KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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別府大分毎日マラソン展望~駅伝はマラソンを〇〇にしたか?

2006年02月04日 | マラソン時評
明日は別府大分毎日マラソンだ。今年で55回目となる。50年を越える歴史のある日本のメジャー・マラソンの中でも、福岡国際とびわ湖毎日は、開催地が何度か変わっているのに、別大は第1回から別府市で開催されている。

もともと、「五輪代表候補選手の記録会」として始まった大会だという。第1回の距離は35kmだった、というのは今となっては驚きである。第9回の優勝者は、当時東京教育大学(現・筑波大学)の築地美孝さん。これが初マラソンだった。東京五輪の前年の第12回大会では、寺沢徹さんが当時のマラソン世界最高記録で優勝。以後、「新人の登龍門」、「記録の別府(別大)」という評価が高まり、今もそれは健在だ。

他の国際マラソンが、五輪や世界選手権の国内予選会と化し、その大会ならではの個性が薄らいでいく中、このような形で大会の独自性を維持しているのが良いと思う。

さて、今回の注目選手、海外からはコース・レコード・ホルダーのゲルト・タイスに、フランスの高速ランナー、モハメド・ウアーディらが出場。このところ日本国内の大会で好調なのが、旧ソ連出身選手。昨年の大阪で優勝したプロコプツカ(ラトビア)、福岡で優勝したバラノフスキー(ウクライナ)に続くかと密かに注目しているのがベラルーシのウラジミール・ツィアムチク。この名前、覚えておくといいかもしれない。

さて、国内からの参加選手だが、彼らを2つのカテゴリーに分けてみたい。

Aグループ
フランシス・ムヒア(愛三工業)
オンベチェ・モカンバ(アイデム)
西田隆維(エスビー食品)
島村清孝(エスビー食品)
前田和之(コニカミノルタ)
沖野剛久(中国電力)
手塚利明(大塚製薬)
伊藤健太郎(協和発酵)

Bグループ
デビッド・カリウキ(九電工)
佐藤智之(旭化成)
佐藤洋平(カネボウ)
福永晃大(トヨタ自動車九州)
水口紀幸(大塚製薬)
高橋憲昭(SUBARU)

それぞれの共通点、お分かりだろうか?

Aグループの選手たちは、先月の元旦のニューイヤー駅伝に出場していない選手であり、Bグループの選手は出場していた選手である。

先月、この欄で書いた、「駅伝有害論」。果たして、AグループとBグループ、どちらの選手が好結果を出すだろうか。

Bグループの選手の中でも、佐藤智之と高橋憲昭は、最長区間を走っている。佐藤は低迷続く老舗の復権を託されている「新・エース候補」というべき存在だし、高橋は、入社1年目ながら、奥谷亘、小林雅幸らを差し置いてエース区間に抜擢された、「スーパー・ルーキー」だ。
今回、「初マラソン・初優勝」の最有力候補と言えそうだ。

「登龍門」と呼ばれてきた別大だが、海外選手にもこの大会から、世界のトップへと昇っていった選手は多い。今回出場のタイスもそうだし、かつてのディオニシオ・セロン、五輪金メダリストのファン・ユンチョ、最近ではサブ5ランナーのサミー・コリルに、元祖留学生ランナーのダニエル・ジェンガらもいる。カリウキ、モカンバ、ムヒアらの走りにも注目だ。
「日本育ち」のケニア人たちも、母国の五輪代表になったエリック・ワイナイナにしろ、ジュリアス・ギタヒにしろ、前述のジェンガにしろ、箱根駅伝は未経験だ。箱根の2区を沸かせた彼らから、マラソンのトップ・ランナーが出てきて欲しい。

さて、Aグループをご覧になればお気づきだろう。4年前の優勝者の西田に、今はチーム・メイトとなった島村。ともに駒澤大の箱根駅伝の優勝にエースとして貢献したランナーである。前田は、今年優勝した亜細亜大が、岡田監督就任後に箱根に復帰した際のエースである。
モカンバの山梨学院大時代の走りをご記憶のファンも多いだろう。ムヒアは「平成国際大」の箱根初出場の立役者だ。

彼らには、
「箱根からマラソン・ランナーが育っていない。」
と嘆くファンの溜飲を下げる走りを期待したくなる。特に、前田和之、彼はチーム・メイトの松宮隆行が30kmロードの世界最高記録をマークした'03年の熊日で2位になっている選手だが、彼が当時のニューイヤー駅伝のメンバーに入れないというのが、コニカミノルタというチームの「恐ろしさ」だと思っていた。マラソンへの準備が十分できていると思いたい。

藤田敦史、西田と続いた駒澤大OBのマラソンでのブレイクもやや停滞気味なので、島村にはここらで「新星誕生」となってもらいたい。

今回の結果で、「駅伝有害論」が正しいかどうか結論づけるのは、もちろん早急なことだ。ただ、今後の東京、びわ湖の出場選手もこのような見方から、優勝者や上位入賞者を予測するのも面白いと思う。

もう、タスキを受け取る仲間はいない。たった一人で闘わなければならない。マラソンは「自分」との闘いではない。「自分」は唯一の味方だ。



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