地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

実録(?)自己売買部門

2006-02-04 03:54:30 | ライブドア問題
前回の記事において、マスコミと実態のかい離がお分かり頂けたようで私は嬉しい。
実は私は正当なる自己売買部門に在籍したことが無いので、この分野に関しては正直余り詳しくは無い。がしかし、スイスにおいて今までやってきたのが転換社債とワラントのマーケットメイク業務(ディーラー業務)であるので、それも言ってみれば会社の自己資金を使ってやっていたのだからミニチュアな自己売買部門に居たとも言える。
加えてそれらの業務を遂行するには当然東京やロンドンの株式部系と繋がって来るので、例えば営業一本槍で来た人よりは分かっているかも知れない。
と言う前提の元でのお話なので、よりお詳しい方はご一報下さい。

さて、現在の証券界を取り巻く環境を考えた場合、昔は東証が決めた手数料率テーブルがあって、どのお客もそのテーブルに従って手数料を払わねばならなかったのであるが、それに比べると現在の手数料自由化は非常に証券会社にとっては厳しいのだね。
つまり、証券会社はこの手数料率の激しい下落、さらにネットのドラスティックな普及によってかなりの痛手を被っているのである。総合証券会社はそれでも例えば海外やら起債にその活路を見出せるが、ちょっと中途半端な証券会社は苦しいだろうと思う。

さて、証券会社であるから当然自分のところでも株をやっている。
大手はかなり組織だってやっているわけだが、中小証券はいわゆる「契約ディーラー」を使って、収益を上げればナンボ給料を出します、でも収益が上がらず損したら給料はありません、或いはご自身で負担して下さい、的な人を常時募集している。言ってみれば、会社はその資金を提供するからある程度の決まりの中で頑張って収益をあげて頂戴ね、って事だ。当然これも「自己売買部門」の一部になる。

色々な知り合いの意見を集約してみると、これからはセールス部隊ってのはある意味コストセンターになり、そしてそれを補うのが自己売買部門だろう、と。
これが大きな流れになっていると私も思う。

そんな中で自己売買部門、書いたように契約ディーラーもそうだが、話を大手に限って書いてみると・・
色々とやり方は各社まちまちだろうが、各人がある程度のポジション枠を持って、例えばA君のチーム5人は株式、Bさんのチームは先物オプション、Cちゃんのチームはアービトラージなら何でも来い、的な感じになっていると思う。彼らはまさに契約ディーラーのサラリーマン版であるね。

また当然顧客の受け手になるべくチームもある。個人的にはこれが根幹をなすブック(勘定)だと思うが、例えば引き受けたモノの割り当てをもらったり、或いは顧客のプリンシパルバスケットに向かったり、チョンボを多少は引き受けたり、そして基本は相場観にてポジション運営をしているチームであるね。大手はこの手のブックを東京時間が終わればロンドンに、ロンドンが終わればNYに、回していくところもある。これによって24時間態勢で相場に対峙していくわけだ。
そんな中でやっているところは大規模にやっているバスケット。「お昼時間のバスケット動向は、売り300億、買い450億でやや買いが優勢のようです」的な記事をご覧になった方も居ると思うが、お昼時間であるから当然場は閉まっているわけで、これは自己が顧客から受注した額である。
バスケットも大きく2つあって、一つはエージェンシーバスケットと言われて、要は顧客が勝手に注文としてくれるようなものと、もう一つはこのプリンシパル
、つまり相手は「これこれを決めてくれ」と言ってきてそれに対して自己が行けると思えばその場で全部値段を決めて約定する、と言うものだ。
当然受けたバスケットをある程度は自己ポジションの中で相殺させ、そしてあるものはその後の場中に処分に行ったりリスクヘッジをしにいく訳だ。
また、ブラインドバスケットってのがあって、これは顧客は銘柄名をブラインド(隠して)にして、その各銘柄の基本データ(平均の出来高だのベータだのってな感じのデータ)のみを証券会社に渡し、「このブラインド全部で100銘柄、総額300億円、さて手数料ハウマッチ?」と聞かれ、自己は行けると思えば、「売りなら10BP、買いなら12BP」と返事をする。
当然大手にはその銘柄解析システムがあるから、基本データを入れて銘柄を弾き出し、現状の自己のポジション状況を見ながら売りならナンボ、買いならナンボってな手数料を出すわけだ。これらの玉は当然いずれ場に出てくる。

この顧客の受けてのブックは、いわゆる『決め商い』なんてのもやる。これは投資家が「ソニー10万買いたい」と昼休みに言ってきたりするのに対して、いくら、と値段を出すことを言う。これも大体はコンペで、顧客は当然一番値段の良い所と約定する訳だ。これは海外でも結構盛んであるね。

統計によると自己売買は昨年で約300兆あるそうで、その内訳はざっと上述のような感じになる。
コメント欄で書かれていたけれど、東証の統計の自己売買には一部顧客のポジションも入っている、と言うのは、決め商い、バスケットなんかは、それを自己が処分するまでは顧客のポジションをそのまま移管しただけだから、そういう事も言えると思う。また外資系が盛んにやっているプライムブローカレージ業務(決済から貸し株から何から一括してやってあげますよ、と言う業務だが、説明すると長いのでそんな感じで理解して置いてください)をやっていれば、顧客の名前は表に出ないであたかもその証券会社の商いのように見えるから、これが統計上何処へ行くのかは調べないと分からないが、これなんかももし自己に入るとすれば、それは実は顧客のポジションである、とも言える。

つまり証券マンがベッタリと相場に張り付いて1かい2やりをずーっとやっているだけが自己売買ではないってことをまず今回はご理解して頂きたい。




2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
自己売買部門が恒常的にマイナスである理由 (夕凪)
2006-02-04 13:22:28
こんにちは小鬼さん。



わたしも外国人投資家の買い割合とTOPIXの上昇関係を掴んでから

「投資部門別売買状況」を追っているのですが、なぜ「自己売買

部門」が恒常的にマイナスとなりえるのかが理解できました。



自己のショートだけではなく、市場外顧客からの依頼で買い受け

し、場中で売っている場合があるからなのですね。お陰で賢くな

りました。



先週1/27(金)の日経平均急騰は、この「投資部門別売買状況」の

発表も一因となった気がします。売り主体は「自己売買部門」の

腰が浮いた売りで、買い手は「個人の現物」と腰の入ったもので

あると分かったからには、外国人投資家が自己部門の買戻しを狙っ

て、つっかけたのではないかと思っています。(そんなには単純じゃ

ない??)



その証に、先週は、外国人投資家はここしばらくなかった「大幅

買い越し」、反対に自己売買部門も、ここしばらくなかった「買

い越し」でした。金曜日は自己売買部門が相当痛めつけられたの

ではないかと想像すると、すごい土俵の上で、私たちは参加して

いるんだなぁ とあらためて思います。



今後も楽しみにしています!

それでは、また!
返信する
Unknown (小鬼)
2006-02-10 08:19:37
夕凪所長さま



おお、コメント有難うございます!今回は余りにも自身が恥ずかしくて貴掲示板に参加できませんでしたが、次回は何かあったら参加させていただきます!

セミナー頑張ってくださいね!あっしも日本に居たら是非聴講させて頂きたかったのですが・・・

是非私が次回日本へ出張等で行く際には、所長さまのお時間が許せばお会いしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます!!

今後とも頑張ってくださいね!
返信する