「探究する力」 市川力

これからの社会で求められる学びとは何か?
それを実現するためのヒントになる実践が書かれている本
となっていることを期待してやまない。

既に教育や学習についてのすばらしい理論は多くあり、
実際の教育現場を考えると意外にも研究はかなり進んでいる。
「探究」という言葉もあらゆるところでその重要性が主張されている。

そしてその中で必要なことは
この日本という社会の中で、それらをどう実践するかということ。

さらに、現場の実践者としては
その「ベストプラクティス」を相互に学び、
高めあっていけるかどうか。
つまり、
ローカルな実践をインターローカルな実践に進展させ、
活動理論のエンゲストロームがいう
「拡張的学習」を実践していけるかが重要だ。


この著者の活動の本質的な要素を
『本』というカタチでどこまで伝達できるかが楽しみだが
一つの事例を題材にして、
そこから優れた実践者がそれぞれの現場で
実践に応用していくことが重要だと思う。

そして、学びに関する本質的な要素は
家庭教育、社会教育にも統合していくことで
学校・家庭・社会において、
一貫した「学びの環境」を構築することが必要だ。



知識創造型社会において、
自律型・問題解決型の人材が求められ、
ハイパフォーマンスのための
楽しみのマネジメント、内発的モチベーション、フロー理論なども
注目されている。
(これらは「探究」と渾然一体のモノばかりである。)

そして、その前段階として、
自律性・セルフマネジメント力をどう育成するか。
そして、
知識創造の場をつくり、創発のための対話をする
実践共同体をいかに形成するかが課題となっている。

また、
ピーター・センゲは「学習する組織『5つの能力』」の中で
「メンタルモデルの取組みの中心となるのは、
『内省』と『探求』という2種類のスキルである。」と
いっている。

ビジネスにおいても
知識量だけでは評価されないことがよくわかる。


知識からコンピテンシーへと基準がかわっていく中、求められるのは
・教師は単なる知識の伝達者ではなく、総合的に能力を育てる支援者になること
・本物の学力(コンピテンシー)は学習者の中にしっかりと根づくべきこと
・「教える教育」から「学びを支援する教育」へ
・教師の役割は創造的で批判的な学びを支援すること
・創造的で批判的に思考する技能 学習するための能力


とにかく、
既存の「知識習得型」学力観で読み進めるのは愚の骨頂。
知識創造型社会に求められる能力、
キーコンピテンシーをどう開発していくのかという視点で
本著を読み進めていきたいと思う。
提唱される探究型学習の実践、それがどう展開されていくか。
楽しみだ。



※キーコンピテンシーとは、
OECDによるDeSeCo Projectにおいて、これからの社会において大切な3つのキー・コンピテンシーが定義されている。
Desecoの出発点は旧来の学力観では重要な資質を見落としてしまうということ
Successful lifeとwell-functioning societyに貢献するコンピテンシーに焦点を当てた。人間が望ましい社会生活を送るのに必要な能力

3つのキーコンピテンシー
●Use tools interactively (e.g. language, technology) (相互作用的に道具を用いる)
●Interact in heterogeneous groups (異質な集団内で相互交流する)
●Act autonomously(自律的に行動する)

(参考:競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著
Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003)
探究する力
市川 力
知の探究社

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