国家よりモルガンが大きいという風刺画
東ヨーロッパでポグロムが行われ、フランスでドレフェス事件があった頃の19世紀の後半、アメリカ大陸では産業の大拡大にまい進していた。南北戦争が北軍の勝利で終わると、アメリカは北部を中心に一大工業国として、石油、鉄鋼、造船などの重工業を中心とする第2次産業革命の時代に入っていた。19世紀後半には工業生産はイギリスを抜いて世界一になっている。その中で、ロックフェラーやモルガンなどのユダヤ人の大財閥が出現した。ユダヤ系巨大資本家は政治をも動かし、業界を独占し、企業は世界的規模にまで発展していった。
開拓者として最初にアメリカ大陸に渡ったのは、ピューリタン革命後のイギリス人ではあるが、ヨーロッパ各地で迫害に遭っていたユダヤ人たちも相次いで新大陸アメリカに渡った。新大陸では移民たちばかりで人種の差はなく、ユダヤ人だろうが、何人だろうが、関係なく働けば働くほど、土地も持て、財産も築けた。元来働き者で蓄財が得意なユダヤ人である。瞬く間に頭角を現していったのは当然の成り行きであった。アメリカの独立宣言は1776年で19世紀の始めには未だ人口よりバッファローの数が多かったというのだが、瞬く間に発展し変貌を遂げて行ったことに驚く。
ジョン・ロックフェラー(1839~1937)
ニューヨークの行商人の子として生まれたロックフェラーは20歳の頃、友人と二人でビジネスを始める。1863年(24歳のとき)に鯨油に替る新燃料として灯油に目をつけ、石油精製業を起こす。その後石油は発電、輸送、自動車には欠かせないものとなり、やがて「スタンダード石油」となり、世界最大の石油会社となる。ロックフェラーは次々とライバル社を吸収し、石油パイプライン、林業、鉄鉱山、鉄道、流通などの分野に手を伸ばし、世界最大の大企業になる。関連する石油製品の製造企業は数百社にも及ぶ。余りに発展したため、独占を防ぐための「反トラスト法」違反に問われ、複数企業に分割されることになるが、彼の総資産は現在の換算では約35.6兆円と推定される。
歴史上、もっとも裕福な男・ロックフェラーは実業界を引退した後、世界屈指の慈善家となる。医学研究、教育、科学、芸術方面に可能な限りの寄付を行った。97歳で死亡したが、その遺産は慈善寄付団体とロックフェラー財団を通じ、現在も受け継がれている。
J・P・モルガン(1837~1913)
J・P・モルガンは銀行家の家庭に生まれ、父から銀行を引き継ぐと積極経営により19世紀末には世界最大の金融業者になる。モルガンは金融から一歩踏み出し、主に鉄道の開発、吸収、再編により莫大な利益を得た。その手法はモルガニゼーションと呼ばれた。1895年のアメリカの鉄道バブルが崩壊し、合衆国財務省が保有する金がヨーロッパに流失した。銀行の取り付け騒ぎが起る恐慌に陥った。時の大統領・クリーブランドはモルガンに救済を申し出てきた。モルガンは銀行団を組織し、財務省の発行する1億ドルの債権を引き受けた。資本の引き上げに走ったヨーロッパの信用を回復し財務省を見事に救った。
モルガンはカーネギー・スチールを吸収し、USスチールを設立、海運、電力、通信事業にも進出した。巨大な芸術品コレクションをニューヨークのメトロポリタン美術館とコネチカット州の美術館に寄贈した。関東大震災の後には多額の義捐金を送るなど、日本との関係も深い。一族は現在も健在、アメリカ、イギリスの財閥とは親族関係にもあり、世界の政財界には隠然たる影響力を持ち続けている。
~~さわやか易の見方~~
「火天大有の卦」大有は陽なるもの、大なるものを有り余るほど所有することである。天の真ん中に太陽が輝く象である。順風満帆、何をやってもうまく行く。恐れず、何処までも積極的に前進すればよい。ただ、易の64卦には順番があり、「大有」の次に「謙」がくる。大なるものを有したものは、謙虚になれという教えである。
アメリカの大富豪たちは晩年になると、社会貢献をするという伝統がある。この習慣があればこそ、アメリカン・ドリームも健全なものになる。ギリシャの海運王と言われたオナシスは大富豪にはなったが、社会貢献など何もせず、税金さえろくに払わなかったという。大富豪にして「謙」の精神を持つならば、一族は益々繁栄するのだろう。現在、ユダヤ人の人口は約1350万人で、イスラエルに570、4万人でアメリカに527、5万人であり、殆どこの2国に集中している。アメリカはユダヤ人が発展させたと言っても過言ではない。次回その話をするつもりである。
次ページ:FRBの誕生秘話
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます