KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

マラソンが五輪から消える日

2013年09月16日 | マラソン時評
4ヶ月ぶりの更新ということで、何から書き始めようか迷っている。先月の世界選手権にしようか、それとも、多くの人がもはや忘れているボストンマラソンのことにしようかと迷った挙句、やはり、2020年東京五輪決定の話にしよう。

正確に言えば、2020年の五輪を開催する権利が東京に与えられた、ということであるのだが、東京の決定は僕にとっては「意外」の一言だった。「お・も・て・な・し」という今年の新たな流行語大賞を生み出したプレゼンテーションは見ていない。当日、僕は早起きしないといけなかったからだ。五輪よりも自分が出るランニング大会の方が大事だ。

翌朝、長い間連絡を取っていなかった、ランニング仲間からメールが入っていた。「おめでとう!」それで僕は当選のことを知った。

少しばかり気まずい想いがした。僕はこのブログにおいて、何度となく、「もはや日本に、五輪開催の資格無し。」という持論を展開してきたからだ。その理由は、「1964年の東京五輪の記念日を抹消してしまったから。」なのだが、今思えば、五輪開催反対の理由としては弱い。

やはり、東日本震災の復興の遅れ、福島第一原発爆発事故の影響が、反対理由としては説得力があった。五輪を開催するだけの予算があるなら、復興にこそその資金を回すべきではないか。

しかしながら、これまでの五輪開催国でも、「そんな資金があるなら貧困層の福祉のために。」という意見を無視して開催されてきたものだ。

五輪開催決定が決まり一週間、大喜びする人、怒り心頭の人、さまざまだが、原発反対の立場の人におたずねしたい。

「もし、震災も原発事故もなくても、五輪の開催に反対していましたか?」

アンチ自民党(安部政権)で、自民党政権のやることはみんな反対という人でなければ「いいえ」と答える人の方が多い、と見ているが。

いや、僕は決して「反原発」の人たちに嫌味を言っているわけではない。東京での五輪開催の賛否をめぐる議論の中に一つ欠落していることがある事を取り上げたいのだ。

最高気温が35℃に達し、夕刻になれば予報不能の夕立(ゲリラ豪雨なんて、下品な言葉だというツイートを見かけて以来、この言葉は使わないようにしようと思った。)、さらには台風の直撃を受けるリスクの高さ。そんな気象条件の7月下旬から8月上旬の東京が本当に、世界最高峰の競技を開催する都市にふさわしいか?

特に屋外競技、このブログのメインであるマラソンにおいては、東京でのマラソンは「過酷」意外の何物でもない。かつて、真夏の東京で行われた1991年の世界陸上選手権のマラソンにおいて、日本が初の金メダルを獲得したから、東京開催はノープロブレム、とは思わない。出来れば、記憶も低く、湿度の低いところで、ランナー本来の実力を発揮できるようなレースを見たい。

今回のIOC会議では、一度は五輪種目から除外されかかった、レスリングの存続が正式に決められた。古代オリンピックから続く「伝統の種目」が存続の危機に曝されていたのだ。

マラソンだって、どうなるか分からない。

世界の主要大会は、アフリカの選手が上位を独占する現状。だいたい、ソフトボールが五輪から除外された理由も、「特定の国(アメリカ)ばかりが金メダルを獲得するから」では無かったか?北京で日本が金メダルを獲得しても既に手遅れだったのだ。

「競技時間が長過ぎる種目」も敬遠される。バレーボールやバドミントンなどは、五輪のために競技時間を大幅に短縮するよう、ルール変更を強いられた。

「集団の中の位置取りと駆け引き、そして、スパートをかける一瞬の、稲妻のような瞬間」を見る楽しみが分からぬ人には、マラソンなど退屈極まりないものにしか見えないだろう。今のIOCのニーズに、マラソンというスポーツは不適合になっているではないか。そして、追い討ちをかけるのが、気象条件である。放射能の除洗について、この7年で画期的な手段が開発され、原発事故の悪影響の懸念が払拭されたとしても、真夏の東京のような悪条件下でのマラソンを多くのランナーが辞退することはあり得る話だ。

そして、いざ本番のレースで、熱中症によるリタイアが続出したとすれば、マラソンの五輪種目存続は危うくなる。

今回の東京の五輪開催決定で明らかになったのは、開催地の選考において、気象条件や環境よりも「資金力」が重視されるということである。2024年以降の開催地には、中東のドバイやドーハ、ASEAN諸国からバンコクやジャカルタ、ホーチミンも名乗りを上げるかもしれない。それらの都市の8月に、マラソンが行えるだろうか。

1995年の福岡大会でトップを走る女子ランナーが熱中症でリタイアして以来、マラソンが実施されなくなった、ユニバーシアード大会と同じ道を五輪もたどる日が来るだろう。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 再開します。 | トップ | 2013マラソンニッポン回顧 v... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (☆の)
2013-09-17 19:18:33
更新を心待ちにしてました。
かんちゃんの視点はいつも勉強になります。

返信する
私も (HEYTAK)
2013-09-28 22:13:52
期待しております。
返信する

コメントを投稿

マラソン時評」カテゴリの最新記事