以前、関学グリー~新月会の上手さにはどこも敵(かな)わないと書
いた(→こちら)。
そこにまったく嘘はないが、(ワグネルOBからではなく)新月会の方
から「いくらなんでも褒め過ぎだ」(褒め殺し?)という声が聞こえてき
た。
そこにはあえて書かなかったのだが、関学グリーの演奏は、どちら
かと言えば、「楽譜どおり」派(新即物主義)だ。何回やっても楽譜ど
おりに「同じ演奏」ができる、コンクール向きと言えるのかもしれない
(--余談になるか、一般に合唱コンクールの審査員は楽譜を手元
に置いているという)。
いささか昔の関学グリーの歴史を読んでいたら、関学グリーは合唱
コンクールに出場するにあたって、100本ノックならぬ、「ノーミス100
回」という練習をしていたという。こりゃ、敵わない(笑)。
本番の演奏は一回限りのものだ。
演奏は、「さまざまの条件」(ホール、聴衆、演奏する時刻、ピアノ、体
調、気分、食事、天気、前日を含めた本番前の過ごし方等々、数え上
げればもっとあるだろう。)に規定される。
いくら練習しても、練習と本番は違う。
演奏の真のおもしろさは、アンサンブルに多少の乱れがあったとして
も、「その時」の、「高いレベル」におけるLive性--言葉を変えれば
「一期一会」のおもしろさにこそあるのかもしれない。
アマチュアの合唱では大変難しい(本番でいきなり練習と違う指揮を
されたらついていけない。)が、畑中先生は「僕の棒は毎回違うから、
いつも通りと思うなよ」と言われていた(--具体的には4拍目やフェ
ルマータなど伸びる箇所は要注意で、その時の気分で長さが違って
いた)。
レコード録音が生まれる前は、すべて、演奏=LIVEであった。
しかるに科学の発達により商業録音が生まれて以来、とくに新即物
主義のカラヤン時代からテープを切り貼りする利便性により「何回や
っても同じ演奏」が一定評価されるようになった。ショルティなどは、
私の自慢は何回やっても同じテンポがとれることだとインタビューで
語っていた(--無論、これはこれですごいことだけれど)。
スタジオ録音に「抵抗」したのが、バーンスタインだ。LIVEによる通し
録音をベースにしていた。--「最小限の」修正(手直し。テープの
切り貼り)はしているだろうけれど。
「今更ながら」ではあるが、逆に何回やっても同じ演奏になる(--と
いうことは本来ありえないが)のは、ある意味ではおもしろくない・・・・・・
のかもしれない。
左より
1.フルトヴェングラー/バイロイト祝祭(管)
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
2.バーンスタイン/ベルリン・フィル
マーラー 交響曲第9番
いずれも文字どおりの「一回限り」のLIVE録音。
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