きらせん

仙台のきらめき










東北大学公共政策大学院准教授
佐分利 応貴

 「デュナミス」

2007-08-30 22:31:50 | Weblog

  仙台の「学生を社会に還元する」会社、デュナミスの渡辺社長を訪問。
  ETIC(起業家育成NPO)代表の宮城君からの紹介である。

  議論のテーマは「学生が育つシステムをどう組むか」。
  一人一人がもてる能力を出し切ること。
  それで周りが幸せになり、地域が幸せになる。
  ではどうやったらそうした教育を実現できるのか。

  「進路指導」の問題。社会経験のない先生が学生の人生の道筋を決める。
  渡辺社長によれば、教師は98%がもともと教師になりたかった人らしい。
  自分の進路に悩まなかった(?)人材が、進路に悩める学生にアドバイスできるのか? 
  
  渡辺氏によれば、結局学ぶこととは「情報を交換すること」なのだそうだ。
  だからどうやって情報を入手できるようになるか、どうやって発信できるようになるかが大事なのだと。全くその通りだ。小学校の「調べもの学習」では、調べて終わり。調べて、問題を見つけて、アクション・プランを作って、それを実際に実施して初めて経験になる。人の役に立つ喜びを実感できる。その果実を食べて初めて、「公」に対する価値に目覚めるのである。今の教育にその部分があるか?
 (ボランティアなどを社会活動でやらせているが、本当に喜んでいる人を見せているか? お婆ちゃんのゴミ捨てを手伝ってあげる番組がNHKで放送されていたが、あれは珍しい事例。だからテレビ番組になる。)

  各地で講演している渡辺氏によれば、秋田の国際教養大学はすごいらしい。
  授業は全部英語。留学がほぼ義務。
  学生の目がきらきらしているらしい。「きらあき」ですな。
  10数人の事務局の人の中に、MBAホルダーが何人も。
  「俺たちは教育ベンチャーなんだ」と。
  宮城大学も、そういう点では最初はすごかったらしい。
  堤義明とか、蒼々たるメンバーの教授陣で。
  
  要は本物の持つ強み。
  本物をどう見せるか。どうやって学生が本物に触れる機会を作るか。
  その試みとして、9月29日(土)に社会人100人を教師としたイベントをやるらしい。
  楽しみである。


  デュナミスとはギリシャ語でダイナマイトのことらしい。
  ぜひ仙台で爆発してもらいたい。


 「東北 vs ブラジル」

2007-08-29 22:36:21 | Weblog

  知人からチケットをもらい、仙台カップ(U-18:ブラジル代表、フランス代表、日本代表、東北代表の総当たり戦)のブラジルvs東北戦を見に行く。
  
  

  結果は3-2で東北代表がブラジル代表に勝利。大金星である。

  開始早々にブラジルのDF(実際はMF)のラファエルが、レッドカード一発退場で11人対10人になったからとはいえ、東北代表の健闘はすばらしかった。特に2ゴールの佐々木はもちろんだが、GKの松浦は落ち着いたプレーを見せ、DFもラインを上げた見事な守りだった。

  それにしても本試合の山本主審(松山東、東京学芸大卒:元FW)はいただけない。せっかくの国際親善試合で、荒れている試合でもないのにイエローカード8枚、レッドカード1枚。ゲームの流れをことごとく止め、途中からブラジル選手は「何でこっちの絶好のチャンスを相手のミスの笛で止めるんだ」とブチ切れていた。審判のレベルが問われる国際試合だが、あまりに稚拙なジャッジに腹を立てたブラジルに「もう来年から来るもんか」と言われたらどうすんだろ? 

  でも…
 「U-18東北代表 3-2 U-18ブラジル代表  [ユアスタ/4,649人]
  0-1 ルイス・グスタボ(前11分)  1-1 ロドリゲス・ウィリアム(前14分)
  1-2 ディエゴ・モナルト(前38分) 2-2 佐々木 絢也(後3分)
  3-2 佐々木 絢也(後16分)」
  って結果だけ見たら、 どうみてもブラジルが勝ったように見えてしまうな。

  ※ロドリゲスは留学生で東北代表メンバー。





 「内閣改造」

2007-08-27 23:47:41 | Weblog

 第一順位 塩崎恭久内閣官房長官
 第二順位 麻生太郎外務大臣
 第三順位 柳澤伯夫厚生労働大臣
 第四順位 久間章生防衛庁長官
 第五順位 尾身幸次財務大臣 (18年9月26日初閣議)

 から

 第一順位 与謝野馨内閣官房長官
 第二順位 高村正彦防衛大臣
 第三順位 鳩山邦夫法務大臣
 第四順位 町村信孝外務大臣
 第五順位 伊吹文明文部科学大臣 (19年8月27日初閣議)

