
旅日記をつづるとかいいつつさぼりにさぼって、1週間経ってしまったじゃないか、お久しブリンカー(馬の目隠し)。
前回のお話を覚えていらっしゃるだろうか?(本人はもう忘れた)
わたくしたち家族(皮と毛皮の面々)は「暑いぞ埼玉!」から逃れるため、湯けむり薫る標高1200mの白濁温泉街へと旅立った。徹夜続きのお父さんにはからずも運転を任せた私はスタートからゴールまでぐっすりと眠りこけ、目覚めるとそこは小雨降る日光。さらに車を走らせ、奥日光を目指したのでございますが、ひとつだけ問題が。それは旅する前から憂鬱だったこと。
奥日光に至るまでは日本屈指のうねり山道「いろは坂」を越えていかねばならない。しかも第一と第二がある。(ラジオ体操か)
平面地図を見てるだけで胸やけるなんとも酸っぱいうねりぶりに涙目になりつつ、これさえなければ、これさえなければ、と、落武者幽霊のように呟く。
こどものころの修学旅行、大人になってから行った友達との旅行がフラッシュバック、あの坂を乗り越えた後にやってきた猛烈な車酔いと、ビールの匂いも気持ち悪いし旅行なのにもう何もかも楽しくない、足を延ばした那須ハイランドパークでは乗り物なんて乗れるわけがない、っていう、行のような苦しみの記憶がフツフツ甦る。
あれをもういっぺん、もういっぺん・・・。しかも自分も心配だが、いろは坂ビギナーの犬たちの具合が悪くなる可能性が、なきにしもあらずどころか、かなり高い。
うちの子たちは幸いにして車酔いをしない(いやしてるのかもしれないが少なくとも問題は表面化していない)のだが、あの坂だけは例外だ。
四国の山道(←知らない<頭にあるのはどうでしょう由来の情報のみ>くせに)にも勝るとも劣らない。なんとも憂鬱である。
行く前にはなんとか反対側からいけないものだろうか、と画策してみたりもした。(そして行けることは行けることがわかった)

のだが、久しぶりのいろは坂は、思っていたほどつらくなかった。(運転手の腕にもよるのかもしれなかった)
真田丸の上杉家家臣セコム直江のような目をしていたいろはビギナーの犬たちも、そろってなんとか乗り切った。そして戦場ヶ原⇒中禅寺湖に行く前に、まず竜頭の滝に寄ってみることに。車を降り立つとなんとも涼しい爽快な風。降るといっていた雨も上がっていつのまにか青空が広がり(おとうさんは晴れ男)、水の音で若干1名(あるいは匹)、超ハイテンションになっていたけれど、滝だからもちろん遊べない。それでもなんとか遊びたくって、身を乗り出して、ぐいぐいと、水音のするほうへいそぐのだった。人間ひとりならなんてことないが、犬連れでしかも老犬を抱っこするとなるとややしんどい階段をのぼる。ぜえはあいいながら、眺めのいいところで降りて、見学。さらに上に行く道があったが、やめておいた。人が多かったのと、いざとなれば(いやならなくても)、犬たちが飛び込みそうなつくりだったからだ。

春先に行った那須旅ではつくなり入ったレストラン(オープンテラス)で、こんちゃんが数メートル下の小川に飛び込みそうになったのは記憶に新しい。(あれ?いってませんでしたっけ)観光客が多かったし、滝に興味津々の老犬と、期待で胸がいっぱいの川犬が、今にも飛び降りそうで大変だったが、おとうさんがなんとか撮影。私は注意係のため、撮影できず。(ゆえにこの画像はおとうさん撮影)
こんちゃんは何の根拠もないが、「わしは飛べる」と信じているので、つまり危険なので、ものの数分で来た道を降りて行った。また老犬(旅のしょっぱなからハードロードをこなすと後半足がもたない)を抱っこでぜえはあ。
ふとめとおとうさんは腹立たしいほど軽快に降りていく。

戦場ヶ原は犬はダメなので、走る車窓から眺めるにとどめ、中禅寺湖のあたりに食事ができそうなお店があるのを確認してから、ナビがもうすぐそこだというので、まず宿の場所を確認しに行く。もし周辺に食事ができそうなお店があれば、そこでもいいし、ということで、いつもどおりの成り行き任せ。行ってみると「ここでいいかー」というお店は昼の営業時間がもうすぐ終わるところで、もうひとつのお店は「ちょっとなー」という感じだった。(メニューが)

