弁理士近藤充紀のちまちま中間手続59
拒絶理由 進歩性
引用文献1~3には、可溶性塩基性化合物の存在下に二酸化硫黄と硫化水素とを含むガス混合物を溶媒中で接触に付すことにより、これら2つの化合物の溶媒を含む液体反応媒質中での硫化水素と二酸化硫黄との反応により元素状硫黄を製造する方法が記載されている。
また、二酸化硫黄や硫化水素を含むガス混合物を溶媒と接触させて処理する方法において、ガスと液との接触を並流で行うことは、引用文献4,5に記載されているように公知である。
してみると、引用文献1~3に記載の方法においても、ガス混合物と溶媒との接触を並流で行うことは、当業者が容易に為し得たことである。
そして、前記方法を実施するための装置として、本願の請求項7,8に記載された構成を有する装置も、当業者が容易に想到し得たものである。
意見書
引用文献1~3には、可溶性塩基性化合物の存在下に二酸化硫黄と硫化水素とを含むガス混合物を溶媒中で接触に付すことにより、これら2つの化合物の溶媒を含む液体反応媒質中での硫化水素と二酸化硫黄との反応により元素状硫黄を製造する方法が記載されている。
引用文献4または5には、二酸化硫黄や硫化水素を含むガス混合物を溶媒と接触させて処理する方法において、ガスと液との接触を並流で行ってよいことが記載されている。
しかしながら、引用文献1~3に記載の方法において、ガス混合物と溶媒との接触を並流で行うことは、当業者が容易になし得たことではない。
上記引用文献のいずれにも、上記接触を本願発明のように並流で行うことによって驚くような結果が得られることは記載されていない。また、本願発明のように並流で行うことによる利点も記載されていない。
本願発明では、実施例1と実施例2において、並流と向流とでその得られる効果を比較している。すなわち、並流(実施例1)によるとSO2およびH2Sの硫黄含有物の残留物含有量は671ppm、向流(実施例2)によると同含有量は810ppmという顕著に異なる結果が得られた。また、実施例1に示されるように並流(本願発明)によってガス成分と液体成分とを接触させることによって残留SO2およびH2Sが16%低下したという結果が得られ、この低下は大きくかつ驚くべきことである。その結果、本発明の方法による処理後のSO2およびH2Sの含有量の最終濃度は極めて低い。したがって、並流法を採ることによって非常に改善された結果を得ることができる。向流様式によって並流様式と同一の結果(16%低下)を得ようとすると、反応器-接触器内の容積は10%増加させなければならない。これは、装置プラントの規模および施工費が余分にかかることを意味する。
したがって、引用文献1~5には、これら単独でまたはそれらを組み合わせたとしても、並流で行う本願発明の方法に想到する動機付けは存在せず、本願発明は、引用文献1~5に対して進歩性を有している。
なお、本出願人は、拒絶理由通知に示された見解に対して、本願発明が容易になされたものでないことを証明するため、比較実験を指導した当該分野における専門家による宣言書(Declaration)を提出する。
拒絶査定
出願人は意見書において、ガス混合物と溶媒との接触を並流で行うことにより優れた効果が得られることは引用文献1~5のいずれにも記載されておらず、引用文献1~5には前記接触を並流で行う本願発明の方法に想到する動機付けは存在しないと主張している。
しかるに、ガス混合物を溶媒と接触させて処理する方法において、前記接触をどのような方式で行うかは、当業者が処理効率などを勘案して選択する設計事項であり、周知又は公知の接触方式から処理効率の高い方式を採用することは、当業者が普通に行う創作の範囲内のことである。
してみると、引用文献1~3に記載の方法において、ガス混合物と溶媒との接触に引用文献4,5に記載されている並流の接触方式を採用することは、当業者が容易に為し得たことである。
よって、本願の請求項1~8に係る発明は、引用文献1~5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとせざるを得ない。
効果のみで進歩性を主張して失敗したケース。今なら違うアプローチする。並流でも向流でもいいなら、引用文献中にそのような記載があるはず。。逆に、並流は採用し得ない、と解されるような記載が引例中になかっただろうか。
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