窓辺の小太郎

野付半島の渡り鳥や動植物の生き生きした「瞬間の美」を目指します。

アザラシ、その後。

2019-07-11 14:24:20 | ワシのいる風景

ゴマフアザラシの死体を見つけてから一週間、突堤の上は何も残っていませんでした。

100キロ以上の丸々としたアザラシの死体はなくなっていました。念のために突堤に行っ

てみると・・・。

おばんです。小太郎でごじゃります。

         ◆  アザラシ、その後。  ◆

コンクリートブロックのすき間に、赤黒くなった骨が残っていました。肩甲骨、胸部脊椎、

肋骨の一部だけが窪みに落ちています。

頭部や手足、皮は全く残っていません。あの厚く、頑丈で鎧のような皮が一部も残っていま

せんでした。エゾジカなら角が付いた頭部は残るのですが、がっちりとした頭骨と頸椎は

かけらすら消えています。

コンクリートには膏が浸み込んだ黒いしみが残され、そこに死体が転がっていた証しが付

いているだけです。見事な消費あと。感動でしかありません。

死後数日で肉や皮膚が柔らかくなりだしたところで、オジロワシがたくさんやってきて切り

取り、引っ張りだし食べていったんです。野付半島周辺に住む70羽以上が集まり、腹を満

たしたのです。

強いものからとり付き、食べ、お腹が満たされると次に強いものがとり付く。若者は近くで

見ていて、隙あらばかすめるといった生存共存のドラマが展開されたはずです。

人がいると遠のき、いなくなると集まってきます。早朝は特に集まっています。オジロワシ

が死体を離れると周りで指をくわえていたハシブトガラスが集まり、太く強い嘴で肉や皮を

引きちぎっていきます。

壮絶な食べ物争いです。その結果、死体は消えてしまいました。

 


シギやチドリが姿を見せ始めた。

2019-07-10 00:31:46 | シギ・チドリ

7月に入り、シギ・チドリが姿を見せました。寂しかった干潟や砂浜に活気が戻ってきた

気分。数は多くないですが、寂しかった水辺に光が射し始めた気分です。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

          ◆  シギやチドリが姿を見せだしました  ◆

はじめに見つけたのがミヤコドリ。3羽がアサリがたくさんいる砂地の浜にいました。満潮

で砂にいるゴカイを引出し食べています。

カムチャッカ半島の方で繁殖せず、早く渡ってきたミヤコドリたちでしょうか。警戒して近寄

る前に飛んでいきました。

半島の先の砂浜にはトウネンが8羽いました。まだ夏羽色の赤錆色の胸羽をしています。

砂浜でじっとしていると、砂色に紛れ同化し、飛ばなければまったくわかりません。

これから大群をなして渡ってくるでしょう。

さらにトウネンより二回り大きいキョウジョシギがいました。5月、2、3百の群れが干潟の

あちこちで見られたときに比較すると質素なものです。

 

番屋の近くの浜辺で、メダイチドリの5羽ほどの群れが飛び出して行きました。メダイチドリ

はこれから大きな群れが渡ってきます。

干潟の湿地に満潮になると集まります。その先駆けです。

最後にシロチドリがいました。今年、野付で生まれたヒナ鳥でしょうか。しっかりシロチドリ

ぽくなってきています。


海抜ゼロメートルのミソサザイ

2019-07-08 19:10:26 | 山野の鳥

野付半島には海抜ゼロメートルの極相林が存在します。ミズナラを中心に樹齢100年

以上の古木が中心。ナラワラと呼ばれる林です。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

          ◆  海抜ゼロメートルのミソサザイ  ◆

長い間、根室海峡の強風に曝されてきた林ですが、3000年以上という歴史のある林です。

森に入ってみるとクマザサやシダ類が多い、光が少なくてもがんばる植物たちの天国です。

倒木で開いた広場にはフキなどの光を好む植物が盛り返しています。

ちょっと暗い林の中で、7月のこの時期、ミソサザイのよく響く流麗な声が鳴り響きます。

小さな体で枝や木株の上に止まり、短い尾を垂直に上げ、胸を張り、頭を後ろにそらす

ようにして、嘴を真上に向けて囀る姿には感激します。

大きな声を出すには、こうしないといけないよ、と見本を示してくれるようで、聞きほれ

てしまいます。しかも長く続けるから素晴しい。

もうこの声を聞くだけで、森に入る価値があります。満足。

本州だと山間の渓流に生息するのに、ここは海辺。何とも幸せなことではないか。


ゴマフアザラシの死体に集まるカラス

2019-07-07 19:30:32 | カラスの生態

爆弾低気圧が野付半島をかすめて行ったあと、一頭のゴマフアザラシの死体が防波堤の

上に転がっていました。百キロはある成獣です。波の力の強さを知る置き土産です。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

