コナのシネマ・ホリデー

映画やイベントの感想などなどを・・・。

『ブラック・ブレッド』 少年が下した決断は、おそろしい結末なのか?

2012年06月30日 | 怖かった映画

英題:PA NEGRE(PG12)
2010年・スペイン、フランス(113分)
               
製作総指揮:イソナ・パソーラ
監督&脚本:アウグスティ・ビリャロンガ  
音楽:ホセ・マヌエル・パガン
出演:フランセスク・コロメール、マリナ・コマス、ノラ・ナバス、ロジェール・カサマジョール
   リュイサ・カステル、マルセ・アラーナガ、マリナ・ガテイル、アリザ・クラウェット
   ライア・マルール、アドゥアル・フェルナンデス、セルジ・ロペス ほか


鑑賞日:2012年6月27日 (渋谷)

衝撃的過ぎたアルモドバル監督作『私が、生きる肌』を押しのけ、
本国スペインで多大な評価を受けたダーク・ミステリーを鑑賞することに。
かなりの期待感と覚悟をもって劇場へ向かった。


 

(拡大できます。) 「映画をご覧になる前にご一読ください。」と、
   わざわざシアター入口に置いてあったチラシを一読。

  人物相関図も見た上で、鑑賞。



まず、冒頭のシーンで、充分心臓が痛い!!

森の中で車輪がスタックする馬車。
忍び寄る何者かの気配。

ロープで、ギュッ!
重い石で、グシュッ!!
ハンマーで、ズン!!
馬車ごと崖から落下

たまたま森にいた少年アンドレウが気づき、落下した馬車を見つける。
不自然に首が折れて死んでいる馬。
木の枝にかかった顔の判別がつかない死体。
血まみれで、
グフグフ・・・と喉を鳴らし死にかけていたのは、
幼馴染のクレット。

「クレット、クレット!」
慄きながらも呼びかけるアンドレウが耳にしたクレットの今際の言葉は、
「ピトルリウア」。


・・・と、
ダーク・ミステリーの導入としては、合格!

さて、そのあとは・・・

小鳥が大好きで、父親が大好きで、
勉強がよくできて、好奇心旺盛なアンドレウが、
父親が逮捕されたが所以に、
知らなくてもいい大人の世界の真相に翻弄される


ピトルリウアの噂

                          黒パンと白パン


    すれ違う大人たちの目線 

                 全裸で森の中を駆ける青年

淫行


              異性への憧憬と軽蔑


死んだ手

     鳥殺しの肖像
               暗い洞窟内の夢

・・・劇中にちりばめられた意味深なエレメント。


耳を塞いでいれば、目を閉じていれば、
たとえ貧しくとも、今まで通りの幸せな日々が続いていたかもしれない。
だが、第2次性徴の入り口に立つ11歳のアンドレウは、
すべての真実が知りたい!
とりわけ大人たちが隠していることこそ知りたいと、
耳をそばだて、目を凝らして秘密を覗き見る。

その結果、許容範囲を超える嘘や現実を知ることとなり、
利発ではあるが賢明ではなかった少年は、
少年のままでいられなくなる。

そして、内戦後のカタルーニャを覆う淀んだ空気の中で、
少年アンドレウは、自ら心を凍らせ、オトナの選択をする。


アンドレウの父が阿部寛に似ている度:★★★★★★★★★★★★
馬一頭は確実に死んでる度:★★★★★★★★★★★
スペインの歴史反映度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
こうして少年は、エデンの園を出て行く度:★★★★★★★★★★★★
スペインのD・リンチではなかったと思う度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

鑑賞後の総合評価:★★★☆


ぼく個人としては、
アンドレウの選択を「おそろしい」・・・とは感じず、
「悲しいが、自ら現実的な選択をした」と解釈したのだけれど、
読みが浅いだろうか?

考えてみれば、1940年代に11歳だったアンドレウ少年も、
2012年の今では80才過ぎの老人。
「その後、どんな人生を歩んだのだろうか?
 成人して結婚し、子供や孫のいる暮らしを手に入れただろうか?
 そして、自分の半生を語っただろうか?
 
あるいは・・・」と、想像してみるのも一興か?


余談1:
やはり、セルジオ・ロペスは憎まれ役こそハマる。
本作の町長役や『パンズ・ラビリンス』のビダル役など、

心底憎らしく思える。


余談2:
『ブラック・ブレッド』=『パンズ・ラビリンス』X『白いリボン』÷3
といった印象だった。
『私が、生きる肌』ほどの衝撃やアート性はなかったけれど、
かと言って、
『私が、~』をスペイン映画代表として米アカデミーに推すには、ちょっと・・・
という判断があったとしたら頷ける。

 

パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]
 
アミューズソフトエンタテインメント

 

デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション [DVD]
 
角川書店




白いリボン [DVD]
 
紀伊國屋書店





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。