
「兌為沢」の卦は、悦ぶであり、悦ばせるである。
「兌は亨る。貞(ただ)しきに利し。」
「兌は亨る」我も悦び、人も悦び、万物は生長発育する。「貞(ただ)しきに利し」大いに悦ぶときは、つい油断し、正しくない道に陥り易いので、それを戒めて正しい道を堅く守っておるのがよろしい。
序卦伝に、「巽は入るなり。入りて後に之を説(よろこ)ぶ、故に之を受くるに兌を以てす。兌とは説ぶなり。」とある。巽の卦は、受け入れてもらうために、巽順であることであった。それが、受け入れられたのであるから、素直に喜んでいる。
沢は山に振った雨が集まり、下へ下へと流れる。沢あればこそ、山を潤し、野を潤し、草木は繁茂する。鳥や動物たちも水を求めて集まる。魚たちも生活することが出来る。人の農業も沢の恩沢を受けている。沢の効用は計り知れない。人間に配当すれば、少女であり、悦び楽しむの象徴でもある。
この卦は、沢(兌)が上下にあり、沢(兌)の性質によって成り立っている。沢(兌)は、1、2爻が陽であり、3爻が陰である。孔子の解説によれば、「剛は中にして、柔は外なり。」和らぎ喜ぶ性質は柔であるが、剛の徳が中にあることが重要だと言っている。人に交わり接することは、まことに物柔らかであるが、その内には剛強にして誠実なる真心が充実しているのである。
この卦について、もう一つ孔子が解説を加えている。「麗澤(れいたく)は兌なり。君子以て朋友講習す。」とある。君子はこの象をみて、それに法り、友達がいっしょに学問を研究し、互いに教えたり教えられたりするのである。
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