黄色い拍子

言うよりも詠うことにて喜びをひそか硯の奥に隠して

2005/10/31

2005-10-31 22:06:35 | 短歌
カシミヤ製マフラーの優しい手触り要らぬほどの小春日和

飛行機一機雲一つ無い空を静寂にて飛び去って行く

遠足の隊列かつての私もこうして誰かの過去を揺さぶり

北浜にて

2005-10-28 18:05:04 | 短歌(副題付)
階段を駆け上がると三越はすでに消滅していた或る日

香料商社玄関のステンドグラスにハイカラが暮らす

背広の波の中紅いカーディガンで日常からエスケープ

リストランテ浅いアフタヌーンの深い親密美味しい食事

凌辱的なプレイの果て美食に至る鶉の人生

冷えた洋梨のコンポートが喉にイバラ絡むこと忘れさせる

エレクトリカルに処理される本日の商いの静的な様

夕日の下紅に至らない色で燃える薔薇の心地よい香り

手で触れれば壊れてしまう壊してしまう誰かの心のように

澱む土佐堀の底で本当の春が来るのを耐える魚一尾