犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

犬旅 長野その2 食卓監視員たち

2016年09月27日 | 犬旅・おでかけ

我が家には食卓監視員がふたりいる
普段はリビングへの立ち入りを遠慮していることもあり、ふとめ(左)のみが働くのだが、旅先ではおふたりともに大活躍
(これは翌朝の朝食の様子)



温泉を楽しんだ後は優雅にもお部屋食
おとうさんは地酒を2種類頼んで、もちろん私は生ビール



御給仕にきてくださったのは宿のおかみで、犬好き
もうなくなったようだけれど、ご自身の飼い犬たちの話で盛り上がる
柴とハスキーのミックスの子がいたそうで、こんちゃんを見る目があたたかい



身の回りにも何人かいるからわかるのだが、この世には無条件で犬から好かれる人というのがいる
おなじ特徴もないし、特に匂いがするわけでもないが、何か犬にしかわからないものが出ているのかもしれない



ふとめちゃんは、どこの宿でも『お部屋に入ってくる人はみんな敵!』とみなし、吠えかかる
そのせいで、どこへ行っても『布団は自分たちで敷きますので』ということにしているのだが、不思議なことに、この宿の女将さんには、最初こそ警戒していたものの、部屋で犬話をしているうち、すっかりうちとけ、心開いたのである




朝ごはんは居室ではなく、個室のお食事部屋へ
そこでもおかみさんが来てくれて、ふとめはとてもうれしそうに尻尾を振った



部屋を変えると警戒レベルが上がるので、もしかして、と心配したが、杞憂だった




二日目の夜は、温泉から返ってくると、お父さんがにこにこしている
オレコはずっとふすま戸の前で横たわり、じ-っと誰かを待っているので、はじめは「お母さんを待ってるんだろう」と思っていた
ところが違った
しばらくしてわかったのだが、オレコが待っていたのはお母さんではなく、おかみさんだったのである



昨日のことで、おかみさんが夕ご飯を持ってくるとわかっていて、おかみさんが来るのを楽しみに、ふすまを見つめながら、じーっと待っていたのである
そしてふすま戸の向こうからおかみさんの声を聴き、立ち上がって尻尾をぶんぶん振り、大喜びで迎え入れたそうな



片づけの段になり、別の人が下げに来ると、おかみさんが来ると思ってオレコは走って迎えに行き、違うのでびっくりしつつ、やっぱり吠えた
すみません、頭を下げていたが、私の心は申し訳ない気持ちより、驚きでいっぱいだった



オレコが一瞬でこんなに心を開くなんてねー



あとでおかみさんにこのことを話し、こんなことは初めてで、家族みんなでとてもびっくりしている、と伝えた
おかみさんもなんでだろうと目を丸くして驚いていたけれど、ちょっとうれしそうだった



そんなおかみさんが、自分の犬と似ている、といって、こんちゃんを嬉しそうに見て、笑う
そして「14歳じゃなくて、16歳くらいじゃないか」というのだった



このときちょうど台風(低気圧)が次から次へとやってきたせいで、体調が悪かったこともある
いつもの元気なときと比べると、確かに覇気がなく、かなり老けて見えるが、この人の言ってるのはそんなことじゃないとわかった



多分、犬の『老いの過程』で、いまどのあたり、というものが、おかみさんには見えたのだろう
実際の年齢が11歳いや14歳だったとしても、「犬の人生の16歳のところまで到達している、という意味だ
思い当たることがあった



今までしなかったようなことをするようになったり、たまたま見た1年前の写真にもっと黒い毛が多くて驚いたこととか、日々の暮らしの中で、いってみればごく些細なことだけれど、こんちゃんの変化を感じていて、「そうかもしれない」という気持ちが深まった



11歳くらいかな、というのが14歳になり、今は、16歳と言われれば、納得してしまう
年令不詳でやってきて、悪かった状態からどんどんよくなっていき、健康と若さを取り戻したために、なんとなく、年令のことを忘れていたけれど、本当はもしかしたら、14歳ではなく、15歳とか、16歳とか、そういう年齢なのかもしれない




いや、まだまだ元気だし、調子のよいときは小鹿のように走る
足腰は徐々に弱ってきているけれど、歩調もしっかりしているし、何より散歩が大好きだ



日々の変化についての具体的なことはまた別の折に書くとして、少しずつ、少しずつ、去年とは違う、これまでと違う、ということが重なり、夏の初めごろから、私の中で、ある思いが少しずつ芽生えていた
こんちゃんを連れて、旅ばかりしているのは、そのためなのである



一日目の夜は、着いてから宿へ直行だったので、温泉街を犬たちとお散歩
小さな温泉街なんだけれど、急な坂道こみちに沿って、昔ながらの古い宿が立ち並ぶ
金田一さんでも泊っていそうな、戦前の趣を残したものもある
たまに浴衣姿のひとたちとすれ違い、からんころん、と下駄の音が坂道に響き渡る
なかなか情緒豊かで、居心地がいいところだ
町に1軒しかないコンビニに寄り、買いはぐったおやつなどを買い、また来た道を戻って宿にたどり着いた
小雨がぱらぱら振っていた



寝る前にもう一度湯につかり、戻ってくると、オレコもこんちゃんもくうくうと寝息を立てていた


外は雨音が少しずつ大きくなっている


(次回につづく)