
「雷沢帰妹」の卦は、女が男に嫁ぐ。しかし、問題の多い結婚。
「帰妹は、往けば凶。利しき攸(ところ)无し。」
帰妹(きまい)は結婚することであるが、何故凶なのか。それを説いているのである。
前の卦は「風山漸」であった。ゆっくりと進むことであった。卦辞には、「漸は、女歸(とつ)ぎて吉。貞しきに利し。」最大限の誉め言葉である。結婚には男が順序と礼節を重んじて、多くのしきたりを踏んで、時間をかけて、婚礼に至るのである。この結婚は大変良い結婚の仕方であると述べていた。しかるに、今回の「雷沢帰妹」は卦辞に、「帰妹は、往けば凶。利しき攸(ところ)无し。」最悪の言葉になっている。何故か。女の方から一方的に男に走っている。そういう無理な、礼節をわきまえない結婚はよくないと言っている。
この卦は、上が雷であり、下が沢である。雷は動くであり、長男である。沢は喜ぶであり、少女である。つまり、少女が喜んで、活動的な長男に走っているのである。本来、女は男の申し出を受ける立場であると言っている。易は今から3000年前に既に出来ている。時代背景が違うのだから、現代に当てはめるには無理があるかも知れない。しかし、一面からすると、現代にも通じるのではないだろうか。結婚に関しての言葉になってはいるが、この卦は結婚には限らず、社会のしきたりや礼儀作法を述べたものでもある。
序卦伝に、「漸とは進むなり。進めば必ず帰する所有り。故に之を受くるに帰妹を以てす。」とある。「帰する所有り」は結婚して落ち着くことであるから、悪いことではない。結婚しなければ、一族の繁栄はない。しかし、卦辞が最悪なのは、その過程が間違っていると言っている。
「風山漸」と「雷沢帰妹」の他に、男女を表す卦が「沢山咸」と「風雷恆」がある。因みに、卦辞を見ると、「沢山咸」の卦辞は「咸は亨る。貞しきに利し。女を取(めと)れば吉。」
「風雷恆」の卦辞は「恆は亨る。咎无し。貞しきに利し。往く攸有るに利し。」
どちらも良い言葉が付いている。それだけ、男女が恋をし、結婚することは目出度いことと評している。四つの内この「雷沢帰妹」を除く三つには、「貞しきに利し」の言葉がある。正しい道を踏むならば良いということだ。「雷沢帰妹」だけが「貞しきに利し」がない。
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