KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

検証:箱根駅伝未経験者のマラソン記録ランキング2021

2021年02月05日 | 記録データ・ランキング
「箱根駅伝役立たず論(我ながら、ずいぶんだぜずいブンブブンなフレーズ)」が信じられる根拠として、「戦後のマラソン五輪メダリストは全て箱根駅伝未経験」というのともう一つ、2010年当時は5000m、10000m、マラソンの日本記録保持者はいずれも箱根駅伝未経験者という事実もあった(5000mは松宮隆行、10000m、マラソンは高岡寿成)。1500m、3000mSC、ハーフマラソンの日本記録保持者はいずれも箱根駅伝出身者なのだけど、その点はあまり顧みられない。2021年現在、陸上競技の長距離種目の日本記録保持者は全て箱根駅伝経験者となっている。

「マラソン界に於いて、高卒と大卒(関東)、どちらが強いか?」という検証のために、今回は箱根駅伝未経験のランナーのマラソン記録のランキングを作ってみよう。*を付けたのは当時の日本最高記録。所属は記録達成時の所属先の名称を記した。


1位 高岡寿成(龍谷大~カネボウ) 2時間6分16秒*('02シカゴ3位)
2位 上門大祐(京都産業大~大塚製薬) 2時間6分54秒('20東京9位)
3位 犬伏孝行(城ノ内高~大塚製薬) 2時間6分57秒*(1999ベルリン2位) 
4位 児玉泰介(川内実業~旭化成) 2時間7分35秒*(1986北京優勝)
5位 油谷 繁(美祢工業~中国電力) 2時間7分52秒('01びわ湖)
6位 国近友昭(光高~エスビー食品) 2時間7分52秒('03福岡優勝)
7位 伊藤国光(上伊那農業~鐘紡) 2時間7分57秒(1986北京2位)
8位 森下由輝(九州学院高~旭化成) 2時間7分59秒('01びわ湖)
9位 前田和浩(白石高~九電工) 2時間8分0秒('13東京4位)
10位 三木 弘(筑前高~旭化成) 2時間8分5秒(1999東京国際2位)
11位 早田俊幸(県立岐阜商業~アラコ) 2時間8分7秒(1997福岡2位)
12位 木滑 良(瓊浦高~MHPS) 2時間8分8秒('18東京7位)
13位 中山竹通(池田工業~ダイエー) 2時間8分15秒(1985広島WC2位)
14位 小島忠幸(西脇工業~旭化成) 2時間8分18秒('04びわ湖2位)
15位 堀端宏行(八代東高~旭化成) 2時間8分24秒('12福岡2位)
16位 小島宗幸(西脇工業~旭化成) 2時間8分43秒(1998びわ湖優勝)
17位 宮脇千博(中京高~トヨタ自動車) 2時間8分45秒('18東京9位)
17位 岩田勇治(福岡工業~MHPS) 2時間8分45秒('20東京23位)
19位 佐保 希(鶴崎工業~旭化成) 2時間8分47秒(1997福岡3位)
20位 奥谷 亘(西脇工業~SUBARU) 2時間8分50秒('06福岡)
21位 森下広一(八頭高~旭化成) 2時間8分53秒(1991別府大分優勝)
22位 宗 猛(佐伯豊南高~旭化成) 2時間8分55秒(1983東京国際2位)
23位 宗 茂(佐伯豊南高~旭化成) 2時間9分5秒6*(1998別府大分優勝)
24位 細川道隆(京都産業大~大塚製薬) 2時間9分10秒('05びわ湖3位)
25位 大家正喜(徳島県東工業~佐川急便) 2時間9分11秒(1997ロッテルダム8位)
25位 清水 昭(鶴崎工業~杵築東芝) 2時間9分11秒(1998別府大分優勝)
27位 森田智行(立命館大~カネボウ) 2時間9分12秒('12びわ湖6位)
28位 松宮隆行(花輪高~コニカミノルタ) 2時間9分14秒('13東京9位)
29位 松宮祐行(花輪高~コニカミノルタ) 2時間9分18秒('05びわ湖5位)
30位 三村 徹(秋田経済大付属高~鐘紡) 2時間9分23秒(1991別府大分3位)
30位 真内 明(鶴崎工業~旭化成) 2時間9分23秒(1997びわ湖4位)
30位 入船 敏(鹿児島商業~カネボウ) 2時間9分23秒('08福岡2位)

