ノー残業デイ

今日から、現場にも「ノー残業デイ」が導入された。

つまり、原則としては「残業をいっさいしてはダメな日」で、万が一残業するためには午後

イチくらいまでに本社にお伺いをたて、社長のお許しを得なければならない。

なぜ現場にも「ノー残業デイ」が導入されたかと言うと、「ムダな残業を減らして現場職

員の健康と家庭生活を守る」…というありがたい理由からである。

しかし、「何がムダなのか」を見分けることは、こういった世界に於いてはとても難しい

ことだ。

「サイフがなくなった。きっと盗まれたのだ。なぜ娘は私をこんなところに入れたのだ！」

と、泣き喚くご入居者への対応。

巧妙に隠されたオムツを部屋中くまなく捜索すること。

食堂のテレビの音の大きさを発端にしたご入居者どうしの怒鳴りあいの仲裁。

「ムダな残業をしないように」という意識があまりに強くなってくると、こういったことも

「もしかするとムダなのではないか？」と思うようになってくるかも知れない。

ついには「認知症の老人に時間と労力をさくということ自体がそもそもムダなのではない

か？」という本質的な問いを職員の胸に生じさせるかも知れない。

実際、世の中では「福祉に金を使うなんて無駄だ。産業振興にこそ国家の予算を投じよ！」

という声が昔から大きいのだから。

親会社が変わってから、いろいろなことが起こるようになった。

私はそれをこの目でしっかり見、この耳でしっかりと聞き、記憶し、記録していこう。





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