犬たちと湖のほとりを散策して、中禅寺湖のほとりのお店へ。

行ってみるとそこは犬が遊べそうな広場と、おみやげや軽食の店がいくつかあって、そのうちのひとつのお店が、「外のベンチなら(犬)いいですよ」と言ってくれたので、その店で「何か日光らしいものを食べよう」ということに。というのも、宿泊先は温泉は素晴らしいのだが、もっぱら修学旅行で使われるホテルで、どちらかといえば、こだわり旅館のような食の期待はできない。水上や軽井沢に比べると、奥日光は犬連れOKのところ自体が少ないし、外でもそうそう期待できないが、もともと犬のための旅。食はわたしたち人間のもっとも楽しみとするところだが、それより彼らが喜べばいいではないか、という気概であった。

なのだが、小さな野望として、折角だから「宇都宮餃子、食べたいよね」というのがあり、奥日光では湯葉三昧で餃子なんて無理だろうから、帰りの高速で買って帰ろうか、で、家で焼きたて食べるのもいいね、てなことを言っていた。交代で店に入り、メニューを見て、メインはおなじものに決めた。おすすめ定番メニューから、冷製湯葉うどん。日光と言えば、誰がなんといおうと湯葉なのだ。レジでお金を払おうとして、「お!」となる。

餃子があるではないか。しかも青源。話せば長くなるが、もう10年位前になるのかな、週末が休みになり、思い立って宇都宮へ餃子ツアーに行った。一軒目はどこだったか忘れたが、美味しかったように思うが普通の餃子で、「二軒目はちょっと違った感じのにしようよ」ということで、みそだれが有名な店に行った。それが青源だった。青源はもともと昔から味噌屋を営み、その味噌を生かすために、宇都宮名物の餃子を始めたという店なのである。
狭い二階の店で、とにかく待ち時間が長かった。細い階段を少しずつ少しずつ上がる。普段は生ビール命のわたくしが飲んで夫が運転という役回りだが、餃子ばかりは別だった。こればかりはということで、餃子でビールを呑みたかったから、あのときは電車で行ったんだ。帰りの電車も気になるし、さりとて、絶対食べたいし、店のしまい時間も気になるし・・・。だから印象に残っているのかもしれないが、予想外にとても美味しかったのである。

みそだれで青源、そしてここは奥日光とはいえ栃木県、もしかして、もしかして、あの餃子ではないか。しかし私も別段、宇都宮餃子通というわけではないし、青源の餃子にめぐりあったのも大昔、若干の不安がある。私の中で、持ち前の忘れっぽさがキラリと日本刀のように光る。渦巻く不安。なんで奥日光で宇都宮が名物が・・・もしかしたら、もしかしたら、似た名前の店の別の餃子かも…そもそも青源だったっけ?おとうさんは犬たちの番があるのですでにソトである。伝えたい。「青源だ間違いない」と言ってもらいたい。でももうお金を払う段取りだ。ええい。ままよ。どうせ定番メニュー湯葉うどんセットだけでは物足りないに決まってるのだ。
餃子ください、みそだれの、一人前、いえ、二人前で
気付くとうわごとのようにそう言っていて、無意識のままお金を払い、夢遊病者のように店を出た。
何にした?
おなじの
冷製湯葉うどんセット?
餃子も頼んじゃった
へえ
それがね、青源のがあったの!
みそだれの?
そう!
マジで!!!

二人ともわくわくしながらベンチで待った。お店の人たちがお茶を出してくれたり、いろいろ気遣ってくれた。
小さな犬さんが通るとオレコが男気を出そうとするので、フォローしたり、気を抜くと、こんちゃんがぐるぐる巻きになっていたりするので、巻き戻したり。
見上げると空も、青い空になったり、曇ったり、なかなか忙しそうだった。そんなこんなしてる間に、お料理が運ばれてきた。一気に高まるひとふたり。

・・・とても美味しかった!この旅、食においてはこの青源餃子がハイライトといってもいいくらい、久しぶりのそれは、もう、それはそれは美味しかった。

やっと久しぶりに書いたと思ったら2泊3日のくせになかなか進まないけどもう次回につづく。
キャプテン翼(アニメな)のような鈍行展開でじわじわ進む犬旅奥日光シリーズなのだった。