設楽悠太が2018年の東京で更新するまで15年破られなかったマラソンの日本最高記録、14年更新されなかった10000mの日本最高記録保持者が関東の大学ではなく関西の、それも全日本大学駅伝の常連でもない龍谷大学出身者だった事が箱根駅伝、若しくは駅伝という競技そのものがマラソンやトラックの強化に何の役も立っていないのではないかという、「駅伝有害論」にまで繋がっていた、設楽に大迫傑、トラックだと鎧坂哲也に村山紘太、彼らの果たした役割は本当に大きい。

児玉泰介の北京での日本最高記録、国際陸連に公認されているものの、「距離が短かったのでは?」という疑惑はずっと残されている。児玉さん自身のインタビューでも、
「中山さんや瀬古さんでも出せなかった2時間7分台をどうして自分が?」
という想いはあったようである。北京の翌年、ソウルで五輪のプレ大会として行われたワールドカップマラソンで2位に入賞して、ソウル五輪のメダルの期待が高まったが代表選考レースの福岡国際では、故障の影響で31位に終わる。しかし、翌年の北海道で2位に入賞、以後1992年のロッテルダムで引退するまで出場したマラソンは、ロサンゼルス、北京、モスクワなどの海外レースも含めて全て10位以内でゴールしている。
「日本最高記録保持者として招待される以上、その責任を果たす走りを心掛けていた。」
のだという。

このランキングで面白いなと思ったのは、宗兄弟に松宮兄弟、日本のマラソン界を代表するツインズがちょうど並んでいるところ。

このランキング作成はけっこう楽しかった。自分がマラソンを熱心に見始めた1990年代の半ばから2000年代後半に掛けての大会の記録が多く、リアルタイムでレースを見ている物が大半で、懐かしかった。そして、1990年代の旭化成のランナーたちの充実ぶりが素晴らしい。

犬伏孝行の、それまでの自己ベストを6分近くも更新するベルリンでの日本最高記録のニュースは衝撃的だった。NHKの大河ドラマが終わった後の8時45分のニュースで伝えられたのを今でも覚えている。その年の大河ドラマは忘れているのに。その犬伏さんが監督に就任はた大塚製薬から、昨年、監督の記録を抜くランナーが現れた。今はコーチになっている細川道隆の後輩である、京都産業大出身。こうして見ると、大学生ランナーは全て関西の大学出身者である。

そして、このランキングの最も重要なポイントは、2010年以降に生まれた記録が8件しかないという事である。前回の箱根駅伝区間賞獲得者のマラソンランキングに於いては、30件中15件だったのであるが。2010年以降、高卒、関東以外の大学からマラソンのトップクラスのランナーが出現しにくくなっていると言える。

その原因は様々な要因があるだろう。「箱根で燃え尽きる」ランナーがかつてよりも少なくなっていると言えるし、トレーニングの方法、シューズの性能と言った要素もあるだろう。若いランナーの意識も変化していると思う。

こうなってくると「マイナー好み」の僕は、「高卒ランナー」を思い切り応援したくなってくる。このランキングに入っている木滑良(レースの組み立ては、チームメイトでアジア大会金メダリストの井上大仁よりも巧いと思っている)や宮脇千博に岩田勇治、さらには茂木圭次郎(旭化成)らの奮起に期待したいし、昨年の実業団ハーフで1時間0分49秒をマークしている古賀淳紫(安川電機)のマラソン・デビューを楽しみにしたい。


コメントを投稿