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「子どもへの声かけ」のポイントは「部下への声かけ」と同じ

2016年12月15日 | 新聞や雑誌の記事
前回は子どもの自立力を育む「権限委譲」のコツをお話ししました。

 母子に指示するだけのマネージャー型お父さんではうまくいかない、よかれと思って子どもにあれこれ指図するお母さんも同じ失敗をしてしまう、それは「信頼」が欠けているから起きる問題であり、「権限移譲」を行うことで解決していけますよというお話でした。

 子どものことを大事に思うから、うまくいくようにと口を出し、手をかける。でもそれが、子どもの自律的な成長を阻む原因にもなってしまうという難しさ。感情もぶつかりやすい問題だからこそ、ビジネススキルを活用して手順を踏んだ冷静なアプローチをお勧めいたしました。

親ってなんだろう?

「子どもへの声かけ」のポイントは「部下への声かけ」と同じ
「生きていく力」をわが子に授けるには、親がどう関わるかが重要な役割を果たします(amana images)拡大写真
 ところで皆さん、「親」ってなんでしょう?

 唐突ですみません。でも、子どもとのかかわりにおいて生じる様々な悩みや迷いは、私たちが「親」であるからこそ起きるものです。その悩みをどう解決していくのか、どの方向に向かうと決めるのかは、どんな親でありたいのかで変わってくると思うのです。

 「親」ってなんでしょう?

 子を授かった人が自動的になるものでしょうか?

 生物学的にはそうかもしれませんが、それだけではないですよね。

 子との関係性の中に成り立つ、存在価値であり、役割というものもあるはずです。

 子がいてくれるから、親でいられるという言い方もできるでしょう。

 私が思うには、子を授かった日から、私たちは徐々に「親」に育っていくのではないでしょうか。子どもが育つのと足並みをそろえて、親も育つ。

 子が3才なら、親も3歳。

 子がピカピカの小学1年生なら、親もドキドキの「親」1年生。

 自ら体験したり、書籍から学んだり、人から教えを請うたりして、経験を積んでいく。

 子どもを保護する人であり、支援する人であり、監督する人であり、リーダーシップを取る人であり、子どもと楽しむ人であり、子どもに満たしてもらえる人。

 そういういろいろな側面を持って、親は育つのだと思います。

 一つ、親の役割としてはっきりしているのは、子どもを「一人前の大人」にすることだ、という点でしょう。

 「一人前の大人」というのは、自分の頭で考え、自分の心と感覚で感じ、自分の意志と責任で行動でき、仲間と助け合うことが出来る大人のことです。

 自分で生きていく力を持った大人と言ってもいいですね。


体験するだけでは学びは生まれない

 そうした、生きていく力をわが子に授けるには、親がどう関わるかが重要な役割を果たします。

◇自分の頭で考える機会を持たせる、考えられるんだという自信を持たせる
◇自分の心と感覚で感じる機会を持たせる、感じ取ることへの意欲をかきたてる
◇自分の意志と責任で行動する機会を持たせる、行動することへの自信を育む

 日常生活の中で、こういった機会を生み出し効果を引き出していきたい。

 物を与えても、行動を強制しても、こういった効果は生まれません。子ども自身が体験し、子ども自身の中に力が育まれるように、関わることが大切です。

 その際ポイントとなるのが、「声かけの手法」です。

 子どもに限らず、人の内面が成長していくには、体験を通して学ぶことが必要です。

 しかし、ただ「体験」するだけでは学びは生まれません。学ぶとはつまり、体験を「経験」に変えていくということですが、それには、自分が体験したことが、どのような意味や価値を持っているのかを理解する必要があるからです。

 だれしも、何らかの出来事をきっかけに「はっと気づいた」という体験をしたことがあると思うのですが、あの「はっと気づく」というのは、自分が出会った事がらが自分にとってどんな意味があるのかを発見した瞬間の感覚です。その事がらがどんな価値を持っているのかを、見つけ出せたということです。

心と頭の引き出しが開くとき

 なぜ意味や価値を見つけ出すことが出来たかと言えば、それまでの自分の人生経験を通じて、さまざまな知識やモノの見方を自分の体の中に蓄えてきたからです。意味や価値を言い表すだけの言葉を蓄えてきたからです。

