賢太郎の物書き修行

IT系と政治関連の事件を中心にコラム風に書いています。趣味は舞台、だけど最近は殆ど観てないな~。

財部誠一氏 講演

2007-11-19 11:07:38 | ビジネス
2007年10月25日(木)にBSPフォーラムにおける財部誠一氏の講演記録

標題:『ITと日本経済』

財部誠一氏 略歴
1956年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。
野村證券(株)、出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。テレビ朝日系の情報番組『サンデープロジェクト』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』、大阪・朝日放送『ムーブ!』等、TVやラジオでも活躍中。また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。
主要著書
「負けない生き方」(2007年、東京書籍)
「勝者の思考」(2007年、PHP研究所)
「中村邦夫は松下電器をいかにして変えたか」(2006年、PHP研究所)
「間違いだらけの就職活動」(2005年、PHP研究所)

講演内容:

1)『社長はメディアを疑え』

 財部氏より聴衆に質問。
 「景気回復実感があるか?」
 7割程度が「ない」と回答。
 地方に行くと景気回復実感があると答える人は1割程度で、ひどい場合には0ということもある。

 では、本当はどうなのか?
 財部氏の考えは「景気は確実に回復している。」「いざなみ景気以来の好景気だ。」というもの。
 メディアは『景気は回復していない』と報道する。「たかが経済成長率2%。」「経済格差がある。」というのが根拠。
 しかし、日本のGDPは現在500兆円で成長率が2%だと、10兆円増加していることになる。
 いざなみ景気の頃はGDPは100兆円程度で10%の成長だったので、同じく10兆円くらいの経済成長。
 経済成長の絶対値でみると確実に日本は経済成長している。
 19990年(バブル絶頂期)のGDPは400兆円。これが失われた10年を超えて現在は500兆円。
 日本はバブル崩壊後の不景気をものともせず、成長を遂げてきた。
 ちなみに、500兆円というGDPは英・独・仏を合計したのと同じ。
 格差についても、日本は世界でみても稀に見る格差の小さな国。
 税収をみても、1990年の60兆円が一時17兆円に落ち込み、現在は50兆円に回復している。
 ここ数年、財務省が発表している税収見込みを実績が2・3兆円上回っている。

 つまり、メディアは「印象/イメージ」を報道しているのであり、ビジネスマンは「事実/データ」で捉えなおさないといけない。

2)経済成長は続くのか?

 少子高齢化は人口構造の変化を意味する。
 人口の絶対数が減少するのだから、本来は成長するわけがない。
 だから、今後日本の国内経済はマイナス成長するのが当然で、とんとんなら上出来、1%成長で驚きという時代になる。
 つまり、今後のビジネスの前提は『国内経済は成長し続けることはない』というもの。

 成功を収めている企業はこの変化に対応しているから成功している。
 トヨタは日本の国内販売台数がここ10年間170万台で推移している。
 しかし、トヨタはこの10年間で売上が2倍、利益が5倍になっている。
 それはトヨタが売上の7割の世界で販売しているから。
 というのも、世界の経済成長率は日本を超えて4%になっている。
 その世界を相手に販売しているから売上が伸びる。
 また、現地生産・現地販売をすることで、それまで日本から販売地まで輸送していたコストがそのまま利益に上乗せされた。
 これが、トヨタが売上を伸ばし、それ以上に利益を伸ばした要因。

 同じように、東芝や三菱電機も選択と集中をすることで過去最高益を得ている。
 東芝は総合電器メーカーから「半導体」と「原子力発電」だけに絞って企業構造を大変革した。
 非コア事業の売却や他社から半導体事業を買収するなど。
 それに比べ、日立は世界の変化に合わせて自らを変革することが出来ないため、業績が回復していない。

 グローバルに生産や流通を行うために、トヨタも東芝も世界的なロジスティックスを構築し、それをITによって支えている。
 ITはロジスティックスを全体最適によって再設計するために、工場や調達先が新しく出来るたびにリードタイムが最も短くなるように再計算する。
 ITは税計算にも活躍する。世界中の複雑な税体系を計算し、最も納税額が少なくなるような工場や調達先、倉庫の配置を計算する。
 そして、これらの企業はITを構築し、そして改善し続けることが出来る。

 つまり、ビジネスモデルを変えることができる会社はイノベーションを起こし続けることができるということ。
 そして、ビジネスモデルは世界の4%の経済成長の恩恵を吸収できるように変えられなければいけない。

