デンマークの教育・社会に興味をもち留学していました。そこで学んだこと、感じたこと。そして今、日本で感じること。
From Denmark
国際バカロレア~世界が認める卓越した教育プログラム~
![]() | 国際バカロレア ―世界が認める卓越した教育プログラム 石村 清則 明石書店 2007/02 |
国際バカロレア
デンマークの教育のエッセンスを
体系化したもののように感じる。
デンマークの学校や社会から感じたこと
そこに脈々と受け継がれ、
流れているものを言語化したら
このようになるのではないか。
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【以下、本著より】
MYP(中等課程プログラム、11~16歳対象)
5つの基本領域
●Approaches to Learning:効果的な学習法を育む「学習の仕方」
●Community Service:社会奉仕
●Health and Social Education:健康と社会
●Enviroment:環境
●Homo Faber:人類の創造性を学ぶ・「創る人」
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学習の仕方・・・
答えの導き方を教えれば
確かに短期的な成績・偏差値は簡単に上がる。
しかし先生がいなくなると
何も学習できなくなってしまう。
一方、
学習の仕方をひとたび体得すれば
あとは、先生がいなくても自立的に学び続ける。
これは一生モノ。
前者が、すぐに陳腐化してしまう能力である
「知識・スキル」であることに対して
後者は、行動特性思考特性。
その学習の仕方がMYPでは最初に掲げられている。
現場の体験でも、小学生でも学び方を学べば
効果的に自立的に学習することができるようになっていく。
「算数や国語は教えない、学習の仕方を教える」ということを
きっちりと理解し、身につけていきつつあったこどもたちをみて
思考・行動特性(Attitude)の習得することのすごさを実体感した瞬間だった。
そして、
この体験がデンマークの教育を
理解する上で貴重な経験となった。
この体験があったからこそ、
デンマークの表面的なものでなく
その本質を感じることができたのではないかと思う。
ちなみにデンマーク教育の本質とは
そのメソッドでもシステムでもない、
学校、社会、家庭教育に一貫したウェイがあることだと思う。
そのウェイが、「学習の仕方」を浸透させている。
デンマーク教育ではそれほど明文化されたものはないが
(そのことによる一貫性の欠如が出ている気もする)
それを明文化すると国際バカロレアのようなものになると感じる。
少なくとも、
両者とも知識の習得などが掲げられるのではないことを
確認することは重要なことだと思う。
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【以下、本著より】
PYP(初等課程プログラム、3-12歳対象)
「何を学びたいか」「どうしたら一番よく学べるか」
「どうしたら何を学んだかわかるか」という3つの質問を中心に
カリキュラムを構成する。
以下は、PYPの10の目標
●Inquirers :知識と目的ある行動を探求する人
●Thinkers :創造的な考え方のできる人
●Communicators :2ヶ国語以上で情報が理解でき、意思を伝えられる人
●Risk-takers: :未知の概念や状況を恐れずに、挑戦する人
●Knowledgeable :世界に関連する重要なテーマについて博識のある人
●Principled :正直で公平な道義心を持つ人
●Caring :まわりの人の気持ちや求めていることに思いやりのある人
●Open-minded :広い視野を持ち、他の文化・価値観・伝統を尊重し理解できる人
●Well-balanced :精神と肉体のバランスがとれている人
●Reflective :自分が学んだことを理性的に熟考し、長所と短所が分析できる人
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これはこのままビジネスパーソンに
求められるものにしても十分通じる。
というより、
これを満たしている大人がどれだけいるのか?
