地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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最近の起債(CB)について

2006-03-20 06:41:18 | CB教室
またまた非常に間が空いてしまい申し訳ない。
先週までは強烈に忙しく、自分の席すらを暖める暇が無かったのだが、今週からは少々時間が出来そうなので、少し相場やら何やらに思いをめぐらせる時間も出来そうなので、また頑張ってアップする予定であるので、どうぞみなさま見捨てずにお願いします。

さて、その先週の強烈に忙しい最中に2本のCBの起債があった。
13日(月)の商船三井、そして14日(火)の武蔵精密である。
商船三井はユーロ、そして武蔵はアルパインであった。

弊社ロンドンの後輩がいつも起債があると詳細なレポートを送ってくれるのだが、それには私の印象なんかのヒアリングも入っていて、しかしながら奴の文章力と言うかまとめ方には脱帽する。

<商船三井>
同業の川崎汽船(9107)が04年3月2日に300億円、05年3月15日にも同じく300億円CBを発行しているが、それに次ぐ海運業界の起債。また当社のエクイティファイナンスとしては、1990年以来約16年振りとなる。
当債はコールオプションが付与されただけの極めてシンプルなスキームながら、アップ率仮条件レンジは37~42%と高めに設定されている。
アウトライト系の投資家の中には、当社今期PERは市場コンセンサスで10倍弱と同業2社と同様に低水準にあるが、今後の持続的な成長に対して懐疑的な見方を示す投資家もおり、直近の下落幅程度以上の株価上昇は見込みづらく、参加を見送った先も一部あり。
また一方でヘッジ系の投資家であっても買いに走るレベルではなく、手許の試算ではクレジットスプレッドを20~30bp程度、借株コストを25~50bp程度(本日既に場中で起債の噂は流れていた模様だが、急いで借株を手当てする動きは特に見られず)、100日平均ヒストリカル・ボラティリティ36%程度に対してインプライド・ボラティリティを30%台前半に見た場合、募集価格に近い理論価格が導き出せるが、「2月に入ってからの金利上昇局面を受け日々厳しい条件となっていった」との感想も主幹事から聞かれた程のややタイトな条件設定。
ただこの水準ではインプライド・ボラティリティを35%弱程度まで見る必要があることを考えると、ヘッジ系の投資家であっても決して買いやすい水準とは言えない。
ただ2月中旬からの当社株価下落幅が本債のアップ率と同レベルであったことや、結果としてヒストリカル・ボラティリティが上昇したことで、投資家としても何とか買えるプライシングレベルとなったとの声も一部聞かれたこともあるが、久しぶりの大型起債に対してややタイトなプライシングには不満を持ちつつも、この新発債に対して枯渇感の強いマーケット下、多くの投資家に「買わない」という選択肢はなかったとも言えよう。結局、ロンドン時間7時ローンチ、13時35分プライシングというタイムスケジュールのブックビルディングにより、「200件程度、8倍強」(主幹事)の需要を集め、仮条件レンジ(37~42%)の上限(42.05%)にてプライシングされている。このややタイトにも映る条件設定であっても成功イッシューとなったことに対して、「CBマーケットが最も強かった頃のような起債」との声もマーケットからは聞かれた。
当債は野村及び大和のジョイントディールで「スプリットオーダーの確認等で時間が掛かった」(主幹事)こともあり、アロケーションがロンドン時間17時過ぎとなった模様。そのため本日のロンドン市場でのセカンダリー取引は非常に限定的となっている。

