たった一晩の同居人だったが、本当に楽しい連中だった。
みんな本当にドロップアウト組?
底辺で笑いあう、この雰囲気は居心地がいい。
ライダーはみんなで佐多岬を目指す事となった。
ただ、きのう一緒に走ったVTの藤崎さんとはお別れだ。
目的地は決めていないが、北上してみるとの事。
たった1日の連れだったが、やはり別の道を行くのは寂しいものだ。
みんなでVTさんを送った後、DTさん、CBXさん、CBさんと4人で出発する事にする。
今日も天気は悪いようだ。
小雨の振る中、4台のツーリングが始まった。
海岸線を下ると、最南端佐多岬の前に、都井岬と言う東に張り出した半島に出る。
車もほとんど通らない道を、4台のバイクは丘を駆け上がっていく。
目に入る景色は、どこか南国を感じさせ、小雨は降っているものの、寒さもない。
左に海を見ながら走るが、時折右手の丘に馬が現れる。
牧場と言うような柵もない箇所に、突然現れる大きな黒い馬。
猿もバイクを逃げるように丘の向こうに駆け上がっていくのが見えた。
野生なのか?
もしかしたら馬も。
お前達は自由だなぁ・・・。
勝手な人間は、勝手に馬が楽だと決めつけ、大人ぶってみたりもする。
自由という言葉にあこがれているのだろう。
何にも縛られていないのに、ありもしない縄を脱ごうと苦しみぬく。
自由・・・本当のところは何も分かってはいないのだ。
芝の広がる丘の上に立つと、そこが都井岬だ。
切り立つ断崖の遥か遠く、ぼんやりと島が見える気がする。
昼食をとると、今回のたびの目的地でもあった、本土最南端佐多岬だ。
都井岬からの道は、細い山間の道を右に左に切替す厳しい道。
俺が先頭を走ることが多かったが、途中道を見失った。
自分がどこにいるのか分からない。
山に囲まれているので、方向感覚も麻痺。
しばらくトロトロ走っていると民家があり、おばあちゃんが畑仕事をしていた。
佐多岬への道を聞く。
本当に親切に教えてくれた。
なので、どうしても口に出せなかったのだ。
方言がきつくて、何を言ってるのか、1割も分からなかった。
期待を込めて他の3人の顔色を窺うも、全員ポカンとした顔。
ありがとうの気持ちだけこめて、勘に頼って道を進めることとした。
山間を突然抜けると、そこには古ぼけた灯台が見えた。
そこが本土最南端佐多岬。
着いた・・・。
とりあえずの俺の目標地点。
辿り着いたか。
時間は既に4時。
目的地に着いたという嬉しさも半減。全員その日の宿の事を考え真っ青になる。
この場所から戻るとなると、既に時間は押し気味だ。
来た道を考えると、夜間の運転は相当厳しいはず。
感慨にふける間もなく、写真だけ撮って踵を返す事とした。
DTさんは、佐多岬で野宿するとの事。
この場所で一人野宿か・・・。
どうするかと悩んだ結果、今夜もユースを目指す事とする。
この場所から、鹿児島の錦江湾を渡るフェリーがある根占まで結構な距離があるが、案内にある最終フェリーは6時20分。
かなりきわどいが、勝負をかけてみる。
この勝負にCBさんも乗ってきた。
二人で錦江湾向こうの指宿ユースを目指す。
慌てたくないというCBXさんは桜島ユースへ。
また会おう。
きっと守れない約束と分かっていながら、軽く握手して分かれた。
俺とCBさんは最短のルートを地図で検討。
山道を飛ばしに飛ばした。
時計を見ると6時を過ぎている。
港は見えるが、フェリー乗り場が分からない!
最後のプッシュと飛ばしていると、左折するとフェリーと言う看板を発見。
猛スピードで港に入った。
薄暗い港。
目標物がない大きな港。
どこだ。
フェリーはどこだ・・・。
あっ!
突然目の前に道の切れ目が見えた・・・。
その向こうにあるであろう海も間近に感じる。
ブレーキをフルで掛ける。
間に合うのか?
激しくかけたブレーキで暴れるバイクを抑え付ける。
後ろを走っていたCBさんは大丈夫か?
