弁理士近藤充紀のちまちま中間手続50
拒絶理由通知
引用例1には本願発明と類似の吸熱化学反応について記載されている。同1には熱交換器入り口での熱流体TFと熱交換器出口での流れSTの温度差が250℃未満であることについて記載されていないが、そのような事項は当業者が適宜規定する事項であるし、同1には熱交換器出口でのSTの温度が600~680℃であることからすると、熱交換器入り口でのTFが930℃未満あるいは800℃未満となっている蓋然性が高いし、そのようにTFの温度設定をすることは当業者が容易になし得る事項である。
意見書
引用文献1には、本願発明と類似の吸熱化学反応について記載されているが、(a)「熱流体TFが圧力0.7絶対圧力以上の蒸気流である」点、(b)「熱交換器からの出口で熱流体TFの少なくとも一部が、動力、特に電力を発生するためにタービン内で減圧される」点、および、(c)「このタービンが水素に富むガスの再循環用の圧縮器を駆動させ、このガスが、水素圧力下に化学反応を行うために炭化水素に添加される」点が開示されていない。
したがって、本願請求項1と引用文献1に記載された発明は異なるものであるので、本願請求項1は新規性を有している。
また、本願請求項1は、(1)無駄のない段間加熱、(2)機械的な動力発生および(3)水素に富むガスの再循環という3つの機能的な技術的効果を組み合わせて含み、上記の(b)および(c)の特徴を有することによりエネルギーレベルで非常に性能が良いものになっている。すなわち、本願請求項1では、熱交換器における熱交換の役割が終了した熱流体TFの圧力を利用してタービンを駆動させ、さらに、このタービンの駆動により生じた機械的エネルギーが、水素圧力下の化学反応を行うための水素に富むガスの圧縮に利用されており、このように、使用済みの熱流体の有するエネルギーを、反応に供される前の水素に富むガスの圧縮に利用することによりエネルギーの利用が効率的でありコンビナートにおいて統合的に使用され得る。本願明細書に添付した図4に示されるように、本願の実際の適用は、非常に多くの構成を含み、エネルギー利用の効率化は非常に望ましくその効果は非常に大きいものであるので、本願請求項1のように、タービンを介して、エネルギーの伝達的利用を図ることは決して当業者が適宜設定し得るようなものではない。
したがって、本願請求項1は進歩性も有する。
拒絶査定
確かに、引用例1にはエチルベンゼンの熱源であるスチームに関して、(a)~(c)の点は記載されていないが、各種反応装置において排出されるガス流からタービンによりエネルギーを回収し、回収したエネルギーを再利用することは周知(必要ならば、特開平4-334703号公報と特開昭62-95385号公報の特許請求の範囲、特開2000-104078号公報の【0048】を参照されたい)であるから、引用例1記載の発明において、供給されるエチルベンゼンの流れに供給されるスチームの供給管にタービンを設けることは当業者が容易に想到できることに過ぎない。また、該スチームの圧力を0.7MPa以上とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎない。
よって、上記(a)~(c)の相違点に関しては当業者が容易に発明できる事項に過ぎず、本願発明は依然として引用例1に記載された発明に基づいて当業者 が容易に発明できるものと認められる。
新たな相違点を持ち出したが、登録を引き出せなかった件。相違点に至るきっかけになるような記載もない、ことを根拠とともに意見書にて強く主張する必要がある。主文献の読み込み不足を反省する。
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