 へ。

 内閣法第9条による内閣総理大臣の臨時代理の順位である。
 要するに閣内の序列ですわな。官房長官を除いて。
 (官房長官は慣例で第2位。官邸機能強化以降さらに重要なポストになった。)
 防衛大臣が第2順位になる(大御所を配置する)あたり、テロ特措法で米国の機嫌を損ねたくない意向がありあり。町村大臣は外務大臣のポスト大好きだし、各派閥に気をつかいまくりの内閣名簿である。
 的場官房副長官も動かなかった。これも気をつかいまくりのシンボル。

 小泉内閣の特徴は、総理が人事権を掌握した(派閥の意向を無視した)ことが大きい。だから閣議を総理がコントロールできた。一時期閣議の時に安倍総理が入室しても雑談してたり席を立たなかったり(総理が入室するときは全閣僚が起立する)したことが総理軽視としてワイドショーなどで取りざたされたが、「総理の人気」→「派閥を無視した人事を断行」→「閣議を掌握」の循環が、「総理の不人気」→「派閥に配慮した人事」→「閣議でも重量級の閣僚が幅をきかす」、となるおそれがある。

 安倍総理は善意の人である。だが、その姿はマリア・テレジアの息子、マリー・アントワネットの兄であるオーストリア皇帝ヨーゼフ2世と重なる。彼の墓碑銘は「善意だが、何事も果たさざる人ここに眠る」。
 いや、ちゃんと法案を通していますな。

 


 「白桃ピーチパフェ」

2007-08-26 22:21:46 | Weblog
  見事な作品である。

  中国産の白桃を使い、個別急速冷凍技術で鮮度を維持した(溶けてぐちゃぐちゃしない)ピーチパフェ。山形の桃でないのが残念(山形産だとこの値段=295円では無理)だが、ミニストップの企画力をまざまざと見せつける一品である。すごいぞ、ミニストップ。(※イオングループ)

  コンビニの企画商品はさまざまだが、その浸透力はすばらしいものがある。
  有名店のカップ麺しかり。コンビニで商品化されればものすごい広告料を払ったに等しいPR効果がある。だが、そこまで行くのは簡単でない。地域振興、地域の名産品をPRするのは、通常は

 ①物産展や東京のアンテナショップ。

 そこから出世すると、

 ②デパートでの取り扱い
 ③スーパーでの取り扱い

 となる。スーパーはロット(数量)が多く、鮮度が求められるので、中小企業にとって参入障壁は高い。設備投資をしてラインを増やして増産体制をつくっても、売れなければあっさり切られてしまう。D-0(ディイゼロ:製造日で入荷)が求められるので深夜0時過ぎに製造したり。これが雪印の食中毒事件を生んだりした。

 九州のドレッシング・メーカー「ピエトロ」は、手作りのこだわりで25年、今でも人の手作業でタマネギを切ってチェックし、全国市場に展開した。一個でも悪いタマネギがあるとドレッシング全体の味が変わってしまうからだ。
 新潟の「柿の種」で有名な亀田製菓は創業50周年、売上高は600億円を超える。
 いずれも地方初で成功した企業である。

 では、東北では? 全国区のスーパーで扱われている商品はあるだろうか?

 … そういえば「白い恋人」は「白い変人」と昔からからかわれていたが、冗談じゃなくなってきたなぁ。 

 「東北大学100周年記念祭」

2007-08-25 23:16:37 | Weblog


  今年は東北大学創設100周年である。
  100周年を記念して各種イベントが行われているが、本日と26日は片平キャンパスで100周年記念祭が開催された。100周年記念については、前日24日の河北新報に特集号が織り込まれ、法学部からはわれらが久保野先生が写真入りで登場した。
 (本来なら公共政策大学院の先生が入ってほしいところではあるが、久保野先生なら文句は言えませぬ。)

  今日は、毎年留学生寮で行われている国際祭りも、この祭りに合わせて前倒しで行われ、各国の料理や踊り等も披露された。市民も参加する祭りなので、模擬店もたくさん出店。東北大学生協も一等地をおさえ、からあげや焼きそば等の販売にがんばっていた。Sさん、皆さん、休日にお疲れ様でした。もう1日、がんばってください。

  


  今日の目玉は稲垣潤一のコンサートらしい。
  無料とあって、大学本部前の特設ステージの前には大勢の市民の方や大学関係者が集まった。ステージの撮影が禁止されていたので、遠景のみ。歌もちらっと聴いたが、100周年の記念のコンサートにしては渋い歌だった。稲垣潤一は仙台出身らしい。

  
  