自分が絶体絶命の状況でも、不思議と人の事が心配できた。
止まった。
目の前3m先が海だ。
高さもある堤防だったので、落ちたら旅は終わっていただろう。
俺の直ぐ後ろでもホッとしているCBさんがいた。
助かった・・・・。
照明の暗さと、バイクのライトの暗さ。
そして目標物がない港で遠近感が狂ったのだろう。
もう一度止まれるかといったら自信がない。
止まったバイクを支えきれないほど、全身から力が抜けた・・・。
フェリーには何とか間に合った。
と言うか、乗るであろう俺達に気付いたフェリーが待っていてくれたようだ。
小さなフェリーだったが、中に入ると人で溢れかえっている。
旅人も多い。
ここで、同郷の茨城から来ている自転車のりに会う。
お互いに
“こんなところで茨城県人と会うとは・・・”
とフェリーの中で盛り上がった。
指宿ユースは大きな宿だった。
CBさんと隣のベットを割り当ててもらう。
既に暗くなった町なので、出かけるでもなく、ベットに横になりながら話をする。
知らない人とこんなに話が出来るんだな。
人と会うことが少ないソロライダーをやっているのに、こうして毎日誰かと走っている。
不思議な縁だ。
人と話すのが苦手な俺。
自分の中に入ってこられるのが嫌な俺。
一人が一番気楽でいいと思っている俺。
多分どの俺も本当の俺だ。
でも何か最近の俺は変だ。
人と話したくてしょうがない。
この部屋で寝ている全員と話がしたい欲求に駆られる。
俺はどうしちゃったんだろう。
目的地の佐多岬には到着してしまった。
旅を終わらせて、宮崎からフェリーで東京まで戻るのは簡単だ。
でも、この居心地のよさからは去りがたい。
旅をいつまで続けるのか。
それが頭を過ぎった。
つづく・・・・。
-----------------------------------
天気:雨のち快晴
時間:8:00~19:00
距離:290km
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みんな本当にドロップアウト組?
底辺で笑いあう、この雰囲気は居心地がいい。
ライダーはみんなで佐多岬を目指す事となった。
ただ、きのう一緒に走ったVTの藤崎さんとはお別れだ。
目的地は決めていないが、北上してみるとの事。
たった1日の連れだったが、やはり別の道を行くのは寂しいものだ。
みんなでVTさんを送った後、DTさん、CBXさん、CBさんと4人で出発する事にする。
今日も天気は悪いようだ。
小雨の振る中、4台のツーリングが始まった。
海岸線を下ると、最南端佐多岬の前に、都井岬と言う東に張り出した半島に出る。
車もほとんど通らない道を、4台のバイクは丘を駆け上がっていく。
目に入る景色は、どこか南国を感じさせ、小雨は降っているものの、寒さもない。
左に海を見ながら走るが、時折右手の丘に馬が現れる。
牧場と言うような柵もない箇所に、突然現れる大きな黒い馬。
猿もバイクを逃げるように丘の向こうに駆け上がっていくのが見えた。
野生なのか?
もしかしたら馬も。
お前達は自由だなぁ・・・。
勝手な人間は、勝手に馬が楽だと決めつけ、大人ぶってみたりもする。
自由という言葉にあこがれているのだろう。
何にも縛られていないのに、ありもしない縄を脱ごうと苦しみぬく。
自由・・・本当のところは何も分かってはいないのだ。
芝の広がる丘の上に立つと、そこが都井岬だ。
切り立つ断崖の遥か遠く、ぼんやりと島が見える気がする。
昼食をとると、今回のたびの目的地でもあった、本土最南端佐多岬だ。
都井岬からの道は、細い山間の道を右に左に切替す厳しい道。
俺が先頭を走ることが多かったが、途中道を見失った。
自分がどこにいるのか分からない。
山に囲まれているので、方向感覚も麻痺。
しばらくトロトロ走っていると民家があり、おばあちゃんが畑仕事をしていた。
佐多岬への道を聞く。
本当に親切に教えてくれた。
なので、どうしても口に出せなかったのだ。
方言がきつくて、何を言ってるのか、1割も分からなかった。
期待を込めて他の3人の顔色を窺うも、全員ポカンとした顔。
ありがとうの気持ちだけこめて、勘に頼って道を進めることとした。
山間を突然抜けると、そこには古ぼけた灯台が見えた。
そこが本土最南端佐多岬。
着いた・・・。
とりあえずの俺の目標地点。
辿り着いたか。
時間は既に4時。
目的地に着いたという嬉しさも半減。全員その日の宿の事を考え真っ青になる。
この場所から戻るとなると、既に時間は押し気味だ。
来た道を考えると、夜間の運転は相当厳しいはず。
感慨にふける間もなく、写真だけ撮って踵を返す事とした。
DTさんは、佐多岬で野宿するとの事。
この場所で一人野宿か・・・。
どうするかと悩んだ結果、今夜もユースを目指す事とする。
この場所から、鹿児島の錦江湾を渡るフェリーがある根占まで結構な距離があるが、案内にある最終フェリーは6時20分。
かなりきわどいが、勝負をかけてみる。
この勝負にCBさんも乗ってきた。
二人で錦江湾向こうの指宿ユースを目指す。
慌てたくないというCBXさんは桜島ユースへ。
また会おう。
きっと守れない約束と分かっていながら、軽く握手して分かれた。
俺とCBさんは最短のルートを地図で検討。
山道を飛ばしに飛ばした。
時計を見ると6時を過ぎている。
港は見えるが、フェリー乗り場が分からない!
