本日は前回宣言したとおり、直近の表題の動きに関して非常に参考になるミーティングがあったので、それに関連しながら拙意見などを述べさせて頂こうと思う。
初めに私の半専門であるCBに絡む、このMSCBの現状に関して。
ご存知のようにライブドアがリーマンを主幹事として行ったあのMSCBによってこの商品は一気に世間に認知された、と私は考えている。
しかしながらこれ自体はかつてはアメリカ辺りでも行われていたようで、それを見た機転の利いた人間が日本の法令に照らして導入してみた、って感じのようだ。
私自身90年代にロンドンに駐在していた時に、その当時はそれはレッサーCB、と呼ばれていたのを覚えている。レッサー=Lesser、いわゆる、Less&Lessって事であるね。
当時の法令ってのはある意味まだまだザルで、ようやく株主代表訴訟がどうのこうの、って言われ始めていた程度、だと覚えている。
これらのレッサーCB、当時それをやる会社は極めて限られていた・・つまり本当にこれによって資金を注入してもらわなければ倒産してしまう・・と言う会社だ。
「株主代表訴訟をやるならやって下さい。どの道こうでもして資金を入れなければいずれ倒産してしまうんですから。」と言うある会社の役員の方が言ったとか言わないとか言うコメントを強烈に覚えている。
さて当時居たロンドンの会社は大手でもあり、その当時の引受のヘッドに「何で家はやらないんですか?」と聞いた事があるのだが、当時のそのヘッドの答えは
「世間で一応一流と定義されている我々がそういうのをやるわけにはいかんのだよなぁ」というものだった。
つまり余り評判の良い商品では無かった、と言う事だ。また法的な根拠も随分あやふやな箇所があったであろう事も想像がつく。
さてそれでもこのMSCBに関する各社のプロジェクトは徐々に進行していたようで、気付けば当たり前になっており、そしてそれに拍車を掛けたのがライブドア、って感じなわけだ。
ちなみに数字を検証してみると・・・
2003年度 420億
2004年度 4590億
2005年度 8877億
となっており、03年度04年度1兆円を超えていたユーロ円CBは反対に05年度はわずか900億程度にまで激減している。(但し駆け込みの商船三井等は入っていない。2月末頃までの数字)
このエクイティーファイナンス全般に関しての数字を見てみると、2004年度から05年度にかけてCB全体(国内、ユーロ、アルパイン、スイスフラン、MSCB)は概ね7000億程度減っており、反対に公募売り出し等のファイナンスが8000億円程度増えている。
まあ公募に関しては、三井住友FGやみずほFG、またJR東海、三井物産等の大型雄ファリングがあった反面、CBではたいしたものが無かったという感じで、ちなみに担当者に聞くと、決してCBになりそうなファイナンスを公募等へ誘導するような意図的な動きは無いようだ。
しかしながら金額ベースでは詳細は分からないが、いわゆる「新株予約権型」のファイナンスも増えているのはみなさん周知の事実で、これは要は第3者割り当て型ワラント、である。金額自体は微々たるモノになるが、ただそれによるダイリューションはMSCBなんかと何ら遜色は無いので、この辺の動きにも注意は必要だろう。
前に書いたかもしれないが、何故にこれほどまでにMSCBってのが盛んになってしまったのか。
一言で言えば両者の利害が一致してしまった、と言う事になろうか。
証券会社側から見ると、これは実は引受では無く、投資なのであるね。
これはどう言う事かと言うと、要は引受審査が不要なのである。これによる事務手続きやら時間やらの強烈な節約になることは想像するに難くない。
会社として投資へのリスクが取れるのであれば、基本それでOKなのである。
という事は発行側のドキュメンテーションだのなんだのってのも強烈に軽減され(例えばユーロ円CBを発行しようとすれば、当然英文の財務諸表等の提出を求められる)、さらにかなり機動的に資金調達が可能になる。当然既存株主へのダイリューションの影響はある訳であるが、それには配慮する色々な事を特に最近各社が頑張ってやっているのは皆さんもお気づきだろう。
しかしながら当然このMSCBに対する圧力もある訳で、ある人によれば年末くらいにはかなり下火になるんじゃ無いですか、と。
証券会社でもある程度大手で無いとこのMSCBを相手に起債させてそれを一括で買い受けるというのは資金的に難しいわけで、要は中小以下の証券会社からの間接的な批判も結構あるようで、一部訴訟のケースもある。
しかしながらこのMSCBとは言え、それによってマーケットの厚みが増しているのも事実で、そこから色々な進化系が生まれてきて、やがては既存株主にとってもしかしたらダイリューションのネガティブを補って余りあるモノが登場するかも知れない。
但し現状私が見ている限り、どこの起債も「既存株主様には配慮して」プレミアムを強烈に上げたり、Coco条項(Contingent Conversion)と呼ばれるいわゆる転換条項に制限を付けたり、と言うのがあるけれど、どれも結局言い訳的なモノである。これ以上私の頭ではその進化系ってのは想像できない(笑)。
