黄色い拍子

言うよりも詠うことにて喜びをひそか硯の奥に隠して

2004/09 05

2004-09-05 01:44:12 | 短歌
道ふさぐ黒い毛皮の猫ひとつ置物みたく微動だにせず

強大我が身浸らす大嵐変わり始めた木の葉をちらす

君がためなんて言い訳考えて憂い溢れる秋雨を行く

静止した闇夜に吠える台風に連れられ走る光の獣

足元の巨大な池昨日まで此処にはなくて何処にいたのか

口どけを確かめるように舐めたる今年始めのチョコレートを

溶けていくそのはかなさがいとおしく思わず涙何か思いて

山の腹知らず色付き紅葉色君と並んで秋に染まろう

2004/09 04

2004-09-04 01:43:48 | 短歌
芥散るこの部屋に降る陽光の色の変わりに気がつく秋

なる柿の満ちていく色愛染まりあなたのことに重ねて見入る

栗の実の保守的なるドレスありおおこの痛み命懸けかな

こぼれゆく川の流れに魚があり鮭にあらずも鮭を重ねる

偽りの夏日ばかりが転がりてまだ足を取るああ忌々し

世の果ての空気はらんだ珊瑚草私は遠くルーツ忍んだ

逆らうも風に流れし鱗雲形を変える心やからだ

足元に毛布用意す長い夜涼風ふくも蹴られ包まり

知らぬ間に昼が短く成り行くを何もしなくてただ惚けたる

真夜中にそっと抜け出し空のぞむ古人のオリオンすでに

2004/09 03

2004-09-03 01:43:24 | 短歌
ウツセミがころんと休む境内の暗やみわずか秋を忍ばす

白檀暗やみのなか囁いて天に満月あること知らす

今だ宵暑くけだるし蒸したりてけど撫でる風ほのかに涼し

新作の秋味甘味ポッキーをきみと二人で笑みて味わう

馬肥える程に高まりあの空はさらに自由に飛行機浮かす

秋刀魚達買い物袋からのぞくくってやるから安心してな

ちぐはぐな緑色なる梨の実のひめたる水気恋に似ている

こんなにも曇りがちの日やや頭痛でも実りある季節の犠牲

松茸の大陸からの輸入も軸を捨てたる人がいるらし

夜にふる秋雨聞いて沈む闇冷ややかな風正気を得る

2004/09 02

2004-09-02 01:42:51 | 短歌
モリハナエジャポニズムの光差す高きに上り仙道を行く

空調行き届いたる電車は差す光にて残暑らしく

風行きてアクリル様の空があり私は蒼いペンを思った

夕暮れに自転車にて走りゆく九月半ばに汗は流れる

夕闇のさらに濃くなり鱗雲溶けてなくなりただ満月あり

半袖にこれで仕舞いとアイロンを押し当てるけど額には汗

おみなえし早くも開き密やかに秋は進むと誰か教える

闇に融け空と海原一重なりただ石鹸の香り漂い

遠方のネオンがまるでサファイヤあなたがいない夜もまた良し

夏行きて市民プールは誰もなく主人なくした騒ぎあるだけ

2004/09 01

2004-09-01 01:41:43 | 短歌
風涼し九月はじめの夜明けごろ夏の形見に朝顔開く

秋雨に湿るこの部屋私在り指先に住む寂しさを知る

金色にたなびく稲の艶やかさ目を細くしてうつとりとする

揺れているこの暗闇の満月の下に広がる世界で今宵

忘れずに生きることは幸せと呼べるだろうか鱗雲に問う

今すぐに世間が終わり逝こうともアケビは熟れて知らずに割れる

秋薄なびかす風に囁くは己のことと往く夏のこと

トランスで騒がしたって街の影秋の方へと惹かれて伸びる

心にて風船のように膨らむは淡い幻影枯れた鬼灯

白粉を濃く塗りこむディオール幻想の華を花の都に