黄色い拍子

言うよりも詠うことにて喜びをひそか硯の奥に隠して

2004/02 05

2004-02-05 00:44:30 | 短歌
春告げる魚思いて生姜と醤油と粗目を用意する

連なる梅並木を背後に感じ十月桜ただひそめる

眼下に広がる須磨の町に春は霞用いて幻誘う

四の年ただ一度だけ訪れる春と冬の垣根を漂う

散り行くは静かに降れる雪のようなれど淡い斑点ぽつりと

空に舞う空気の味を知るためにこれほどよい季節はないだろ

冬のことはもう忘れて生きていく再び冬来を待つために

2004/02 04

2004-02-04 00:44:02 | 短歌
デイパックから伸びる白い大根それに潜むかのように蕨

紙袋から伸びる白葱の青葉それに隠れるはフキノトウ

春はあけぼのと言うけれど今なお足先に感じる冷たさよ

美しいものをほとんど含みたる春はもうすぐ生まれ現る

死んでいく冬の何某糧にして咲き乱れるは生命の産毛

ケータイで絵に収めたり赤と白彼女たちも愛でたのだろう

月見山空を縫い取るハイウェイ潜り魅入るは梅の花々

月読みの闇夜切り裂く春嵐迎えいでたるアフロディーテ

どれほどの美しさを秘める宝石も咲き出す季節に劣る

赤石の海に照る輝波際に跳ねるウサギも霞に消える

2004/02 03

2004-02-03 00:43:36 | 短歌
手紙に嗜める春の桃の日を思って曇り空のしたにて

雪積もる光景収めし写真柔らかになる日の下で見る

木蓮の蕾ふくらみ月光の下で静かに春を待ちなん

トラディショナルな日本の真髄新鮮な美を春に望んで

月夜に静かに浮かびたる桜を思いて今宵は床に就かん

濃いコーヒーの水面に浮かぶ顔湯気でほのかにゆがんで笑う

鶯が芽吹き始めた木に集い歌わんとするも未熟なり

少しだけ日が長くなり如月の終いを思いいざサヨウナラ

いまだ実を残し南天老いらくのすぼめる姿春に似合わず

ガラス越し日が燦燦と降り注ぐまるで俗世を俯瞰するよう

2004/02 02

2004-02-02 00:43:07 | 短歌
ゴディバのチョコレェートリキュール愛の形の姿そのもの

真実を霞めたる春のような日それでも地球は回り行く

垂れ込めた曇りの上の寒気団寒々しくも清清しきよ

黙り込み齧り食みたる巻き寿司の願うのは来年もここにて

風邪ひきて誰もいないは寂しくてでも体は生きようとしてる

インターネットにて伝う星の話に駆け巡る夜空への夢

子宮に愛を忘れしわが身にも銀の包みに思い馳せたり

朝焼けにりんごの紅さすこの部屋の広さを思う白い吐息で

米を研ぐ手先に住まう冷たさにわずか芽ばえる春を感ずる

陽光下そぞろ芽生える若草の香り吸い込みけふを終わろう

2004/02 01

2004-02-01 00:39:34 | 短歌
季節から逃れて生きて生き抜いてそれでも豆を放る人々

暦すらデジタル式で周りには沢山のITそれでも祝う

襟巻きの端に生まれし毛玉にも季節のかをり馳せてみやうか

ファインダーに生まれでた薄曇吾の隠されぬ温もりを知る

満月とともに語らう車窓の流れもいつか笑い話に

あらぬほど暖かな温室にうたた寝する頭の並々

真夜中に見つめるために輝ける星星の宴冬の盛りに

尊くも重々しきは木星のかがやき溢る冷ややかな空

吐く息の白さに雲の姿見て雪降らさんと願ってみます

まだ薄氷も張らぬ池の水面少しだけ春のかたちを見る