協会としても研究会みたいのを作るようだが、正直今ある色々な批判的な意見に対しての答えはどれも詭弁の域を出ないように思われる。
つまり前にも書いた記憶があるけれど、どこかが大きくこれによってつまづくか、或いは何かこの現状を揺さぶる出来事が起こった場合、さ~っと潮が引くように下火になる可能性は十分にあり得る。しかしながらそれが無くなっても一般投資家には悪影響は無いだろうし、むしろ好感されるべきだろうし、要は困るのは一部証券会社(ネタが一つ消えてしまう訳で、新たな食い扶持を探す必要が出る)とこれから発行しようとしている企業くらいだろうね。
但し、これは穿った見方をすると、当然証券の現場はそれに気付いている訳だから、力のある証券会社は今後稼げるときに稼ごうとするかもしれない。
ある証券会社が中堅企業以下に大規模なローラー作戦を展開している、なんて話も聞くし。
ただしつこいけれど何となく関係者はこの商品の限界をとっくの昔に理解はしているようだから、そんなに長く続かないんだろうなぁ、と。
とりあえず本日はここまで。
初めに私の半専門であるCBに絡む、このMSCBの現状に関して。
ご存知のようにライブドアがリーマンを主幹事として行ったあのMSCBによってこの商品は一気に世間に認知された、と私は考えている。
しかしながらこれ自体はかつてはアメリカ辺りでも行われていたようで、それを見た機転の利いた人間が日本の法令に照らして導入してみた、って感じのようだ。
私自身90年代にロンドンに駐在していた時に、その当時はそれはレッサーCB、と呼ばれていたのを覚えている。レッサー=Lesser、いわゆる、Less&Lessって事であるね。
当時の法令ってのはある意味まだまだザルで、ようやく株主代表訴訟がどうのこうの、って言われ始めていた程度、だと覚えている。
これらのレッサーCB、当時それをやる会社は極めて限られていた・・つまり本当にこれによって資金を注入してもらわなければ倒産してしまう・・と言う会社だ。
「株主代表訴訟をやるならやって下さい。どの道こうでもして資金を入れなければいずれ倒産してしまうんですから。」と言うある会社の役員の方が言ったとか言わないとか言うコメントを強烈に覚えている。
さて当時居たロンドンの会社は大手でもあり、その当時の引受のヘッドに「何で家はやらないんですか?」と聞いた事があるのだが、当時のそのヘッドの答えは
「世間で一応一流と定義されている我々がそういうのをやるわけにはいかんのだよなぁ」というものだった。
つまり余り評判の良い商品では無かった、と言う事だ。また法的な根拠も随分あやふやな箇所があったであろう事も想像がつく。
さてそれでもこのMSCBに関する各社のプロジェクトは徐々に進行していたようで、気付けば当たり前になっており、そしてそれに拍車を掛けたのがライブドア、って感じなわけだ。
ちなみに数字を検証してみると・・・
2003年度 420億
2004年度 4590億
2005年度 8877億
となっており、03年度04年度1兆円を超えていたユーロ円CBは反対に05年度はわずか900億程度にまで激減している。(但し駆け込みの商船三井等は入っていない。2月末頃までの数字)
このエクイティーファイナンス全般に関しての数字を見てみると、2004年度から05年度にかけてCB全体(国内、ユーロ、アルパイン、スイスフラン、MSCB)は概ね7000億程度減っており、反対に公募売り出し等のファイナンスが8000億円程度増えている。
まあ公募に関しては、三井住友FGやみずほFG、またJR東海、三井物産等の大型雄ファリングがあった反面、CBではたいしたものが無かったという感じで、ちなみに担当者に聞くと、決してCBになりそうなファイナンスを公募等へ誘導するような意図的な動きは無いようだ。
しかしながら金額ベースでは詳細は分からないが、いわゆる「新株予約権型」のファイナンスも増えているのはみなさん周知の事実で、これは要は第3者割り当て型ワラント、である。金額自体は微々たるモノになるが、ただそれによるダイリューションはMSCBなんかと何ら遜色は無いので、この辺の動きにも注意は必要だろう。
前に書いたかもしれないが、何故にこれほどまでにMSCBってのが盛んになってしまったのか。
一言で言えば両者の利害が一致してしまった、と言う事になろうか。
証券会社側から見ると、これは実は引受では無く、投資なのであるね。
これはどう言う事かと言うと、要は引受審査が不要なのである。これによる事務手続きやら時間やらの強烈な節約になることは想像するに難くない。
会社として投資へのリスクが取れるのであれば、基本それでOKなのである。
という事は発行側のドキュメンテーションだのなんだのってのも強烈に軽減され(例えばユーロ円CBを発行しようとすれば、当然英文の財務諸表等の提出を求められる)、さらにかなり機動的に資金調達が可能になる。当然既存株主へのダイリューションの影響はある訳であるが、それには配慮する色々な事を特に最近各社が頑張ってやっているのは皆さんもお気づきだろう。