  その後、留学生のダンスパーティへ行き、何人か知人に会う。
  
  
  その後の飲み会で、法学部の某院生と「法学部の偉い先生」について議論に。
  経済学の教授であれば、新しい経済理論を発明したり、そしてそれが現実経済を的確に説明できるモデルであったりするなら、その教授は偉いとされ、うまくいけばノーベル賞に輝く。では法学の場合はどうなのか。どうもよくわからないので、率直に聞いてみる。

  「優秀な先生は、昔だったら教授が引っ張って25歳ぐらいでもう助教授とか。そういうことじゃないですかね。」 
  「M先生みたいにね。そこでいう優秀ってのは教授は何で判断するんだろう。学校の試験の成績?」
  「法学の世界は、ある教授の考えを受け継ぐみたいなところがあるから、教授に認められるかどうか、気に入られるかどうかってことですかね。」
  「でも単に好き嫌いで決まるわけはないから、何だろう。記憶力とか論理力?」
  「司法試験に通ってるのに、大学の研究者になる人もいますよね。」 
  「U先生みたいにね。(U先生は司法試験、外交官試験、国家Ⅰ種の3冠王らしいし。) でも試験勉強ができるのが優秀な先生ってことなわけ?」
  「う~ん。」

  … まだまだお互い勉強不足なことを確認。
 
  それにしても100周年でガシガシお金を使うのもいいけど、
  後生への投資(建物を新しくするとか)はないのかな。京大は100周年を機に建物をむちゃくちゃきれいにしたらしいけど。研究第一だから器は貧弱でもいいってことなのかなぁ。


  
  


  


 「時効(1)」

2007-08-24 22:34:02 | Weblog

  毎年8月24日になると、大学2年の夏を思い出す。
  当時バイクの免許を取るために教習所に毎日通っていたが、それは想いを寄せていた阪大Sさんの8月24日の誕生日に、バイクで花を届けようとしたからだった。

  教習コースに入らず、毎日朝イチに教習所で自分でバイクを借りて練習し、そのまま試験を受けて、落ちて、午後のバイトにいく、ということを繰り返して、8月22日にはスラロームも一本橋もほぼ完璧にこなせるように仕上がった。先輩からは「不合格の印がシートの表いっぱいにならないと合格しないから」と言われていたので、そういうものかと印を稼ぐ。
  だが、不合格の印がシートの裏に到達しても、22日の試験は不合格。おかしいと思いつつ、まだ2日あると思い、23日にも試験にチャレンジし、完璧にコースをまわったはずなのに、また不合格。どうして落ちたのか納得がいかなかったが、「これは8月24日付けの免許証をもらえるということだ。それも悪くない。」と勝手に思いこみ、24日に万全の体制で試験に臨んだ。


 … 結果はまたも不合格。
  さすがにキレて、ヘルメットを床に叩きつけ「どうして不合格なんだ」と試験官に詰め寄ったところ、「ブレーキ制動の前の直線のスピードが出てないから」だとのこと。しまった。丁寧に運転するあまり直線でスピードが十分上がっていなかったのだ。

  こうして、結局Sさんの誕生日にバイクの免許はとれなかった。
  もうバイクはバイク屋に買って置いてあるのに。

(つづく)

 「丸いひしゃく」

2007-08-23 19:14:05 | Weblog


  法学部の甲先生との食事中、「学生時代に“法学の極意は、四角い箱の中の水を丸いひしゃくですくうようなものだ”と聞いた。当時はその意味がよくわからなかったが、今ではそのとおりだと思う。」とのコメントが。

  確かにそのとおり。役所の世界では、法律は手段であって目的ではない。法律の遵守は当然だが、あまりに杓子定規に適用しようとすると、手段が目的化して何のための法律だかわからなくなる。たとえば、道路交通法は、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」が目的(第1条)のはずなのに、スピード違反を厳格に取り締まろうとすると逆に渋滞が起き「交通の安全と円滑」が損なわれるなど。
 ※本来は交通の安全のはずの取り締まりが、単なる警察の反則金稼ぎ(年間800~900億円)となってしまっていることも大きな問題。

  乙先生も、「そうそう、評価の仕事なんかまさにそうですね。本来はちゃんと仕事していれば評価なんか必要ないし、評価しても100%わかるわけじゃない。何も記録を残さないのも問題だけど、評価で何でも決めようというのもいかがなものかと。役所で相談する法学の先生も、現場を知っている人だといいけど、そうでないと理屈を振り回して…」

  現実は3次元なのに、それを2次元の平面に投影してその形で議論しようとする。当然限界があるのだ。その限界を知りつつ、現場で「汗をかく」、問題解決のために奔走するのが役人である。学者は結局手を汚さない(役所用語で「ケツを拭かない」)から―

  学者は役人を無能だと馬鹿にし、役人は学者を無責任だと軽蔑する。
  これでは真に必要な問題解決の薬は開発できない。
  学者と役人とが同じ釜の飯を食っている(はず)の公共政策大学院でさえ、研究者教員と実務家教員の交流は少ない。だがここから変わらないと、学官間の協働はおよそ不可能だろう。

