地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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予定通り、TBSの不思議な防衛策について

2005-05-20 08:09:55 | 買収防衛
が~ん、途中まで書いたところでPCがスタックしたぁ。。でもめげずにもう一度(偉いっ)。

さて最初にさるさるで書いたように、私の元ボス、N証券出身のAさんとの議論での話から。
まずはニレコの防衛策に関しては、私が記事で結論付けたようにニレコがあの策を変更しない限り長期投資には向かない、と言うのにはAさんも賛成だった。同時にイーアクセスのようなスタイルであれば一般投資家にも問題は無いよね、と。これで多少はほっとした(笑)。
そして例のMSCBに関してであるが、実はこれは「有利発行にはならない」と言う結論が出ているそうだ。毎日転換価格が修正されるものですら、多少の色は付いているものの、やはりOKである、と。
金融機関が何か新しいことをやろうとするときは必ず金融庁にお伺いを立てる訳だが、このMSCBに関する金融庁の回答はいわゆる「NO ACTION LETTER」、すなわちその案件に関しては金融庁はアクションを起こしません=問題なし、となっているそうで、私は正式な見解が出ている事を知らなかった(汗)。
これによりライブドア問題の時に展開してきた私の意見も決して間違っては居なかったと言う事になって改めてまたほっとした。
まあ、そうでなければどの道どっかで突っかかっていたはずだし、またMSCBに関しては業界では何度も書いてきたように別に不思議でも何でも無いことだったので自信はあったが。
問題は、果たしてどの程度のマスコミ関係者が本当にその商品の仕組みなりを理解していたか、と言う事だと思うし、まあそれはさんざん書いてきたことなので、これ以上は書かないが。

~~~
さて、日テレも防衛策を発表したようだが、本日のお題は昨日示唆していたTBSの「不思議な」防衛策。
TBSのプレスレリースは24ページにわたるもので、正直熟読はしていない。ただ商品自体は理解していると思うので念のため。
以下記事の抜粋であるが、

『NPIは新株予約権の取得で6億円をTBSに支払う。新株予約権行使の場合、(TBSの調達)総額は最大800億円。行使期間は6月6日から2006年6月30日までの約2年間。
行使価格については、TBSはNPIとの契約で3つのケースに分けた。
敵対的買収者が現れた場合は、その時点から直前の6カ月間の平均株価に10%割引した価格とする。
また、買収者が現れない平時のケースでは、通常は行使価格を4000円と時価よりも高めに設定。
3番目のケースとして、行使期間中に買収者が現れない場合、行使期限の1カ月前にNPIが自らの判断で権利行使し、TBSの株式を時価で取得できる。』

と言うモノだが、特にマスコミの皆様、宜しいですか(笑)。

まず新株予約権1個につき1万株が付いてくる。そして予約権の総数が2000個なので、生まれる新株の総数は2千万株になる。
予約権1個の値段は30万円(つまり1株あたり30円)で、その総数が2000個、ゆえに日興プリンシパル(以下NPI)は総額6億円を払ってこの予約権全部を買う。
「新株予約権行使の場合、総額は最大800億円」の意味は、通常この予約権のストライクプライス(行使価格)は1株あたり4000円なので、4000*2千万株=800億円、と言う事だ。
(しかしながらこのレリースをよ~く読んでみると、上限修正価格が4500円に設定されているので、恐らく最大は800億でなくて900億であると思う。さらにレリースには<最大800億円規模>となっているのでここは間違いだろう。)

後は読んでいただければお分かりになると思うが、3種類の行使価格決定要因がある、と言う事だ。
つまり、
1.敵対的買収者が現れると、行使価格は4000円ではなくて、一気に時価の90%になり、ゆえにNPIはそれにより常時時価の10%ディスカウントで2千万株までTBS株を買える。

2.平時のケースでは、行使価格は4000円。現在のTBSの時価は1800円どころだから、通常このあたりの株価が続く限り、NPIはこれを行使する事はあり得ない。
平たく言うと、これを行使して2000万株ゲットするには、4000*2千万株=800億円掛かるわけだが、時価が1800円であれば2千万株を買うには360億円あれば充分なわけだから、ゆえにそんな馬鹿げた方法をわざわざ使う事はないですね、と言う事だ。

3.結局敵対的買収者が現れず、この予約権が終わりを迎えようとしているとき、その終了1ヶ月前からNPIはこの権利を行使できる。
この記事の抜粋では書いていないが、その際の行使価格は、平成19年6月1日以降。毎週金曜日にそれまでのTBS株価の終値の平均値に修正される。これはライブドアのMSCBと同じスタイルの、まあMS予約権とでも言おうか。
この際の上限修正価格が4500円になっているので、仮に平均値が5000円とか1万円になっているならば、NPIは大もうけを出来る事になる。しかし、基本時価近辺で結局2千万株買える、と言う事だ。

さて、ここまで書いてお気づきになっただろうか?
