お城でグルメ!

ドイツの古城ホテルでグルメな食事を。

ライナハ城

2021年12月23日 | 旅行

有名な〈黒い森〉からアウトバーンを挟んで西に〈フライブルクのワイン庭園〉と呼ばれる縦長の Tunibergトゥ二山)が走り、その南の麓にムンツィンゲンという、1973年にフライブルクの一部になった、9世紀から知られたワイン村がある。ライナハ城はその村の真ん中に建っている。17世紀の古文書に初めて記されているのだが、それによると30年戦争で破壊された水城の脇に建てられた大農場であったらしい。その水城の名残りとしては丸い塔が残っているだけである。1750年にカゲネック家が所有することになるのだが、その辺の経緯はよく分かっていないようだ。1870年の火事で殆んど焼けてしまったがすぐに再建され、1969年までこの地域で最も大規模な農場として機能していたとのことである。1991年に広範囲にわたる修復を行い、1993年にはホテル・レストラン、そして会議センターとして開業したが経営状況が思わしくなく、3年程破産機構の管理下に置かれた。そして2007年にホテル・レストラン業での経験が豊かなゲスレル夫妻に所有権が移ってから、施設全体が再び拡張現代化されたのである。2008年にホテル・ライナハ城として開業し、現在では近くにゴルフ場があることからゴルフホテルとして、そして多岐にわたる文化的催しが開催されることから芸術や音楽の愛好者が集まるホテルとしてその名を知られている。

   

敷地への入り口 ・ 中庭

 

中庭に面するホテルの入り口 (左の方) ・ 私の部屋からレストランを見る

 

私の部屋から中庭と入り口を見る

〈城〉という名前が付いているがその外観は農場そのもので、建物の配置はコの字型である。広々としたモダンなロビーにレセプションがあり、立派な洒落たスモーキングラウンジを備えている。スタッフの如才がないが自然な対応が印象的だ。私の部屋へは一度フロントのある建物を出て別の入り口から入る。農場なので城の雰囲気及び城らしき装飾はもちろん全くない。私の今回の旅行は、トゥ二山の麓で最上の快楽をというジュニア・スイートの客室を使う一泊のプランにもう一泊付け加えたものである。部屋はいささか複雑な構造で、入って真正面に衣装戸棚がある。そこから左に行くと寝室兼居間で、右には大きな両開きの窓が付いたバスルームがあり、その横には別空間の広いトイレがある。湯船はないが、驚いたことに2人用サウナがある。スリッパ、バスローブなど十分な備品はもちろんのこと、又しても驚いたことに、この国では非常に稀な歯磨きセットを置いてある。ダブルの洗面台が少々使いにくい超モダンなのが残念だ。寝室は極薄ベージュ色の壁と白色の天井で、濃茶色の骨董家具が置いてある。城ではないので天井は低いが、装飾の少ないすっきりした部屋である。角部屋なので2面に大きな窓があり、朝日が差し込んで明るい部屋だ。

  

私の部屋 1 & 2

 

シャワー と サウナ

しかし夜は、天井にすべてをさらけ出す明々とした光源がないため、スタンド4つによる照明で薄暗くムードのある落ち着いた雰囲気になる。ベッドの上にチョコレートとミントのドロップを置いてあり、テーブルにはチョコレートと数種類の果物のサーヴィスだ。ゲスレル家から挨拶のメッセージもある。さすがホテル文化を謳っている個人経営のホテルで、心遣いが細かいのはレセプションに各度の老眼鏡が用意していることからも分かる。

このホテルにはレストランが3つある。グルメレストラン、この地方の料理を食べさせるレストラン、そして軽いイタリア料理をだすワイン酒場である。私の選んだプランには本来グルメレストランでの食事が入っているのだが、今月は休業ということで、バーディッシェ・ヴィルツスフス(バーデン地方の食堂)という名のレストランで食する。グルメレストランと同レベルの食事が供される、ということだが、私はだんぜん疑いを持っている。

〈食堂〉はグルメレストランの向かいの建物にあり、昔の納屋であるのが一目で分かる造りである。天井は木組みで、暖炉には赤々と火が入っている。ナプキンは白布だがテーブルクロスはなくランチョンマットを敷いていて、気楽に食事が出来る感じのレストランである。女2男1のサーヴィススタッフのうち女1は経験が豊富そうで、ワインに詳しいようだしメニューの流れを暗記している。皆若いがそつのないサーヴィスだ。せっかくワインの産地に来たので地元のワインを頼んだ。リースリングに比べて少し癖のある白ワインだが美味しい。料理が出てくる前に、手持ち無沙汰にしていると思ったのだろう、新聞か何か持ってこようかと訊いてくれる。私としては単にボーッとしているのではなく、頭をフル回転させているつもりだったのだけれども、、、、。