これを初等課程から掲げる重要性を非常に感じる。
これらの基礎となるものは
成人してからでは遅い。
初等教育からはじめなければ手遅れになる。
繰り返すが、デンマーク教育では
これほど体系だったものは見たことがない。
しかし、方向性は間違いなく同じ。
世界の優れた教育プログラムは手法の違いはあるが
根本的には同じ方向性ではないかと思う。
モンテも日本に昔あった優れた教育も。
国際バカロレアという形で
普及しつつあるこの動きは非常に楽しみだ。
人類も捨てたもんじゃない。
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国際バカロレア
デンマークで改めて感じた
主体性と多様性の理解の重要性。
国際バカロレア(以下、IB)は
そのコンセプトが明確に掲げられ、
世界中で採用・実践されている教育プログラム。
このようなプログラムが普及していることに感動し、
喜ばしく思うとともに
日本の教育の現状との差をしみじみと感じる。
もちろん、
上記のような教育を日本でも実践しているところはある。
しかし、まだまだ少ない。
国際バカロレア機構(以下、IBO)が掲げる理念や基準は
私がデンマーク、あるいは一流のビジネスパーソンから
学んだエッセンスがすべて含まれ、
しかも、最小限で表現されていると思う。
今まで、これほど本質的で明瞭なコンセプトは見たことがない。
異なる背景を持っているあらゆる人でも
理解しうるまさに多様なグローバル時代に必要なものであると思う。
以下、「国際バカロレア~世界が認める卓越した教育プログラム」より。
--------------------------------------------------------------
【IBOが掲げる理念】(書籍より)
1)国際バカロレア機構は、異なる文化の理解と尊重を通じ、
より望ましい世界かつ平和な世界を作り出すことに
貢献しうる探求心、知性、そして寛容の精神ある若者を
育てることを目的とする。
2)この目的のために、国際バカロレア機構は、
学校、政府、国際機関と協力し専門的な
国際教育プログラムの開発と厳密な評価の開発を行う。
3)これらのプログラムは、異なる人々に対しての理解力を持ち、
主体的で共感をいただくことができ、
生涯にわたって学習しうるもになりうるよう
世界中の生徒に働きかけるものである。
--------------------------------------------------------------
1)であるように、多様性を享受するには
探求心、知性、寛容の精神の3つが必要なんだと思う。
私がIPCでつくづく感じたことは
寛容の精神だけでは何も解決しないということ。
上記の3つのうち一つでも欠けては、
何かに貢献することは難しいと思う。
このブログにも知性の部分として
問題解決スキルについては書いた。
http://blog.goo.ne.jp/knymst/e/49a7c878df5bbaea146f0e311596e71e
国際問題や政治問題、さらにはビジネス上での問題でも
多様性の問題を解決しようとするとき
とかく寛容の精神のみになり、感情論になりがちだと思うが
探求心と知性もなければ、解決するのは難しいとつくづく思う。
本当にこの3つが掲げられているのは素晴らしい。
--------------------------------------------------------------
【IBOが国際教育を定義する上での基準】(書籍より)
○世界の文化、言語の関係を考え、共存を目指す市民を育てる。
○生徒のアイデンティティと文化に対する感覚を育てる。
○生徒の普遍的な人間的価値に対する認識を深めさせる。
○学習の喜びと発見の精神を培う好奇心と探求心を育てる。
○自立あるいは協力して知識を学習、習得するための技術を身に付け、
生徒がこの技術と知識をあらゆる分野に適用できるようにさせる。
○地域社会の期待と要求に応えつつ国際的な内容を提供する。
○教授方法の多様性と柔軟性を目指す。
○適切な評価表と国際的な基準を提供する。
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主体性と多様性の理解の重要性。
国際バカロレア(以下、IB)は
そのコンセプトが明確に掲げられ、
世界中で採用・実践されている教育プログラム。
このようなプログラムが普及していることに感動し、
喜ばしく思うとともに
日本の教育の現状との差をしみじみと感じる。
もちろん、
上記のような教育を日本でも実践しているところはある。
しかし、まだまだ少ない。
国際バカロレア機構(以下、IBO)が掲げる理念や基準は
私がデンマーク、あるいは一流のビジネスパーソンから
学んだエッセンスがすべて含まれ、
しかも、最小限で表現されていると思う。
今まで、これほど本質的で明瞭なコンセプトは見たことがない。
異なる背景を持っているあらゆる人でも
理解しうるまさに多様なグローバル時代に必要なものであると思う。
以下、「国際バカロレア~世界が認める卓越した教育プログラム」より。