そう、『敵対的買収者が現れようが現れまいが、いずれにせよNPIはTBS株の約20%を最終的に買える』のだ。
これはなにを意味するのか、実はここが私のもっとも不思議に思ったゆえんなのだが。
つまり、TBSはNPIに資本参加を求めた、と言う事が出来る。それはそれで良いけれど、じゃあ例えばNPIはあのMr.アートの北尾氏率いるSBIと何が違うのか、と言う事。
NPI、まさに何でも投資出来る会社である。ベンチャーキャピタルとも言えるし、要はプリンシパル・インベストメント、って意味は「何でも屋」って事である。
フジテレビの件ではここが動いたってあったけれど、また「日興」の名が付いているから変な噂も無いだろうし、でも私には分からない。だって悪意な見方をすれば、そうやってゲットしたTBS株をいつまで持ってるんだろう?って疑問プラス、そうやってゲットした株が儲かるならば例えばその後第三者に転売だって出来ちゃう、その相手が例えばライブドアであってもね。
明日のことすら碌に読めないこの時代、2年後に何が起きるかなんて誰にも分からないじゃないのかなぁ。

ちなみにレリースでは「第三者割り当てによる新株予約権発行の目的」として、
『NPIとの包括的な財務アドバイザリー契約を締結することと致しました。
NPIとの間で「プロジェクト提携委員会」を設置し、当グループ内外で進行する放送事業やコンテンツ開発、流通当に関連したプロジェクトに共同して取り組む検討を始めました。以下省略』

ライブドアが駄目で、ソフトバンクが駄目で、でもSBIならちょっとは良くて、そしてNPIなら全然OKさ、ってその論理、私の目から見れば基本自分の会社の20%を切り売りしちゃうに当って何が違うのだろう。
ライブドアにはさんざんビジョンが無いだのネットとテレビの融合なんてどうのこうの、って言ってたマスコミの最先端のTBSだけど、じゃあ本当にNPIにそんなノウハウや人材が揃っているのかなぁ。。
これらに関しては言いたい事はまだまだあるけれど、とりあえずそれは置いておいて。

最後に、一般株主への影響である。
3種類の行使どれを取っても影響はある。約20%のダイリューションが単純に発生するので、その時点での一般株主はその影響を受ける。
実際はその他株式分割プラン等を用意しているようなので、その辺の絡みはもう一度この24ページを熟読して再度確認するが、単純にこの予約権行使だけを考えれば、結論はきわめてシンプルである。
NPIはこの予約権購入に6億円を払うわけだから、買収者が現れない最後の段階では私はこれを行使してくると思うので、2年後の今月今夜頃の株主の方は若干のケアを要すると思う。

とりあえずこんな感じで一旦終わります。



2 コメント

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弁護士大繁盛 (luna)
2005-05-20 18:58:47
小鬼先生、解説をありがとうございます。

TBSの場合は、経営陣がエクスキューズをしやすい方法だってことのようですね。



私のTBS関連の友人は、「今の経営陣は、大した戦略もないし、いっそのこと買収されて新しくやり直した方がいいかも~~」なんて言ってましたよ。(苦笑)





さて、各企業の決算発表が相次いでいますね。



そして、株主総会に向けて、新株予約権などの買収防衛策の発表もメジロおし・・・・



これら一連の動きを見ていると

ライブドア・フジ・ニッポン放送の買収劇によって大きな恩恵を得ているのが

M&Aなどを扱かう企業法務専門の弁護士事務所ではないでしょうか。



今回の騒動でかかった弁護士費用は決算発表によると、

ライブドアが4億円

フジが2億円

ニッポン放送が1億5千万円



そして、次から次へと発表される買収防衛策を見ると、専門の弁護士さんたちは引く手あまたで大忙しではないかと思います。



契約社会アメリカでは、何から何まで弁護士が必要でしたので、毎年弁護士費用の支払いが大変だったことを思い出します。



彼らは、タイムチャージしますので、いつもいかに手短にポイントを得た質問をしたらいいか、考えてましたね。

そうしないと、時間ばかりかかって、費用がかさみますから・・・・(苦笑)



ちなみに、ライブドアの弁護を担当した事務所は、今回の件が初めての大型案件で

しかも3連勝したので、ひっぱりだこのようですね。

これからも、そのニーズは増えるでしょうから前途洋々でしょう。



買収防衛策が、経営者の保身っぽいのがとても気になりますが、企業法務の法整備がきちんとしてゆくプロセスだと見れば悪いことではないと思っています。





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Unknown (小鬼)
2005-05-24 04:40:34
LUNAさん、本当にレスが遅くなってごめんなさい!

どうもBLOGの壁にぶつかっているようです、あっしってば(笑)。

今日も書くことはかなり仕入れたのですが。。

こんな時期もあるわなぁ、とどうぞ笑って無視していただければ幸甚です。



ペンタックスも同じような防衛策を発表したのでうが、そのペンタックスのケースはまた今までの通常のケースとちょいと異なるんですよ。

それを追いますので、明日明後日ロンドン出張を終えたらゆっくり検証しますね。

どうぞ見捨てないで下さいね!!
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