  

初日のレストラン

プランに入っているのは4品のグルメ・コースメニューである。

前菜は大きな皿に、数種類のキノコの炒め物、ジェラチンで固めたキノコの細切れ、パンのカルパッチョ(茶色パンの極薄切り)、そしてサラダ菜が少しのって出てくる。これを薬味の入ったクリームで食べさせるのである。はんなりとした味で美味しい。

次はクルトン(食パンをさいの目に切って揚げたり焼いたりしたもの)が少し入ったクリームスープ。濃厚で熱々で旨いが、どこにでもある料理だ。

このコースのメイン料理はステーキで、ポテトのグラタン、茹でた細長い鞘豆のベーコン巻き、それに茹でニンジンとズッキーニが少し付き、肉に茶色とベージュの混合ソースがかかる。野菜類は美味しいが、肉の味があまりしないし、ソースの味もイマイチである。肉の焼き具合はメディウムとウェルダンの間と言っておいたのに、端の方はメディウムで中はメディウムとレアの間のものが供されたので、3分の1くらい食べたところでもう少し焼いてくれるように皿を返した。少したって男性給仕が新しいナイフとフォークを持って来て、

「今改めて作っているので、お待ちください。」

「えっ、新しく作らなくていいですよ。食べかけてるのをもう少し焼いてくれればいいんです。」

「いいえ、貴方のお望みのように作り直しています。」

そして2、3分待っていると、

「厨房のスタッフが謝っています。これはお詫びのしるしです。」

といって、カシス(スグリ類の一種で酸味が強い)のシャーベットを持って来た。

これ程丁寧な客扱いは初めて経験した。私が開店直後に入店して他の客が来る前に写真を撮ったり、食事中チョコチョコとメモを取ったりしているので、ミシュランか何かの調査員と思ったのだろうか。

デザートはチョコレートケーキとシャンペンアイスクリームと各種果物で、芸術的に盛り付けている。ケーキがカステラみたいな生地で美味しい。

経営者のゲスレル氏がテーブルを廻って挨拶をしている。彼とは滞在中偶然にも数回顔をあわせて短い言葉を交わしたりして、チェックアウトの時に握手をして別れた。やはり経営者自身の目が行き届いているホテルは順調に稼動していると思う。

朝食の部屋も昔の納屋か馬小屋かと思わせる造りだが、モダンかつ複雑に改築していてガランとした感じはない。このホテルのいろいろな所と同様に、ここにも抽象画がかかる。静かなピアノ曲がやっと聞こえる。若いスタッフのしっかりした丁寧なサーヴィスが心地よい。朝食のビュッフェは豊富な種類の食材を用意している。発砲ワインもあり、ミルクに関して言うと、普通のミルクの他に低脂肪のミルクそして豆乳もある。各テーブルに置かれたゴミを入れる深皿などに細かい心遣いが感じられる。

 

朝食の席

この時期としては宿泊客が多いが、殆んど皆セミナーの参加者のようだ。複数のセミナーが進行しているようで昼間も活気がある。

カフェテリアでサクランボ・チーズ・ケーキを昼食として食べたが、ここに特筆するほど美味しかった。昨晩のデザートのチョコレートケーキのことを考えあわせると、このホテルには腕のいいケーキ職人がいるのだろう。

2日目の夕食はワイン酒場で供されるイタリア料理にした。大きい町にありそうな仕様のレストランである。キッチンからパンと薬味入りオリーヴ油がサーヴィスされ、塩を少し振って食べると意外なほどイケル。

アンティパスト(イタリア風オードブル)の盛り合わせを頼んだ。ありふれたイタリアレストランで供されるのと大差はないが、オリーブ油の量が少なくてダボダボしていないので全部美味しく食べられた。

そしてメイン・ディッシュは薬味入りリゾットだが、薄めの小さいステーキが5枚付いていて茶色のソースで食べさせる。肉によく火が通っていて私好みだ。〆のエスプレッソは美味しくなかった。

 

2日目のレストラン

給仕の女性に、

「コックさんはイタリア人ではないのでしょ?。」

「はい違います。でも彼は愛情を込めて料理しています。」

そのつもりは全くなかったのだが、オリジナルでないイタリア料理を私が非難したとでも思ったのか知らん。悪いことをした。客の扱いは5星レベルだと思うが4星に甘んじているホテルである。最近流行のプール、ウェルネス、そしてマッサージの設備が充実してないから5星をもらえないのでないのだろうか。

 

〔2012年1月〕〔2021年12月 加筆・修正〕

 

 

 

 

 


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