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【IBOが掲げる理念】(書籍より)
1)国際バカロレア機構は、異なる文化の理解と尊重を通じ、
より望ましい世界かつ平和な世界を作り出すことに
貢献しうる探求心、知性、そして寛容の精神ある若者を
育てることを目的とする。
2)この目的のために、国際バカロレア機構は、
学校、政府、国際機関と協力し専門的な
国際教育プログラムの開発と厳密な評価の開発を行う。
3)これらのプログラムは、異なる人々に対しての理解力を持ち、
主体的で共感をいただくことができ、
生涯にわたって学習しうるもになりうるよう
世界中の生徒に働きかけるものである。
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1)であるように、多様性を享受するには
探求心、知性、寛容の精神の3つが必要なんだと思う。
私がIPCでつくづく感じたことは
寛容の精神だけでは何も解決しないということ。
上記の3つのうち一つでも欠けては、
何かに貢献することは難しいと思う。
このブログにも知性の部分として
問題解決スキルについては書いた。
http://blog.goo.ne.jp/knymst/e/49a7c878df5bbaea146f0e311596e71e
国際問題や政治問題、さらにはビジネス上での問題でも
多様性の問題を解決しようとするとき
とかく寛容の精神のみになり、感情論になりがちだと思うが
探求心と知性もなければ、解決するのは難しいとつくづく思う。
本当にこの3つが掲げられているのは素晴らしい。
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【IBOが国際教育を定義する上での基準】(書籍より)
○世界の文化、言語の関係を考え、共存を目指す市民を育てる。
○生徒のアイデンティティと文化に対する感覚を育てる。
○生徒の普遍的な人間的価値に対する認識を深めさせる。
○学習の喜びと発見の精神を培う好奇心と探求心を育てる。
○自立あるいは協力して知識を学習、習得するための技術を身に付け、
生徒がこの技術と知識をあらゆる分野に適用できるようにさせる。
○地域社会の期待と要求に応えつつ国際的な内容を提供する。
○教授方法の多様性と柔軟性を目指す。
○適切な評価表と国際的な基準を提供する。
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![]() | 国際バカロレア ―世界が認める卓越した教育プログラム 石村 清則 明石書店 2007/02 |
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続 デンマークの子育て・人育ち~澤渡夏代ブラント
![]() | デンマークの子育て・人育ち―「人が資源」の福祉社会 澤渡 夏代ブラント 大月書店 2005/11 |
それにして
出生率も非常に高く (デンマーク1.78、EU平均1.5、日本は1.29)
そして、
幸福度世界NO1の国(ルクセンブルクの大学の調査結果)。
そしてその満足度は
「自分の人生を自分で決定できること」にあり
それは
自立した人間像と
個の尊重に始まるとのこと。
デンマークでのご自身の子育て、孫育て(?)のエピソードや事例からは
学ぶこと改めて気づくことも多い。
また、この本はただその体験談紹介でなく
その意義までしっかりと述べられている。
※例えば、日本では危険ということで子どもから遠ざけているナイフや危険場所に対する
デンマークでのアプローチは全く違う、
そのアプローチの方法と教育的意義など。
これが例えば、一人で服を着るということにつながり、家族の絆につながり
自立・主体性ということにつながる様子。
(モンテッソーリでいう正常化のプロセスと全く同じと思った。)
このように
体験談と論が両立している。
体験談だけでない
机上の論だけでない。
だから非常に説得力がある。
●バイリンガルを育てた工夫
●森の幼稚園
●デンマークの性教育
●男女参画社会
●デンマークの進路相談の話題
●家庭教育と社会との連携
●自立している高齢者
などの話題も非常に興味深い。
ところで
社会システムも数多く紹介されているが
この本を読むと社会システム(ハード面)を真似るだけでなく
そこで行われている子どもへのアプローチ(ソフト面)が
いかに重要かということをつくづく再認識できる。
多くの場合、社会システム、教育システムばかりに
目が行きがちだが、(簡単例で行くと1クラス何人とか)
クラスの人数うんぬんより
そこでどのような教育が実践されているかこそが重要なのであって、
クラスの人数を減らしたところでやってること一緒ならたいした変化はない。
何のためにクラスの人数を減らすのかというのが最も重要。
結局、システムとは何かの目的のための手段であって
手段ばかり真似ても、その中身が伴わないと意味がない。
そのデンマーク流の家庭でのアプローチの実践例、そしてその解説が
理解できるこの本は非常に価値があると思う。
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