魚のシッポ

夕方、厨房に行ってお昼のあまったゴハンで作ったおにぎりを、電子レンジで温めていました。





すると、あるご入居者が、厨房と食堂を隔てる仕切り戸を開けて、強い抗議をしてきました。

「なんであたしにはいつもお魚のシッポばきありが来るの？」

そうとうな剣幕です。

「他の人には胴体が来るのに、いつもあたしだけはシッポばかり！もうここに入って五年も経つのに、そんな扱いをされたんじゃ、涙がでるわ！」

「高いお金を払って入ってるんだから、もう少し良いものを出して下さい！」

厨房の女性は、恐縮してしきりに頭を下げていました。

私は見つからないように身を潜め、ソッと事務所に帰りました。





ところがその後、同じご入居者が事務所を訪れ、まったく同じ訴えをされました…。

あとで厨房の女性に話を聞きました。

「皆さん、同じ魚を出しているんですよ。ただ、あまり大きい魚じゃないから、頭とシッポをとってしまうと、『シッポばかり』と感じるのでしょうね」

「ここの方たちは良いものばかり食べてきたから、納得できないのもしょうがないな…と思いますよ」





ふ～ん、そういうワケだったのか。

ま、給食というのは、口の奢った方々には、そもそも満足できないのかもしれません。

何でも美味しく感じる私は、果たして損なのか、トクをしているのか…。














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