SIDEWALK TALK

霍去病のこと

Kakukyohei人間の才能のなかで、
名将の才ほど得がたいものはないように思える。
画家や詩人、学問の才能は必ずしも希少ではない。
けれど軍事的天才というのは、
それを持たない民族のほうがむしろ多い。
僕は単細胞だから、
男の子として軍事的才能を持った人物に憧憬を抱く。


中国の場合、歴史が古くから記録さているし、
広大な土地とその大人口から該当者が多いが、
僕は霍去病(かくきょへい)をその筆頭に挙げたい。


日本史でいえば卑弥呼よりもはるかな以前に中国に存在したこの若い天才は、
わずか24、5歳で病没した。
霍去病という風変わりな名前は、その短すぎる人生も相まって、
彼は病身だったのではないかと僕に想像させる。


去年の5月、仕事で訪中した際、霍去病の墳墓を訪れた。
漢の武帝から愛と尊敬を受けつつ若く死んだ霍去病は、
武帝の意志によって武帝の陵墓「茂陵」のそばに葬られた。


西安(長安)の郊外を西へでて、ほどなく渭水の橋を渡ったころから、
天気が悪くなった。
見渡すかぎりの麦畑の上に雲が降りたように雨気が満ちて、
急に寒くなった。
前日、洛陽では暑かった。
気候は日本とさほど変わらないはずなのに、
雨が降ると様子が変わるのかもしれない。


中国に行って驚きを感じつつもあきれてしまうのは、
2千年前の人物の墓が、2千年前に「史記」に書かれたとおりの姿で、
無造作に野原に遺っていることだ。
霍去病が匈奴を破った祁連山に似せたと思われる人造の山があって、
その頂上に灰色の磚でつくられた祠があった。


霍去病の墓で、いま目を楽しませてくれるものは、
巨石に素朴に刻まれた石人石獣だ。
熊と格闘しているという、お伽話のような造形もある。
また、人があおむけに倒れているような形の石に、
歯をむき出して泣いている人間の顔がユーモラスに彫られている。


「この、倒れて泣いている人は、誰ですか?」
と同行してくれた取引先の陸さんに尋ねると、
奴隷主だと教えてくれた。
霍去病は、こんにちの解釈では奴隷主を倒した。
負けた奴隷主は泣かざるをえない。
しかし実際は匈奴の王かなにかにちがいなく、
顔をみてみると、アーリア人系のように思えた。


匈奴が何人種だったかについては、諸説ある。
紅毛碧眼のアーリア人という説もあるし、トルコ人だという説もある。
僕は、論証なしに、モンゴル人だったと思っている。


いずれにしても騎射に長けた騎馬民族だったことにはちがいがなく、
この強力な騎兵隊を霍去病が騎馬戦で破ったということに、
今さらながら彼の将才にあらためて感心させられた。


このときは、商用で訪れていたために時間がなかった。
ずっと憧れていた霍去病の墓を訪れたことには満足したけど、
有名な武帝の茂陵には行けず終いだった。
来月あたり中国出張があるかもしれないから、
チャンスがあれば茂陵にもいってみようと思う。

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コメント一覧

mf >> ノラ猫さん
http://www.kiribako.net/
ノラ猫さん、こんにちは!
いつも、コメントありがとうございます。

お褒めいただいて汗顔の至りですが、
もし僕に知識というものがあるとしたら、そうとう偏った知識ですよ。
非常識人間です。

三国志は、まぁ小説ですが、それなりに史実に即してるはずです。
曹操の故地を訪れたこともあります。
中国は仕事上つき合わざるをえない国ですが、
今の中華人民共和国には手放しで賛同する気にはなれません。
僕が好きなのは、リスペクトしているのは、あくまでも歴史的中国です。

漢詩にかぎらず古典は解さないのでよくわかりませんが、
こんな拙いブログでも、少しでも楽しんでいただけているのなら、
性懲りもなくつづけていこうと思います。
ノラ猫
わぉ。凄いお話でびっくりしました。色々なことを...
わぉ。凄いお話でびっくりしました。色々なことをよくご存知なんですもの。

私は中国と言えば、三国志(でもこれは、お話でしょう?!)と、大地の子(こちらもお話だけど、風景はロケだから本物の景色?)ぐらいしか知りません。

すべて、本当の中国を見て来てらして、驚きました。

ステレオタイプやタオイズムを辞書で引いて、へええと思っていたけれど、今度はどうしましょう。

あまり好きになれない国の一つでもあるけれど、なんとなく引かれます。

やっぱり歴史の悠かさ、大地の雄大さ、それらの桁違いの豊かさでしょうか?

中国に大河ドラマがあったら、絶対面白いでしょうね。

だけどなぜか、文章からはなんとも言えない静けさを感じました。漢詩の世界の風。幽玄な。

オッチョコチョイなので、間違ってなければいいけれど。笑
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