 これまでの経験を収めた引き出しが、心と頭の中に次々と追加されて、いつ開かれてもいいようにスタンバイしているイメージです。

 この引き出しは、ぴったりの体験に出会った時に、ぱっと開かれ、その中に収められた言葉が飛び出して今の体験に意味を与えてくれます。

 ですから、引き出しが多ければ多いほど、さまざまな体験に価値を見つけ出すことができ、経験を深め成長していくことができます。昔から読書が人を育てると言われてきたのは、本を読むことで引き出しが増えていくからですね。

 逆に、この引き出しが少なければ、ぴったりくる体験に出会えることも少なくなりますから、体験はしているけれど引き出しはなかなか開かないということになってしまいます。学ぶチャンスがなかなかやってきません。

 子どもにいろいろな体験をさせてあげているはずなのに、何かを感じ取ってくれている気がしない、記憶に残っていないということが起きるのは、それらの体験にぴったりの引き出しを、お子さんがまだ持っていなかったからです。

 ではどうすればいいのか?

 ここで「声かけ」の登場です。

 子どもの中に引き出しがないのなら、親が引き出しの代わりを務めればいいのです。

 具体的には、体験といっしょに、その価値を言葉にして渡してあげるのです。

声かけで経験値を増やす

 ご飯をもぐもぐ噛んでいる時に

 「だんだん甘くなってきたでしょ?不思議だね」と、糖化の作用に興味を持たせる。

 冬の晴れた日に外に出て、体がぶるっと震えた時に

 「空が真っ青に晴れている日は冷えるのかな」と、放射冷却を実感させる。

 海岸で見渡す限りの海を前に

 「この開放感、気持ちいいね」と、今の気持ちを言葉にしてあげる。

 学校での出来事を話してくれている時に

 「〇〇君も仲間に入りたかったのかもしれないね」と、なぜか急に怒り出して他の子を戸惑わせたお友達の、心の内を想像してみる。

 といった具合です。子どもが感じるままに任せていたら出会えなかった、意味や価値を声かけしてあげ、経験値を増やしてあげるのです。

 念のための注意ですが、これはあくまでも一例にすぎません。同じようなシーンでは皆さんにも同じような声かけをして欲しいということではありません。ご飯をもぐもぐしている時に、「リスになった気分だね」と声かけする方がうちの子の関心を引き出しやすい、と感じる親御さんだっているはずです。

 自分に合ったやり方で大丈夫です。それこそ、自分の中にない引き出しは開けられませんからね。

声かけする時に押さえておきたい3つのポイント

 ただ、なんでもいいというわけではなく、声かけで効果をあげるにはやはり押さえておきたいポイントはあります。ビジネスでのことを思い起こしていただきたいのですが、部下にアドバイスしたり、アルバイトさんに仕事を教えたりする時に、皆さんはどんなことに気を付けていますか?

 自分が教えたいように、自分のタイミングで、いきなり話しかけて話し終えたらその場を立ち去る、というやり方をするでしょうか。

 おそらく、そんなやり方を選ぶ人はあまりいないと思います。

 相手の人に育って欲しければ、まずは、その人のことを「観察」しますよね?

 いま担当している仕事について、その人がどこまで理解していて、何が分かっていないのかということを。また、その人がどんな性格の人で、何を大事にしていて、どういった点にプライドを持っているのかといったことを、知りたいという気持ちで、その人のことをよく見るのではないかと思います。

 そして次にどうしますか? 見るだけでなく、その人の言葉に「耳を傾ける」のではありませんか?

 どんなことを思っていて、いま何が気になっているのかくみ取ろうとする。また、そうして、私はあなたに関心を持っていますよというメッセージを伝えようとする。程度の差はあるにしても、こうして「耳を傾ける」人は多いと思います。

 そして、その時の表情はどうでしょう? 相手の人に育って欲しいと考えているとき、どんな表情でアドバイスしますか? したいですか?