  夕焼けが美しい。
  むらさきだちたる雲のほそたなびきたる(夏だけど)。
  

  
  


   


    


    
  
  


 「記録」

2007-08-22 22:13:37 | Weblog

  録画している朝のニュースやワイドショーをざっとチェックしていたら、50kgダイエットに成功した大学の先生(元祖「オタク」とTVで言われていた)が登場していて、その秘訣はメモだという。なるほど。すばらしい着想だ。
  ※「いつまでもデブと思うなよ」(新潮新書)に詳しく書いてあるらしい。

  記録は非常に重要である。悩んでいることも紙に書き出すと整理できる。「混沌の言語化」は問題解決の基本的手法である。
  同時に、過去の記録は未来を自己規定する発射台になる。
  無駄遣いを無くしたかったら、出費を毎日家計簿に記録すればいい(見直すたびに反省する)。だから、痩せたければ、摂取した食事を(別にカロリー計算しなくていいから)ただメモしていけばいいのだろう。本の書評を見たら(サクラかも知れないが)なかなか好評のようだ。

  環境省から出向してこられたK先生がご挨拶にこられた。前任があまりに立派だったので大変だとのこと。自分も後任にそう言われたいものだ。

  仙台の夜は風もだいぶ涼しくなってきた。今夜はクーラーなしでOK。

 

  

 「タコツボ」

2007-08-21 23:47:28 | Weblog


    工学研究科の月例ゼミ。夏休みもなく次なる宿題が。
  学会投稿論文も書かないと。

  昔、受験生時代に聞いた中島みゆきのオールナイト・日本で、
  投稿ハガキにこんなような内容のがあった(一浪と十浪以外はうろ覚え)。

 「 一浪の人が読む本  石坂洋次郎 『若い人』
  二浪の人     石川達三 『青春の蹉跌』       
  三浪の人     石川達三 『自分の穴の中で』
  四浪の人     ヘッセ 『車輪の下』
  五浪の人     トルストイ 『罪と罰』
  六浪の人     ルソー 『懺悔録』
  七浪の人     カント 『純粋理性批判』  
  八浪の人     マルクス 『共産党宣言』
  九浪の人     芥川龍之介 『地獄変』
  十浪の人     芥川龍之介 『ある阿呆の一生』 」

  大学の先生は、まさに『自分の穴の中で』毎日生活をしているわけで。

  講座制で徒弟制度があるところならともかく(それはそれで大変だが)、ウチの大学の文系は一人一部屋の小さな巣箱に収まっている。マンション暮らしだと箱から箱へ。空から見ていたらきっと「よくもまぁ毎日きちんと同じ場所に収まっていくよなぁ。誰も命令しないのに。」と思うことだろう。これで窓に鉄格子がついていたらほとんど監獄。でも内側から見たら「自分の城」ってことですな。

  自分は人付き合いに関心がなく、横のつながりがほとんどないので、外部の人に紹介されて経済学部の某先生と飲んだ。でもって意気投合。やっぱりせっかくの総合大学なんだから、穴から出ないと勿体ないね。(でも普通はきっかけがない。)

  だが、「他人」→「顔見知り」→「同志」の間にはそれぞれ深い谷がある。
  ではどうやって越せばいいか? キーワードは「きっかけ」と「共通の目的」である。
       


 「みやぎ発展税」

2007-08-20 22:55:26 | Weblog


  宮城県は独自課税「みやぎ発展税」で毎年30億円の税収を確保するつもりらしい。
  簡単に言えばこれまでの法人税に5%分を上乗せするというもの。ただし5%の法人税に5%加えるのではなく、今の税率が5%だったら5.25%になる。この点マスコミもちゃんと報道していないから誤解が生じている。
  http://www.pref.miyagi.jp/zeimu/shinzei/sankousiryou/qanda.htm#q1

  このQ&Aはそれなりにがんばって書いてはいるが、やはりしょせん役人の作文。5年でこの臨時税が終わるわけはないし、30億円の増収は、県の年間財政規模1兆円から見たら0.3%。頑張っているところから取るんじゃなくて、行財政改革を進めるとか、滞納徴収ちゃんとするとか、まさにこのQ&Aで書かれていることをちゃんとやるべきでしょ。「国の補助金削減のせい」と国のせいにしておきながら、所得税の税源移譲の話は書かないし。何より長期的な財政見通し、県全体の財産のB/Sはどうなっているのか。公聴会をやるそうだからぜひ聞きたいものだ。

 ※平成19年9月11日(火) 13時30分から県庁講堂(2階)にて

  あ、ワークショップの授業の日だ。残念。