archives/13627010.html#more

※リンパ球療法は少しずつ西洋医学的な批評を受け、効果と限界が明らかに
なってきていますので、いつの日か代替治療ではなくなるかもしれません。
しかし、今のところ大部分の方には効果がなく非常に高額である事にも
変わりありません。現段階では、未熟な治療と考えますし、何百万も
かけて行なうだけのメリットはないと思います。
また、リンパ球療法を行なっているクリニックにもひどいところが
いくつもあります。

これらの治療を妄信し、西洋医学の全てを否定したり高額な医療費を支払う
ことは患者様・御家族にとって大きな被害・損害だと思います。
しかし、副作用がない事がはっきりしているものや高額ではない
代替治療ではどうでしょうか。死が近いことを認識し「たぶん効かない
だろうけれど」と考えながらハーブティーを飲んだり丸山ワクチンを使うことが
いくらかでも精神摘な苦痛や不安を和らげる側面があるとしたら
これらの全てをヒステリックに止めさせる事でもないんじゃないか、
と私はいつも思っています。
人は、そんなに強い人ばかりではありません
この段階での、セカンドライン・サードラインの効果のはっきり
しない抗がん剤治療を受けるより、
もしかしたら害が少ないかもしれません。

代替治療に全てをつぎ込んでしまう、患者様の、いや、人間の
弱さを理解出来ない治療医にも問題があると私は思います。
「もう、ここで出来ることはありません」
は絶対に言ってはいけないのです。
抗がん剤=治療の全てではなく、対症的なサポートは出来ますし
御自分の身内ならどうするか、を常に考えれば
おのずとどう接するべきか分かってくるのではないでしょうか。


ホスピス、在宅等、患者様にとってのベストを共に考え
今は長い時間を掛けてこの外来に通うよりもこちらの方法を
勧めます。でも、ここでの治療が必要な時はいつでも戻ってきて
良いのですよ、と…腫瘍内科医の先生にはそのような言葉で
関わって頂きたいと切に願います。主治医の先生に信頼感があれば、
おかしな治療に全てを犠牲にしてしまう方も少なくなるのではないでしょうか。