しかしながら当然このMSCBに対する圧力もある訳で、ある人によれば年末くらいにはかなり下火になるんじゃ無いですか、と。
証券会社でもある程度大手で無いとこのMSCBを相手に起債させてそれを一括で買い受けるというのは資金的に難しいわけで、要は中小以下の証券会社からの間接的な批判も結構あるようで、一部訴訟のケースもある。
しかしながらこのMSCBとは言え、それによってマーケットの厚みが増しているのも事実で、そこから色々な進化系が生まれてきて、やがては既存株主にとってもしかしたらダイリューションのネガティブを補って余りあるモノが登場するかも知れない。
但し現状私が見ている限り、どこの起債も「既存株主様には配慮して」プレミアムを強烈に上げたり、Coco条項(Contingent Conversion)と呼ばれるいわゆる転換条項に制限を付けたり、と言うのがあるけれど、どれも結局言い訳的なモノである。これ以上私の頭ではその進化系ってのは想像できない(笑)。
協会としても研究会みたいのを作るようだが、正直今ある色々な批判的な意見に対しての答えはどれも詭弁の域を出ないように思われる。
つまり前にも書いた記憶があるけれど、どこかが大きくこれによってつまづくか、或いは何かこの現状を揺さぶる出来事が起こった場合、さ~っと潮が引くように下火になる可能性は十分にあり得る。しかしながらそれが無くなっても一般投資家には悪影響は無いだろうし、むしろ好感されるべきだろうし、要は困るのは一部証券会社(ネタが一つ消えてしまう訳で、新たな食い扶持を探す必要が出る)とこれから発行しようとしている企業くらいだろうね。
但し、これは穿った見方をすると、当然証券の現場はそれに気付いている訳だから、力のある証券会社は今後稼げるときに稼ごうとするかもしれない。
ある証券会社が中堅企業以下に大規模なローラー作戦を展開している、なんて話も聞くし。
ただしつこいけれど何となく関係者はこの商品の限界をとっくの昔に理解はしているようだから、そんなに長く続かないんだろうなぁ、と。
とりあえず本日はここまで。
「レッサーCB」という命名には思わず頷いてしまいました。MSCBの
仕組みを初めて知った時、「これこそが株式を上場している特典」
なんだと、妙に感心した覚えがあります。
MSCBの進化系は、こっち側にも振れていたりします。下落修正はす
れど、上昇修正しない転換価額の修正条件には超びっくり。
http://disclose.finance.livedoor.com/pdf/2005/12/08/1c080810_20051208.pdf
この時ライブドアグループとして「大株主 & 引き受け幹事」とい
う立場でした。打ち出の小槌状態。ライブドア関連企業はとても怖
くて買えないと強く認識したリリースです。
MSCBは、株式投資を始めた初心者を、あっと言う間に場外へと追い
払ってしまい、結局はそれが自分たち(証券業界)に跳ね返ってくる
のでは。とにかく、下火になってくれる方がいいなぁ。
記事、興味深く拝見させていただきました。大変勉強になりました。
日本でいうところのMSCBは、欧州では「レッサーCB」と呼ばれていたのですか・・・実態を良く言い表していますね。米国では、「デス・スパイラル」と呼ばれていると聞いたことがありますが、どちらにしろ悪い印象がつきまとっておりますねぇ。
新株予約権型のファイナンスですが、自分としては、MSCB引き受けのリスクを減らすことを目的とした形態なのではないかな、と考えておりました。
MSCBが発行されるようになった当初は存在しなかった、引き受け手側からの繰上償還(プットオプション?)条項が定められるようになったのと一緒で、引き受け手がより一層のリスク抑制を図った結果、新株予約権を用いる手法が生まれたのではないかと考えていたのですが、実際は、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
ライブドアがMSCBを発行し、悪名?が広く知れ渡ったのも一因かも知れませんが。
自分としても、MSCBも新株予約権型のファイナンスも下火になって欲しいものです。
株式市場そのもののイメージ悪化にもつながると思いますので・・・。
一つ素朴な質問をしてよいでしょうか?
東京株式市場ですと 一日の取引量とか売買代金とかは 簡単に調べられるのですが・・・・たとえば 株式第一部だと 先週金曜日だったかな・・・ 95697万株 1254168百万円 などと すぐ東京株式市場ですと分かるのです。
ところが NYSE(ニューヨーク株式市場)ですと
たぶん 33億株の出来だなのかなぁ? たぶん Volumeですと 33億前後くらいなのです。しかし Dealing Outputですと まるっきり公表されていない。私の勘違いなのでしょうか?よく分からないのです。NYSEの一日の売買代金(ドル換算でのVolume)などになると まるっきり公表されていないような感じなのです。もし 子鬼さんがご存知なら 教えていただけないでしょうか?
今まで 何故 NYSEのドル換算での(Dealing Output?)売買代金に無関心でいたのか 自分で自分を恥じているところです。