3)ITとマネジメントは同じ

 福岡県は実態は日本経済から独立した経済圏。
 福岡県の麻生知事は自動車工場を誘致するために、テキサスインストゥルメント出身のビジネスマンを雇って自動車用のLSIの開発や生産が出来る企業の誘致や工業団地を整備。自動車部品メーカーも誘致して自動車メーカーの工場を誘致した。
 福岡県知事が「福岡での自動車の生産台数の目標は100万台」と言っている。
 これは従来の自治体の首長の言葉ではない。企業経営者の言葉だ。
 更に麻生知事は「福岡が世界経済にコミットしないと成長しない」と発言している。

 ビジネスモデルを変えることは大企業にしか出来ないことではない。

 事例紹介
 福岡県久留米市にある「松本商店」という鋼材卸の会社。
 当初は社員19名くらいの規模。
 1990年代に不況の波に襲われた。
 社長は「お客様本位」を愚直に貫く人で、この点が他の社長と違う。
 赤福やミートホープの例でも分かるように、日本企業の品質に対する姿勢は海外に比べて低い。
 しかし、この会社の社長は社員に対し「お客様に奉仕することを考えよ。利益のことは社長の責任だから自分が考える」と公言していた。
 不況下で鋼材卸の業界も「値引き合戦」と「淘汰による倒産」が起きていた。
 この社長はお客様のところに自分たちがお客様のために何が出来るかを聞きに言った。
 そして、お客様の工場を見学したときに自分たちの商品が工場内に山と在庫されているのを見てショックをうけた。
 「お客様のためと思って商売をしていたが、お客様に多大の在庫負担を強いる結果になっていた」
 そこで、社員に「お客様の在庫を減らすアイデアを考えろ」と言ってアイデアを出させた。
 そこで、「要るとき要るだけ」というコンセプトでお客様に一次加工した鋼材をJUST IN TIMEで納品することを約束した。

 その為には、一次加工をする工場に外注しなければいけなくなる。
 また、お客様の生産計画を直ちに知ることが出来るようになる必要がある。
 なので、お客様の工場と下請けの加工所、自社で情報を共有するITを3年がかりで構築してJITを実現した。
 今では西日本全体にお客様がいるので、お客様に近い場所に協力工場を作りビジネスが拡大し、社員も80名。年商も20億に成長した。

 業績が悪いときに「景気が悪いから」という外部要因のせいだけにするのではなく、本当の課題を自ら分析するという態度が必要で、その解決にはITが大いに活躍する。

 だから、IT部門といえども会社にイノベーションを起こすことが出来る。
 IT部門から新たなビジネスモデルを提案するというくらいの気概が必要。

米倉 誠一郎 氏 の講演(その2)

2007-11-19 11:05:52 | ビジネス
『中堅・中小企業のIT活用による経営イノベーション』  
一橋大学 イノベーション研究センター 教授  
米倉 誠一郎 氏

基調講演として一橋大学の米倉教授が講演。

[5]イノベーション いろいろ・・・
「キャノンがベルトコンベアを廃止して『セル生産方式』をやって在庫スペースが東京ドーム17個分削減できた」
なんで???
ベルトコンベアの生産量はラインの中の最も生産性の悪い 箇所(人・設備=ボトルネック)に従う。
だけど、セル生産方式で複数工程を一人でやると生産量は増えることになる。
例えば、、、、
「A工程=>B工程=>製品」をA工程をaさん。B工程をbさんがやるとする。
A工程:aさんは10個/時間の生産能力、B工程:bさんは20個/時間の生産能力とすれば、このラインは10個/時間の生産能力しかない。
全工程を一人でやると(全工程をやるので、一工程の場合の半分の生産能力)、
aさん:5個/時間の生産量、bさん:10個/時間の生産量となるので、この二人で生産量は15個/時間となる。
生産能力が上がればリードタイムも短くなるので在庫を削減できる。 (在庫はリードタイムに比例して多くなるから)
このイノベーションでは製品は変わらず、生産設備も大きな変更はない。しかし、生産性も上がり在庫が減っている。

「サプライチェーンを本当に利用するということとは・・・」
お客:「東京で明後日までに17インチのフラットディスプレイを50台欲しい」
営業:「お任せ下さい」
・・・SCMシステムを操作すると東京にはないが、台湾には在庫があることが一瞬で分かった
営業:「台湾から取り寄せます。直送便で明後日には納品できますよ」
お客:「いやぁ~、ありがとう」
という話は本当にSCMを利用しているの?

