窓辺の小太郎

野付半島の渡り鳥や動植物の生き生きした「瞬間の美」を目指します。

センダイハギの海

2019-07-04 11:03:18 | タンチョウのいる風景

          金色のセンダイハギに 夏至の海  ( 江部吉)

この句は送った写真に、高校の時の友人が詠んでくれた一句です。

軽い脳梗塞を起こし、三途の川を渡りかけ、美しい花畑のところで引き返してきた強者の

感想です。

生きていればもうけもの。生きていてこそ見ることができる景色です。

感性がずば抜けて研ぎ澄まされます。

負けずに撮り澄まします。

野付半島の砂丘はセンダイハギの大群落があります。番屋と番屋の間に広がる砂地に

黄色の花が咲き誇ります。

海霧に被われることが多い時期で、意外に目立ちません。人知れず最盛期が過ぎて

いきます。


ビロードの角を持つエゾジカ

2019-07-03 10:56:26 | 日記

5月、6月のエゾジカの角は美しい。艶めかしい。産毛がいっぱい。艶々している。

これまでエゾジカの角に関する論文や一般の記載文を調べてみましたが、毎年生えてくる

若き角に関心を寄せている研究者はあまりいません。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

           ◆  ビロードの角を持つエゾジカ  ◆

おそらくこの時期のエゾジカは警戒心が強く、林の中で生活するシカはひっそりと暮らし、

人目に付きにくいのです。

海岸の草原で暮らすエゾジカも日中は谷部の林に身を隠すように暮らしていて、近寄って

行くとすぐに逃げていきます。これが本来の野生のシカの行動です。

ところが野付半島のシカは外敵であるハンターがいないせいで、道路わきの草地にいること

がしばしば。鹿の子色の毛色になり、目立たないこともあります。

おかげでとても観察しやすい。20メートルの距離に寄っても、いたってのんびり草を食べて

います。オスの群れは、メスの群れに比べ警戒心が少なく、寄りそって行けばじっくり観察

ができます。

夏の毛に変わり、鹿の子模様がはっきりと出て、とても美しい毛並みになっています。

そして耳と耳の間に角が新芽のように生えてきています。

若者から大人のシカが一緒なので、年齢によるシカの角の出方が変化に富んでいるのに

気づされます。4歳以上の成人のオスの角は、すでに三尖二又になっています。角は黒光

りして、艶々しています。

柔らかな肌触りと深みのある色つや、黒光りのする光沢感はまるで繊維のビロードを思わ

せます。触るときっと柔らかで上品な手触り、皮下を流れる血管の拍動が伝わってきそうです。

まだ若いオスたちの角はカタツムリの眼みたいな形をしています。毛が生えた皮膚を押し

上げた風で、色気はさっぱりありません。

三歳と思われるシカの角は黒ずみ、オスらしい色気が漂い始めています。先が分かれ始め、

男らしさが出てきています。

オスの群れを見ているとさまざまな形の角を楽しめます。その角の形から年齢を推察できます。

それにしても四歳以上のオスの角の成長ぶり。太くて艶々、皮膚の下を流れる動脈の鼓動

が振動してくる迫力があります。 


夕暮れのヤマシギ

2019-07-01 23:31:15 | 山野の鳥

ヤマシギは春に渡ってくる渡り鳥。5月に入ると我が家の上を「チキィッ」「チキィッ」

と単発の声を出し飛んでくる鳥がヤマシギ。高音で切れがよく、遠くからよく聞こえ

ます。

おばんです。小太郎でごじゃります。

            ◆  夕暮れのヤマシギ  ◆

鳴きだすのは決まって夕方。太陽が沈む20分前あたりから、林の上を飛び回り

ます。飛び方は悠長で、羽ばたきもゆっくりです。直線的に飛んできます。ふわ

ふわという感じでのんびりした飛び方です。

 

飛んでいるコースを見ていると決まったコースがあるのではないかと思えるほど

同じ場所をぐるぐる回っているように見えます。縄張りと決めた範囲を周遊して、

隣接したライバルの侵入を阻止しているように見えます。

渡ってきたころは、1羽ではなく、2、3羽が同時に飛び回っていることがあります。

これはオスがメスに求愛するフライングディスプレイです。メスにアピールしてさえ

ずり、引き付けてから追いかけるという行動がみられます。

北海道に来るまでヤマシギがこれほど身近な鳥だとは、思いもいませんでした。

鳴き声の主がヤマシギだと分かったとき、すごく感激しました。

中学の頃読んだビアンキの「森の新聞」に出てきたヤマシギの記事を思い出して

いました。ロシアの森に住むビアンキの父親が夕方、鉄砲を持ってヤマシギを

撃ちに行くシーン。夕飯のご馳走にヤマシギを捕って来るのです。

すばやく飛ぶシギをどうやって撃ち落とせるのか、いつも疑問に持っていました。

それが簡単に理解できたのです。

同じコースを飛んでくるので、待機して狙えるのです。腕が良ければ、確かに撃ち

落すことができるのです。ヤマシギの習性を理解して、ヤンシギが渡って来て、

フライングディスプレイを始めだすと打ちに出かけるのです。

おそらく1年で一番楽しい猟だったと思います。