一部割愛しているが、まさにこの通りの動きとなった。

そして
<武蔵精密>
昨日の商船三井(9104)ユーロ円CBに続き、2日連続の野村主幹事株絡み外債。また野村ブックランナーのアルパイン円CBとしては05年9月1日ローンチのアビリット
(6423)債以来となる。
アルパイン円CBとしては初めてCoCo条項を付与していることや、アップ率レンジを27~37%と高めに設定していること等を勘案すると決して割安とは言えない条件設定。
ローンチ後1時間程度経過したところで当債に当社大株主ホンダ(26.2%保有)が保証を付けているといった噂がマーケットに流れ、120/100や79/69といったレベルで聞かれていたクレジット気配値が突如22/17といったレベルにまでタイト化したことで状況が一変。業者も様子見姿勢を強めグレープライスが全く見られなくなった。
元々昨日の商船三井債とは違い、借株の手当てが非常に難しい銘柄(一部では5~6%との声も)ではあるものの、当社業界や今後のエクイティストーリー、そもそもの低PERから来る割安感等がアウトライト系の投資家にも好感される起債ではあったが、この思い違いとも取れるタイトなクレジット気配値が起因する部分も大きく、「ブックは150件程度、10倍程度」の需要を集め、アップ率レンジの上限にてプライシングされている(ロンドン時間13時10分プライシング)。通常であればアウトライ系の投資家はアップ率の高さを敬遠しがちであるが、(昨日の商船三井債と同様)この1ヶ月で株価が急落していることでアウトライト系の投資家であっても買えるプライシングレベルになったとの声が聞かれた。また、商船三井債が本日募集価格を割って推移したこと(店頭終値で102.25/102.50)で投資家からは当債に乗り換える動きも一部見られる等、比較感からも買いやすかった、とも。
「多くの投資家層は重なるものの、昨日の商船三井債とは違い当債はUK大陸のアウトライト系の投資家を中心に広く販売された」とのことだが、「予想外」のホットイッシューでもあったと。またホットイッシューとなった結果アロケーション額が少なくなったことから、一部投資家にアロケーション後直ぐに売却する動きも見られたが、タイトなクレジットを信用した投資家がセカンダリーで購入に動いた模様。主幹事も「明日になって問題にならなければ良いが」と漏らしていた。
手許の試算ではクレジットスプレッドを80~100bp程度、借株コストを400~600bp程度、100日平均ヒストリカル・ボラティリティ45%程度に対してインプライド・ボラティリティを35%程度に見た場合、アップ率上限を前提に募集価格に近い理論価格が導き出せるが、主幹事も「本来であれば仮条件の上限を目指せれば良い」と言うようなプライシングレベル。「特殊要因」のタイトなクレジット気配値により結果として高いグレーマーケットプライスが見られたが、仮にクレジットを25bp程度まで突っ込んだ場合であってもインプライド・ボラティリティを40%近くまで見る必要があることを考えると、実態を反映していないグレーマーケットレベルと言える一方で引き続き需給関係が良好な証左とも捉えられよう。
また、グリーンシューも「全額行使の予定」と。

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さて、商船三井はさすがに大型でしかも時期的に3月末で余り買い進まれるような展開は続いていないが、武蔵の方は割りと堅調な動きが続いている。
また、さらに突っ込んだ意見があって面白かったので、それをご紹介しよう。

まず何故この時期にこの大型起債か、と言う疑問に対してマーケットで言われているのは、
「武蔵は払い込みが4月だけれど、商船三井は3月。つまり野村が最後の最後、リーグテーブルでの1位獲得のための逆転ホームランを放ったのだろう」
と言うのが一般的。この起債のお陰でEQファイナンスにおいては野村がどうやらテーブル1位を確実にしたようだ。

銘柄感から言うと、これら船舶会社の需給が逼迫しているというのは従来から言われていたので、それに伴うファイナンス、との見方がもっぱらではあるが、ただ市場では、でもこれから船舶はどうなのよ?って意見も結構ある。反対に武蔵はホンダ系の部品会社で非常に優良な会社であるというのは誰もが知っており、まあ「ホンダの保証が付く」なんてガセネタが流れたようだけれどそれを本気で信じた向きがあったとすればそれは素人であるね。そんな噂を意図的に流した向きがあるんじゃないかなぁ、と邪推しているあっしであるが、それにしてもその噂に伴うクレジットスプレッドの上昇はやっぱり素人くささが伴うと思うな。

さて、最後にこれは皆さんも時間があったら調べて見るといいと思うが、とんでもない話。私自身全くノーマークであったし、実は証券関係者のかなりの人間もノーマークであったであろう事実が出てきた。
社内のある人間が、この商船三井に代わる投資対象として川崎汽船のCBを勧めたところ、ある投資家が「それは買いません。何故なら四季報を見たことがありますか?」と言われたらしい。
それでもって彼が急いで四季報を見てみると・・・

まずは商船三井のページをめくってみよう。
四季報には「ファイナンス」と言う項目があるのだが、なんとこの商船三井に関しては、「06上、転社500億予定」と書かれているではないか!!!

そして川崎汽船のページをめくってみよう。
「06上、転社300億予定」と書かれている!

しかしファイナンス情報ってのはこれはインサイダーをもっとも疑われる情報であるはずなのに、そんな堂々と四季報に書いてあって良いのか?と。このニュースは結構我々業界関係者にはインパクトがあって、みな一様に驚いた。
もしかしたら皆さんはご存知だったかも知れないが、だとしたら我々の怠慢であろうね。

あるロンドンの外人にこれを教えたらすぐにメッセージの返事が返って来て曰く
「小鬼、早く全部のページを調べてくれ」

ふざけるなっつーの、せめて交代でやろうぜ、と返事をしたのは言うまでも無い。
こんなところに転がっているのですなぁ、重要な情報が。。