別の話・・・。
お客:「東京で明後日までに17インチのフラットディスプレイを50台欲しい」
営業:「お任せ下さい」
・・・SCMシステムを操作すると東京にはないが、台湾には在庫があることが一瞬で分かった。
東京には20インチのディスプレイしかない。
営業:「20インチのディスプレイでは如何でしょう?」
お客:「まぁ、本当は20インチの方がいいんだけど、実はちょっと予算が厳しくて、今回は17インチ分の予算しかないんだ。だから17インチでお願いするよ。」
営業:「そうですか・・・」
・・・SCMシステムを操作して、台湾から直行便で東京まで納品するトータル金額と20インチの東京の在庫を納品するトータル金額を比較すると、20インチが「ちょっとだけ」高い。
営業:「でしたら、20インチを17インチのお値段で納品させていただきますが、いかがですか?」
お客:「えっ!本当なの?大丈夫なの?」
営業:「大丈夫でございます。」
お客:「いや~、ありがとう、ありがとう。感謝するよ。」
こうすれば、余計な輸送量をFEDEXに払う必要もないし、お客も喜んでくれる。多分、次の発注も貰えるだろう。
これが本当に「SCMシステムを使いこなす!」ということ。
情報システムから取り出せるデータを使って何を考えるか?ということが大事。

[6]会社の大きさは何で決まる?
会社はなんで大きくなるの?
コースの定理「資産効果や取引費用がない場合、交渉や契約の結果は所有権や財産権の帰属に影響されることなく、所有の分配問題から離れて、単に効率性だけで決定されるという命題。」
* 所有権が確定されていれば政府の介入がなくても市場の外部性の問題は解決される、とする定理。
* シカゴ大学のコース(Ronald Coase)によって提起された。
この定理は,普通,所得分配の問題をひとまずおくと,外部不経済の発生者が被害者に補償金を支払っても,反対に被害者が外部不経済の発生者にお金を払って外部不経済をなくすような処置をしてもらってもバレート効率性を回復できるというように表現されるがこの定理が成り立つのは,「取引費用」が存在しない世界のみであることに注意しなければならない。 簡単にいうと「コストの安いところから買おう」とするインセンティブが働くということ。 そこで、組織のある機能の「内部管理コスト」と「市場調達コスト」を比べたとき、 内部管理コストが大きいと社外から調達することになる。 例えば、営業の人件費、福利厚生費、事務所費用etc.が社外の代理店に 支払うコストより大きければ、代理店を使って販売をした方が良いので 会社には営業が必要なくなり、組織は小さくなる・・・・という話。 ただし、注意しなければいけないのは「コアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)」は 同じものを市場で調達することは出来ないので、留保される。
つまり、商品特性が複雑で営業の説明やコミュニケーションによって 販売されるものは、同じ能力の営業を販売代理店に求めることが 難しいので、営業を内部で育成・組織する必要があり、 その分組織は大きくなる・・・・という話。
何が「コアコンピタンス」かは企業によって違うが、例えば百貨店などは 「販売員の提供するサービス」がコアコンピタンスなのだから、販売員を 軽々に人材派遣などで代替するべきではないということになる。 販売員と「派遣販売員」を同じ能力と捉えてはいけないということになる。
アウトソースなどの流れは「コースの定理」によって裏付けられるが、 自身のリソースをアウトソースするばあいは注意が必要。
付加価値を生まない=コアコンピタンスとならないものが市場から調達出来ないか?ということは真剣に検討するべきだし、自身のコアコンピタンスで出来ることで顧客の社内でやっていることはアウトソースをして取引できないかを提案するべき。

[7]再び、イノベーションの話
シュンペーター
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC
が1911年の著書「経済発展の理論」でイノベーションを定義した。
(百年経っても未だに重要さが変わらない理論って凄い)
1. 新しい財貨の生産 =>新製品開発による革新
2. 新しい生産方法の導入 =>例えば、セル生産方式
3. 新しい販売先の開拓 =>マーケットを創造する革新
4. 新しい仕入先の獲得 =>調達先を開拓する
5. 新しい組織の実現(独占の形成やその打破) =>例えば、フランチャイズ方式とか
★この具体的な事例はアップルコンピュータに見られる。

[8]驚嘆する能力
Robert Suttonの著書
Weird Ideas That Work: 11 1/2 Practices for Promoting, Managing, and Sustaining Innovation
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「Vu Ja De」(ヴジャデ)の能力が大事。
これはデジャヴ(既視感)の様な「見たことがある」や「なんとなく分かる」の逆で見慣れたものでも「これは何!」とか「どうしてそうなってるの?」などと探求する能力のこと。
この「驚嘆する能力」が必要で、それがあればどんな場所でもイノベーションを起こせる。
だ・か・ら・・・

「見慣れたものを、もう一度問い直してイノベーションに取り組もう」

米倉 誠一郎 氏 の講演(その1)

