KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2013マラソンニッポン回顧vol.2~花(なでしこ)はどこへ行った?

2013年12月31日 | マラソン時評
12月14日発売の「月刊陸上競技」1月号を購入したが、ロードレースシーズンでありながら、表紙が「新世代スプリンター」の桐生祥秀、飯塚翔太、山縣亮太の三人というのはいかがなものかと思った。この3名の座談会が新年号のメイン企画ではあったのであるが、例年なら、横浜国際女子マラソン(前身の東京国際女子マラソン)か、福岡国際女子マラソンの優勝者、ないし上位入賞者が表紙になっていたものである。例外的には二年前にはアジア大会の金メダリストの福島千里が、古くは1995年1月号の表紙を、当時は「日本の長距離界のホープ」だった渡辺康幸氏(当時早稲田大)が国際千葉駅伝を走る姿が表紙になった。まあ、これもコンセプトとしては、今回桐生らを表紙に持ってきたのと同様だろう。

そして、この三人。桐生は高校生で飯塚と山縣は大学生である。これがポイントである。

「スター不在」と言われ続ける日本の女子マラソン。その理由の一つにU-23世代のマラソンランナーがいないせいだということだが、どうしてもスポーツメディアは若い世代のアスリートに注目したがる。日本の女子マラソン界の最初の「スター」(「エース」と同義語にしてもいいだろう。)だった増田明美さんが五輪に初出場した当時、彼女は21歳だった。バルセロナ五輪に初マラソンでいきなり日本最高記録で優勝して代表になった小鴨由水さんも当時21歳と若かった。1990年代以降、日本の女子マラソンは全盛期を迎えるが外国に比べると、日本の女子ランナーたちは皆、若かった。一方で海外、特に欧米のランナーは既婚者、母親が当たり前で、国際試合の先頭集団を見ると、大人の集団に子供が混じっているように見えたものである。実際に1990年代には、欧米のスポーツジャーナリストの中には、日本の女子選手が成長抑制ホルモンを注射しているのではないかと疑っている(かつての共産主義国の女子体操選手に同様の疑惑があった。)人もいたという。

社会の変化はスポーツにも変化を与える。スポーツ文化はその国の生活環境を映し出す。女性の「社会進出」が進み、結婚、出産後も女性が仕事を続けるだけの環境が整備するにつれて、日本の女子ランナーの競技者寿命も延びていった。その事自体は大変いいことだと思っている。

ところが、それに伴い、スポーツメディアが女子ランナーに注目しなくなってきたのである。週刊朝日が今秋の10月25日号にて発表した「本誌独自1000人調査」による、「好きなスポーツ選手」のアンケートにて、ランクインしたマラソン・ランナーは女子も男子も含めて、高橋尚子さんのみだったのである。まあ、総理支持率の世論調査同様に、どこまで信じていいデータなのかという疑問もあるが、高橋尚子さんの壁があまりにも高すぎて、誰もそれを乗り越えられない状況が今尚、続いているのである。

(余談だが、このアンケートに川内優輝の名前が全く挙がっていないのが不思議だった。マスコミの登場機会の多さから見ると不思議である。いや、結局五輪ではメダルを取っていないせいだろうか?「公務員だから」という説もあるが。)

そんな状況の中、「スター」は不在だが、「エース」は育っている。女子マラソン人気の低迷の要因は国内の国際女子マラソンで日本人ランナーが優勝出来なくなったせいかもしれないが、そんな中、今年の三大女子マラソンで唯一、日本人優勝者となったのが名古屋ウイメンズに優勝した木良子である。昨年のロンドン五輪に選ばれるも、16位(ちなみに、2時間27分16秒のタイムは彼女にとってセカンドベスト)に沈む。実は当時、婚約者がいたのであるが、その事が敗因であるかのごとく報じ、「女子マラソンも恋愛禁止を復活させてはどうか?」などという心無い記事を書く週刊誌もあった。

その婚約者と入籍したものの、競技を続行。そして、名古屋の優勝で代表に選ばれた今夏の世界選手権では見事に4位入賞。中傷記事に対して落とし前をつけて見せた。

世界選手権では、福士加代子が銅メダルを獲得した。これは、今回日本が獲得した唯一のメダルであったのだが、一般誌の話題にはならなかった。福士は31歳、木は28歳のミセス、来年の大阪で引退を表明し、今夏の世界選手権、個人的には「4人目の代表」に選出してもよかったのではと思えた「ママさんランナー」赤羽有紀子は35歳。「大人の女性たちが活躍する大人のスポーツ」という見方は、まだ定着していないように思う。

今年の日本選手権の後、写真週刊誌が「美人アスリート」の特集を組んだが、確かに、短距離やフィールド競技の選手にグラビア映えするアスリートが増えてきた。しかし、その特集で取り上げられた選手の半分は世界選手権の参加標準記録を満たしていなかった。

競技そのものの注目度を高めるためには、少々実力不足でもルックス先行のアイドル的なランナーも必要なのだろうかと思えてきた。それこそ、かつての「ビーチの妖精」みたいな選手が女子マラソン界にもいればどうかとも思えてきた今日この頃である。

夕刊紙のコラムや、箱根駅伝のシンポジウムで、「駅伝ファン」を自称する文化人からも出た話が、「箱根駅伝に女子区間を設けてはどうか?」というものである。馬鹿げた与太話と一蹴したいが、一方で、スポーツライターの武田薫氏が、女子駅伝は最長区間でも10km前後なので「マラソンにつながる強化になっていない。」という点を指摘していたのを読むと、いずれはマジで検討されるテーマになるかもしれない。

ともかく、女子マラソンは今、人が足りない。

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2 コメント

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さて… (HEYTAK)
2014-01-20 22:10:19
「レベルが下がった」「人が足りない」…
理由を挙げるだけなら素人にもできますが、実際どうしたら良いのでしょう。
どこか1チーム複数のマラソン選手が活躍する実業団が出てくれば突破口になりそうな気がします。
候補は…やはり天満屋orユニバーサルでしょうか。
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救世主は? (かんちゃん)
2014-01-26 00:06:35
新谷仁美さんが引退を表明したのに、驚き、がっかりしています。彼女のマラソン再挑戦を楽しみにしていましたから。今は、宮原さんや小島さんが立て続けに引退を表明した1990年の初め頃のような状況でしょうか?しかし、その翌年には東京世界陸上での山下佐知子さんの銀メダル、翌年には有森さんのバルセロナ五輪での銀メダルがあったんですよね。
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