最後のプッシュと飛ばしていると、左折するとフェリーと言う看板を発見。
猛スピードで港に入った。
薄暗い港。
目標物がない大きな港。
どこだ。
フェリーはどこだ・・・。
あっ!
突然目の前に道の切れ目が見えた・・・。
その向こうにあるであろう海も間近に感じる。
ブレーキをフルで掛ける。
間に合うのか?
激しくかけたブレーキで暴れるバイクを抑え付ける。
後ろを走っていたCBさんは大丈夫か?
自分が絶体絶命の状況でも、不思議と人の事が心配できた。
止まった。
目の前3m先が海だ。
高さもある堤防だったので、落ちたら旅は終わっていただろう。
俺の直ぐ後ろでもホッとしているCBさんがいた。
助かった・・・・。
照明の暗さと、バイクのライトの暗さ。
そして目標物がない港で遠近感が狂ったのだろう。
もう一度止まれるかといったら自信がない。
止まったバイクを支えきれないほど、全身から力が抜けた・・・。
フェリーには何とか間に合った。
と言うか、乗るであろう俺達に気付いたフェリーが待っていてくれたようだ。
小さなフェリーだったが、中に入ると人で溢れかえっている。
旅人も多い。
ここで、同郷の茨城から来ている自転車のりに会う。
お互いに
“こんなところで茨城県人と会うとは・・・”
とフェリーの中で盛り上がった。
指宿ユースは大きな宿だった。
CBさんと隣のベットを割り当ててもらう。
既に暗くなった町なので、出かけるでもなく、ベットに横になりながら話をする。
知らない人とこんなに話が出来るんだな。
人と会うことが少ないソロライダーをやっているのに、こうして毎日誰かと走っている。
不思議な縁だ。
人と話すのが苦手な俺。
自分の中に入ってこられるのが嫌な俺。
一人が一番気楽でいいと思っている俺。
多分どの俺も本当の俺だ。
でも何か最近の俺は変だ。
人と話したくてしょうがない。
この部屋で寝ている全員と話がしたい欲求に駆られる。
俺はどうしちゃったんだろう。
目的地の佐多岬には到着してしまった。
旅を終わらせて、宮崎からフェリーで東京まで戻るのは簡単だ。
でも、この居心地のよさからは去りがたい。
旅をいつまで続けるのか。
それが頭を過ぎった。
つづく・・・・。
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天気:雨のち快晴
時間:8:00~19:00
距離:290km
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バイクで帰るだけが手段ではなかったなぁ。
さて最南端まで来てますが次はどうなる?
しかし事故らなくてよかったですね。
そんな終わり方はキツイですよ。
怪我して実家に送還だなんて。
そこでどうするのか。
興味津々です。
しかし、ホントに事故らなくてよかったですね。
新しい発見・・・なんだ
一人で旅すると
イロンナ事に遭遇して
一人で考えて
一人で対処する
それが一人旅・・・旅人ですね
人恋しく・・・なるのって
心が求めるんでしょうね
それにしても
事故らなくてほんと!幸い
バイクを支えられないほど・・・っていうのが
手に取るようにわかります
よかった!収穫多いよね♪
一人で旅に出ると
本当に色んなこと考えますよね
旅先でのひとつひとつの出会いに意味があるように感じたりして。
畑のおばあちゃんとの一瞬のふれあいとか
旅人にとっては非日常でも
そこで生活する人にとっては日常のヒトコマ
なんだと思うと
何だかちょっと不思議な感覚。
フルブレーキのくだりはドキドキしたよ~
そんな若き日のkawakeroさんに
この人のこんな言葉を送ろう。
「無事家に帰るまでが遠足です。」 ~校長先生~
路面に砂が浮いていて、フルブレーキしたら、フロントが一気に飛びましたからね。
今思っても、よく止まれたなと。
人間、追い詰められると凄い力が発揮されるようです♪
>>rockanddanceさん
あっという間の最南端経験でした。
野宿しちゃえば簡単だったんですけど、ユースホステルの面白さにどっぷりって感じでしたね。
ちなみに、砂風呂で有名な指宿ですが、当然の様にスルーでした(笑)
>>kisshさん
あくまでも“とりあえず”の目標だったんですよね。
達成感はまったく有りませんでした。
それよりも、夕闇の恐怖で(笑)
ユースは楽しかったなぁ。
>>cocoさん
とにかく毎日何かしらの出会いがあって、ワクワクし通しだったと記憶しています。
友達と言うより、同志って感じですかね。
旅行と言うより、旅といいたい。
そんな感慨はありましたね~。
>>jumpさん
あっ、って思ってから急制動で止まるまでは、スローモーションの様に色々頭を過ぎりました。
止まれないな。
バイクは沈むだろうか。
落ちた後は、どこから陸に上がるんだろう。
荷物は駄目になるかな。
それを一瞬の間に考えました。
怖かったぁ・・・・。
家に帰るまでが旅ですよね。
校長先生、すばらしい標語ありがとう!