2007-11-19 10:41:19 | ビジネス
9月20日の講演録

セミナー名称      中堅中小企業 競争力強化実践セミナー 第8弾
テーマ         経営者必修!運用管理・導入の容易なITソリューションがあなたの企業をもっと強くする

『中堅・中小企業のIT活用による経営イノベーション』
 一橋大学 イノベーション研究センター 教授
 米倉 誠一郎 氏

[1]IT活用とは 「IT」とは
    ①技術ではなく企業戦略
    ②魔法の杖ではない
    ③人の役に立つものでないといけない
ITを情報システム部に任せるとかITが分かる人に任せるというのは間違いで、ITは企業戦略なので経営的視点で考えないといけない。
経営視点で見れば、部門横断的に(日産のCFTの様に)関わっていかないといけないことだ。
そして、魔法の杖ではないのでITを導入すれば何もかも解決ということは決してない。ITを道具に会社をどうやって動かしていくかがとても大事なこと。
従業員や顧客などの人のためになるものでないといけないから、技術先行で取り組むべきことではない。
更に、事業環境が激しく変わるこの時代に、最初から大きな投資をしてしまうのは危険。だから、ITを企業戦略として位置付けて新しい取り組みをする場合は「小さく生んで、大きく育てる」という方針でいかないといけない。

★ここでは本公演の概略をまとめて話されていました。
「IT活用が企業戦略」というのは同意できます。だから、分かる分からないということではなく経営者はITについて勉強しないといけないってことだと思います。

○ここからマクロなビジネス環境についての講演が続きます。

[2]日本経済の見え方(パラダイム)の変化
戦前と戦後で日本の経済規模は格段に成長したが、何が変わったのだろうか?
<戦前>
・島国で少資源
・一次産業(農業)の規模が小さい(=農地が少ない)
・国土に比して人口が多い(1億人)
だ・か・ら・・・、
日本は資源や土地を増やすために海外に進出しないといけない===>台湾、中国、東南アジアへ
この条件は戦後も何も変わっていない。
し・か・し・・・、
<戦後>
・原材料を輸入して、加工した製品を輸出する「良い港」が日本には多い<=島国だから
・食料を輸入して、農地不足を解消する<=今や農地は余っている
・1億人を超す「労働力」と「消費力」、つまり大きな市場がある。 (イギリス、フランス、ドイツを合わせたのと同じ人口(終戦直後))
つ・ま・り・・・、
国内経済を充実させるだけで十分に経済発展できた。

POINT:「青い鳥は身近にある」

[3]日本経済の展望
GDP 500兆円
税収 50兆円
国家予算 82兆円
人口減少≒120万人(青森県の人口)/年
国家収支(プライマリバランス)を黒字化するには税収を増加させて、国家予算を削減しないといけない。
つ・ま・り・・・、
増税と公共投資減少は避けられない。

[4]日本の経済を色々な数字で考えてみる
「外国人旅行者の受入数」では日本は世界第32位。

日本は世界第二位の経済大国なのに観光では・・・。
旅行者の消費を考えると・・・
試算:例えば旅行者が一人あたり10万円消費すると考えるとフランスは観光で7兆6000億円、日本は6700億円の産業を形成。
(日本人は海外旅行をして、フランスをはじめ多くの国で消費しているので収支はマイナス)
海外旅行者の受け入れを増やすことが経済振興につながる。

道州制の各ブロックで比較すると、各ブロックとも経済規模はヨーロッパ諸国より大きい。

それなのに何故議論が進まないか・・・。「37人の知事の職・利権がなくなるから」

(その2に続く・・・)

手書きに勝る入力インターフェース

2007-11-19 08:38:59 | モブログ
11月19日付けの日経新聞の11面に「オーダーメイド創薬」という企業が紹介されていた。この会社の主力商品の一つに『手書きで入力出来る電子カルテ』がある。特殊な紙とCCD付きの専用ペンで紙に書いたそのままが電子カルテに記録されるというもの。

キーボードやテンキーを使った入力は手書きに比べると不自然らしい。特に日本語の場合は平仮名を入力して変換をするので手間がかかる。それで手書きをそのまま電子化するというアイデアが受けているのだろう。

人が最初に手に入れる入力インターフェースは「ペン(指)」だ。その後に、オーディオ機器などの「音声」。それから「キーボード」。ただ、もっとも自由度が大きいのは手書き。同じ道具で文字でも絵でも表現出来る。特に準備しなくてもサイズを自由に変えることも出来る。

手書きが適度な刺激を与えるという理由もあるかもしれない。今後も手書きを越える入力インターフェースは出てこないのかもしれない。