         ◆  ゴマフアザラシの死体に集まるカラス  ◆

カラスが集まっていました。20羽以上がテトラポットの上や流木の上に止まっています。

カラスが集まっていると何かある、事件が起きている。これが野付半島で長年観察してきた

決めせりふです。

車を止めて、海岸に出てみると近くに集まっていたオジロワシが飛んで逃げました。一番

警戒心が強いのがワシです。ワシがいなくなると、すぐにハシブトガラスが死体の周りに

集まってきました。たぶん、怖くて、遠慮して周りで見ていたのでしょう。

ゴマフアザラシの死体は、皮膚に5、6か所穴が開いています。オジロワシが鉤状の嘴で

開けたものです。カラスやカモメ、キタキツネは穴は開けられません。

強者がいなくなると、待ってましたとばかりにカラスが集まり、穴に嘴を入れ、肉を引きち

ぎり喉に送り込みます。何回か繰り返し、喉を膨らませると飛んでいきます。別なところで

ゆっくり食べるのです。

もちろんカラスにも強い弱いがあり、順番待ちのようです。中にはずうずうしいやつもいます。

ワシがいなくなってやって来るのは他にもいます。キタキツネです。

さすがに体がカラスより大きいのですぐに食べだします。でも、カラスはキタキツネには

遠慮しません。反対側の穴にとり付き食べだします。一見仲良く食べているように見えます。

カラスはキタキツネを怖がっていないのです。警戒はしていますが。

私がいるために近寄ってこないオジロワシ。それを見ていて、カラスが次々に集まってきます。


一羽になってたタンチョウのヒナ

2019-07-05 22:20:48 | タンチョウのいる風景

5月に生まれたタンチョウのヒナ。よちよち歩きの2羽のヒナが両親に護られ、潮の引いた

干潟で捕れたての小魚をもらっていました。あれから2週間後、再びタンチョウの親子に会

いました。

おばんです。小太郎でごじゃります。

        ◆  一羽になってたタンチョウのヒナ  ◆

引き潮が始まり、水位が30㎝ほど下がってきた干潟にタンチョウの夫婦が水の中に入り

魚を捕っていました。遠くで見つけたので、近くで観察してみることにしたのです。

曇りでくすんで見える干潟。50メートルほどまで距離を縮めると、2羽の間の足元に上半身

が浮かぶように見える黄土色したぽわぽわの小さな雛を発見しました。

2週間前に偶然出会った2羽のヒナの片割れです。両親の周りを探しましたが、ヒナは

1羽しかいません。もう一羽はきっと外敵にやられてしまったようです。

海辺のハンター、オジロワシでしょうか。遠くで狙いをつけ、高速、低空、直線で飛んでくる

鳥の王者。繁殖期に入るとオオセグロカモメやウミネコ、ウミウなどのヒナが多く捕られ、

食べられています。

体の大きさ、鋭い足の爪、鉤状にまがった力の強い嘴で襲われると一瞬でさらわれてしまい

ます。

キタキツネも可能性が大きい。毎日、パトロールして海岸や湿原を歩き回っています。

タンチョウはキタキツネが接近してくると夫婦で威嚇し、時には翼を広げ追いまわします。

キタキツネが逃げないときは長い足と鋭い嘴で攻撃します。さすがのキタキツネも身を

かわし逃げていきます。

二回りほど大きくなった雛は両親の足元に付いて回り、次々に捕ってきてくれる小魚を

もらい食べます。自分で捕るような行動を見せますが、捕れません。

一羽を失っているタンチョウの夫婦は、さすがに慎重でヒナに始終注意を向けながら、

魚やカニを捕っています。時には大きな魚を捕り、自分の食事をとっています。

ゆっくりお腹が膨れるまで、潮が上がってくるまで、ヒナとともに干潟を移動して行きます。