地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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MPOで見逃してはいけないこと

2005-08-12 04:44:25 | CB教室
YOZANのMPOに気をとられすぎていたようで、昨日のサンシティのMPOを見逃してしまっていた(汗)。

ざっくりとした条件は、総額45億円(当該銘柄の時価総額は約218億円であるので、そのダイリューションは約20%弱になろうか)で、主幹事は野村である。
毎月転換価格が修正される、いわゆるMSCBである。
YOZANと大きく違う点は、この会社の業績は(四季報等を見る限りは)極めてまともであり、これなら野村の引受審査もGOサインを出すであろうね。
またこの不動産系の会社と言うのはどうしても目先のお金が居る。
かつて別の日系銀行系証券に居たときに、多少業態は違うけれど不動産系の会社が普通のCBを出したのだが、そのマンデートが降りた際に私も出張の合間に訪問したことがある。
その会社は割りと新進気鋭ではあったが、社長、専務ともに一級建築士の資格を持った、別の不動産会社からの脱サラ組であり、そのお2人で作った会社であった。
その訪問した時には、社長、専務ともが同席してくださり、色々とお話を伺ったのだが、ご両人曰く「とにかくお金は少しでも多く欲しい。今出回っている(数年前の銀行等が積極的に処分したマンション等)物件を買い捲れば、これは間違いなく物凄い収益をもたらすんです」と。
実際彼らはそれでさらなる成功を収め、市場も2部から1部へ鞍替えし、今も堅実なご商売を続けられている。

私は、野村が本当にたいしたものだなぁ、と思うのはそのフットワークの軽さである。
何度もここで書いているように、野村はとにかく稼げると踏んだものには徹底的に勝負を賭ける。間違いなく野村自身もこのMPOに関しては何らかの規制がかかると読んでいると思うにも関わらず、行けるときには徹底的に行く。この姿勢こそが現在の特に都市銀行系証券にはとても真似できない技であろう。

野村證券はそれでもこのMPOを何とか世間に認知させようと、色々な説明を行っているようだが、その辺はどうも浅いと感じる。
どんなにこのMPOを正当化しようとも、絶対的事実は変わらないのである。
つまり、ダイリューション(希薄化)である。
もちろん、仮にダイリューション50%の起債に対して、EPSが5割増しになるような事でもあれば、その株式価値は変わらないと、理論的に考えることが出来るが、実際そのようなケースにお目にかかったことは無い。

いくら借株を制限しようとも、CBディーラーとして言わせてもらえば、やり方はナンボでもある。
昨日書いたような通常のCBであれば、ディーラーはある程度のポジションを持って、その後のセカンダリー運営をしていくことになるが、これがことMPOとなれば、ディーラーはセカンダリーマーケットの事を一切気にせず、ひたすら与えられたCBからの利益を出すことに専念すればいい。
もっと言えば昨今のMPOは転換価格がVWAPの数日間の平均値の90%に月一回は下方修正されるわけだから、当初のコストは100(パー)でも、普通に転換価格が90%に修正されればそのCBの理論値は約10%上の110近辺になる訳だから、単純に転換してやればそれで10%の利益は確定利付きのようなものである。

実際、このMPOの処理に携わったディーラーに聞くところによると、
「いや、小鬼さん、10%取れるのは当たり前じゃないですか。むしろそっからどの程度上乗せするかが問題なんですよ」との事だった。

つまりどんなに美辞麗句を重ねようが根本的な部分は何の変化も無いことは、当該銘柄の投資家の皆さんは基本肝に銘じておくべきだと思う。
もちろん過去のイシューの統計を分析してみれば多少違った結果が得られるかも知れないが、特有の事実にだけは常に注意をしておくことに越したことは無い。

つい先日、某掲示板で紹介されていた、ダントツ投資研究所の所長さんとお知り合いになった。
彼は非常にこのMPOをつぶさに研究されており、その緻密さには正直舌を巻いたのだが、このHPのMPOに関する項目は、株式投資をされる方されている方は必読であろうと思う。

何度も言うように、MPOは決して諸悪の根源ではない。やはりたとえそういった形であってもある企業に資金注入がされることによって、その企業の業績がドラスティックに伸びる可能性があるケースも多々ある。
また通常の小型銘柄の場合、いくら時代が直接金融の時代とは言っても、まだまだ資本市場から資金を調達するのは容易ではないケースがある。そのような時にこのMPOは本来の威力を発揮するのだろうと思う。
かつてこれが「Lesser CB」と呼ばれた、倒産寸前の会社を喰いものにしよう、と言う意図とは明白に決別していることは認識する必要がある。
しかしながら、あのYOZANのCBや、遡ればこれはCBでは無かったが、あのニッポン放送がやろうとしたポイズンピルの新株予約権の巨大なダイリューションを伴うファイナンスは、せっかくのまともな努力を踏みにじるものである、と言って置こう。