さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

冷戦時代を語る。(9)ー翻弄されたアラブー

2018-04-12 | 世界史談義


親分、中東の複雑さは並大抵じゃありませんね。結局、オスマン帝国が崩壊し、中東を仕切る大国がなくなったことが原因ですよね。

そうなんだ。これも元はと言えば、英仏の二枚舌外交、いや三枚舌外交のせいなんだ。アラブは当時の列強によって翻弄されてしまったのよ。

ちょっとは知っていますけど、詳しく教えて頂けますか?


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フサイン(1853~1931)

第一次世界大戦の時にな、イギリスの高等弁務官・マクマホンはオスマン帝国を倒すために、アラブの王族ハーシム家のフサイン・イブン・アリーに戦争に勝ったら、アラブの独立国を約束したんだよ。ハーシム家は預言者ムハンマドの孫で、正統カリフ・アリーの末裔なんだな。それで、例のアラビアのロレンスとハーシム家の三男ファイサルとが軍隊を率いて奇襲作戦などでオスマン帝国にダメージを与え勝利に貢献したんだ。

イギリスが約束を破るんですか?

そうなんだ。イギリスはフサインと約束する一方で、中東専門家・サイクスがフランスの外交官・ピコとの間で戦後のアラビア半島の分割を決めていたんだな。ハーシム家はイギリスに騙されたんだ。だから、アラビアのロレンスは裏切り者扱いされ、空しく祖国に帰るんだがな。

ハーシム家はアラブの王にはなれなかったんですか?

いや成れたよ。アラビア半島の全部ではなかったが、ヒジャーズ王国を作ったんだ。ところが列強を裏切り者扱いすると、列強と手を結んだサウド家に奪われてしまうんだ。王家は亡命し、親族のイラクとヨルダンに逃げたんだよ。しかしイラクもヨルダンもイギリスの委任統治領、そしてシリアはフランスの統治領だったし、本当の独立国とはいえないよな。

三枚舌外交の三枚目はなんですか?

それは先日話したイスラエルだよ。イスラエルをアラブの中に作るなんて話はアラブ人たちには寝耳に水の話なんだ。それもイギリスが第一次世界大戦の戦費欲しさにユダヤ人に勝手に約束したんだよ。つまりは、当時の列強が後のことは何も考えずに、自分たちの石油利権なんかでアラブを分割してしまったんだ。紛争が始まるのも当然なんだな。

確かに酷い話ですね。これじゃ、お互いに団結することも難しいですね。今もシリアで戦争が続いていますけど、原因が複雑すぎて、いつ解決するか、心配です。今日はありがとうございました。