 「笑顔」を選ぶのではないでしょうか。

 仕事を教える時は、相手ができていない時が普通でしょうから、もどかしく思ったり、イライラしてしまったりして、その気持ちが顔に出てしまうのは仕方がありません。それでも、できれば笑顔で接したいと心掛けている方が多数派だと思います。


信頼感が生まれる時

 これら「観察する」「耳を傾ける」「笑顔」の3点は、声かけする上で特に心がけたいポイントです。なぜ大切なのかと言えば、「信頼関係づくり」と深く関わっているからです。

 人は、自分のことをよく見て、言葉に耳を傾けてくれる人には、自分を尊重してくれているという安心感を覚えます。

 関心を持ってくれる人のことを好ましく思います。

 笑顔を見せて安心させてくれる人には、心を開けます。

 そして、信頼感を抱くようになります。

 信頼感を抱けると、相手から渡される言葉を素直に受け取ることができ、気づくこと学ぶことが楽になっていきます。

 一昔前でしたら、「上司の命令は絶対」とばかり上意下達の文化に支配された組織の方が多かったかもしれません。しかし今は、「コーチング」や「ファシリテーション」という言葉が市民権を得て、その技術と知識を学び身につけた人も増えています。日々のビジネスシーンにおいて信頼関係づくりを心掛けることも、当たり前になってきていると思います。

 その感覚をお子さんとの関係にも生かしてほしいのです。

 そうすれば、あなたの声かけによって、お子さんは自分で考え、自分で感じ取り、自分で責任をもって物事に取り組む力を養っていけるようになります。

声かけの効果を高める3つのテクニック

 さて、子どもが何らかの体験をしたときに声をかけていくのですが、さらに効果を高めるテクニックがあります。詳しくは拙著『小川式声かけメソッド』(宝島社刊)を参照いただきたいのですが、ここでは3つの技をご紹介しましょう。

* * *

テクニック1
「場面やイメージを思い起こさせるような問いかけをする」
 たとえばお子さんが、今日学校であったことを話してくれている時に、「どんな顔で言ったの?」「周りのお友達はどんな様子だったの?」と、話がふくらむ問いかけをします。具体的なできごと、やりとりの内容、友達の表情、教室の雰囲気、自分の気持ちの動き……。そのときに起こっていたことの細部を思い起こせるように、具体的な声かけをします。目に映ること、耳に聞こえること、肌に伝わってくる感覚、それぞれをバランスよく問いかけられると理想的です。
 このとき、親自身も場面を思い浮かべながら子どもの話を聞くようにすると、自然と問いかけも具体的なものになっていきます。具体的な声かけをされることで、子どもは自分の体験の細部を振り返り追体験するため、発見のチャンスが膨らみます。

テクニック2
子どもの話した内容を、親側が受け止めた意味合いで言い直してから返してあげる
 校庭で友達と遊んでいたら、その様子を見ていた子が急に怒り出して教室に帰っていってしまった。みんな何が起きたのかよく分からずに、「なんだあいつ変なの」と困ってしまった。という話を子どもがしてくれた時に、「もしかしたらその子は、みんなと一緒にあそびたかったのに、上手く言い出せなくて、もどかしい気持ちと寂しい気持ちで心の中がいっぱいになったのかもしれないね」と、大人の経験から考えられることを返してあげる。
 また、野菜を食べた触感を「シャクッて感じ」と子どもが表現した時、「みずみずしかったのね」と言葉を言いかえて返してあげる、といったことです。子どもにとっては自分が体験したことに、大人の言葉が返ってくることで、気づかなかった見方、知らなかった言葉と自分の感覚とが結びつきますから、新たな経験を手に入れることとなります。

テクニック3
ほめてあげる
 どんな小さなことでも、子どもの行動や発言を認めること、ほめること。これも声かけの重要なテクニックです。「よかったね」「すごいじゃないか」「そのとおり!」「さすが!」「えらいね」といった言葉を、どんどん入れて会話しましょう。自分の存在が肯定されていることを実感できるため、子どもはうれしくて、もっともっと話しはじめます。自分が出会っている事がらに関心を寄せるようになります。
 また、子どもを直接ほめる言葉でなくても、「ありがとう」「お父さん、嬉しいな」「楽しいね」といった言葉も、「お父さんが喜んでいる」=「自分に好感を持ってくれている」という気持ちを強くします。自尊感情が育つことで新しい体験への積極性が生まれ、自分の感じ方や考え方に自信を持って、表現してみようという意欲につながります。

