黄色い拍子

言うよりも詠うことにて喜びをひそか硯の奥に隠して

勾玉

2006-10-30 21:48:53 | 短歌(副題付)
潮風に泳ぐ空気に突き刺さる白亜に燃える高き灯台

日本海これより先は何もなくただただ青いうねりが続く

スローモーションの夕日が沈む遮るものは何一つもなく

スローモーションの夕日が沈んだ何処かで旭日となるため

シズル鳴らし生命の一部鉄板で湯気立ててカムヒアと言う

新しい日光浮かべ宍道湖は新たな御霊産んで育む

マガタマになるよう思いサンドペーパーで撫でるけど歪となり

歪なれど我のマガタマはこぼれる念を成就させるかも

美食家モナークの遺産は未だ城下に利益を与える

大山に再び見えて旅の終わりが霜のように胸凍らす





帰り道帰りたくない道程を別の旅にて歩く気がする


ニ礼四拍一礼

2006-10-29 20:16:18 | 短歌(副題付)
国造りの神が住まう土地に集う神につられ集う旅人

快適に速度を上げて高速を走る車は神有月に

笑う我らに併せて笑う気配に気付きさらに笑うは我ら

国造りの仕舞いにたどり着き島根の旅はここから始まる

目尻の端から端まで宍道湖が寝そべる数多の命抱いて

進めどもなお進めども看板が大社路指すあちらこちらへ

大社の鳥居をくぐり神域に踏み出す足は汚れが多く

拒まざる国造る神おわします清廉なるに踏み込もうとも

鈴なりの絵馬に書かれる嘆願はその人の無し言わずに告げる

怨念も嘆願何も届かないその人暮らす場所知らねば

恋心ニ礼四拍一礼に託してみるも顔は浮かばず

八百万の神に八百万の人が願掛けす我も交じり入る

青い空丹塗りではない社殿と色とりどりの人と私と

向こう岸ヘッドライトが煌いて松江の夜はしゃなり暮れる

島根牛にナイフを入れるとそれだけで私は溶けてしまった

親友と湯船に浸かり仰ぎ見る掛け替え無いはステータスなり

湯上りに二の腕に鼻押し付けて嗅ぐここは家ではないのだね


2006-10-29 19:55:05 | 短歌(副題付)
コスモス畑で逃げ惑った日々は遙か彼方で今もそのまま

麒麟草生い茂り風金色に抜けども生える力漂う

薄汚れ遡上などは有り得ない川面に蜻蛉秋は等しく

顔白き菊人形姿消す捜索願い誰彼出さず

空にはいつか見た雲が漂う私は遠くに来たものだわ

街路樹木の葉一枚道落とすわしゃり踏まれ秋を奏でる

鱗雲送電線に絡まってちぎれ乱れて跡形もなく

2006/10/25

2006-10-25 23:48:17 | 短歌
サイドミラーを新幹線が走るあとは秋晴れだけが広がる

マグリットが見たフランスパンみたいな雲空に浮かんで流れる

科学的反応で色づく木の葉に心を染め涙ぐむ人

透明度増す空気の中都市間を猛スピードで駆ける列車

ビルの窓小人の如く人影が吐息漏らして生きて蠢く

気絶より深く昏睡する心すばるの光それでも届く

2006/10/16

2006-10-16 12:55:14 | 短歌
まずは月姿形を変えてみる軽やかに消ゆ朧月夜に

満天の星星殺し輝ける白む満月氷の笑い

それ以外望むものなし関白の目にするかたちハーフに過ぎず

南天を下り山際際だたせ残り香すらも無くて消え去る

月見餅供える間無く欠けていく一人感ずもディレイしてる

ジャンプし手を延ばせども足掻けども指の隙間に絡まる明かり

明日では遅すぎれども十五夜昇る衛星同じものでも

一点を見つめるうちに吾以外闇夜に沈み月夜に飛べる

声もなく蛍光灯が騒げども何も気にせず月は輝く

いつの日か月を住処にする日来て月見できずに悲哀感ずか

月明かり受けて銀色光らせる秋の草花例えば薄

すすき片手に涼しい河原を歩けば心は緩んで温もる

たで茂る茂みに響く虫の声好きを言えずに揺らぎを作る

村雀落ち穂つついて腹満たし電線の上続きを歌う

セイダカアワダチソウ茂る空き地に名もない風吹くコバルトのした

赤光山中の木々まず漆静寂で雉鳴くに似たり

いつもより早く色付く桜の葉秋の深さに目尻が湿る

枯れるまで律儀に続く朝顔の花開く音秋に木霊す

金木犀の花開き道染める季節になりて玄関を発つ

きりぎりす葉を食み歯形残し発つ冬越えられず冥土の土に

知ろうとも知ること出来ず長い夜眠り続けば夢で知るかも

ルーベンス神の御光描けども物質に神宿るべく無く