これだけは避けたいNGフレーズ

 逆に、これだけはやらないで!という声かけのNGフレーズもあります。「子どもをしっかりと育てなければ」と意気込んでいる人ほど、わが子に投げかけがちな言葉たちです。順に見ていきましょう。

* * *

×答えを押し付ける
「それはいいから、こっちをやりなさい」「答えは〇〇〇でしょう」
×感覚・リズムを押し付ける
「早く答えて」「まだ思いつかないの?」「もっとはっきり答えて」
×切り捨てる
「そんなのどっちでもいいだろう」「さあ?知らないな」
×ただ否定する
「それじゃダメだな」「そんなんじゃ分からないよ」
×けなす・ばかにする・責める
「どうしてこんなことも分からないかな」
×話題がコロコロ変わる
「〇〇は終わった?あ、それよりも××はどうなった?」

* * *

 こうしたフレーズだけを取り出すと、「こういう声かけはしたくないな」と感じる方が大半です。自分の頭で考え、自分の心と感覚で感じ、自分の意志と責任で行動でき、仲間と助け合うことが出来る「一人前の大人」に育っていく助けには、なりそうにない言葉です。

 ところが、そう感じている人でも、日常生活の流れの中ではびっくりするぐらい頻繁に子どもに対して用いてしまうのが、これらのフレーズなのです。なぜそうなるかといえば、「結果を求めた」声かけになっているからです。親が意図した行動を取らせよう、親が期待する結果を出させようとして、声をかけてしまうからです。結果に目を向けてしまうと、「やる/やらない」「できた/できない」「知っている/知らない」と、50/50の確率の中に陥ってしまいます。そして「~ない」に対しては、上記NGフレーズを使うことになってしまうので、2回に1回はNG声かけをしてしまうのです。

子どもを育てる「声かけ7か条」

 ですから声かけをするときは、結果を求めて行うのではなく、子どもを信頼して、何に気づくかは本人が選ぶものだというスタンスで行うようにしてください。このスタンスを保つことが出来れば、親の声かけによって得た経験を、子どもは自分自身のものとして手に入れ、自分で考える力、自分で感じる力、自分で行動する力を伸ばせるようになります。

 最後に、前掲拙著「小川式声かけメソッド」より、「声かけ7か条」を引用して今回のお話を終えたいと思います。

* * *

◎「笑顔」
「声をかけるとき」に笑顔
「子どもからなんらかの反応が返ってきたとき」に笑顔
◎待つ
親の側の予定や都合に子どもを合わせようとするとうまくいきません。
子どもからの返答が出てこないときには、「どうかな? ちょっと難しい?」「ゆっくり考えていいよ」と穏やかに声をかけながら待ってあげるのがよいでしょう。
◎楽しむ
「こうしてやろう」という意図に沿って子どもを動かそうとするのではなく、子どもの反応を自分が楽しめるような「声かけ」をしてほしいと思います。
◎信頼する
本人の中から出てくる考え、感じ取る力、判断を尊重して、信頼してあげること。これが大事です。子どもは皆、一人ひとりがすでに一つの人格として確立されています。彼ないし彼女の中には、本人自身の考えであり、感じかたというものが必ずあるのです。
◎観察する
子どもの様子をよく観察することで、適切な声かけがおこなえるようになります。態度、表情、目の動き、言葉と言葉の間合い、しぐさ、体の姿勢など、あらゆるところをよく見て、そのときどきで必要な声かけを臨機応変にしていただきたいと思います。
◎6秒ルール
子どもに対して言いたいことが噴き出してきたときには、感情のままに言ってしまうのではなく、心の中で「1,2,3,4,5,6」と数えてから口にするようにしてください。冷静で平常心でかかわってあげるための方法です。
◎ほめる
「すごいね」「なるほどね」「さすが!」「そういう言いかた、知ってたんだ」「そうそう、上手に答えられたね」「がんばったね」というような、子どもの反応を認めて肯定する声かけ。これを、できるだけたくさんしてあげるように心がけてください。また、「ありがとう」というフレーズも、ほめ言葉の一つですね。

* * *

 次回は、「スポイルさせない褒め方、キレさせない叱り方」をお話ししたいと思います。

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