KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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検証:箱根駅伝区間賞獲得者のマラソン記録ランキング②

2010年01月11日 | 記録データ・ランキング
前回の記録ランキングについて、あえてコメントはしなかったが、

「かくも多く、マラソンランナーを生み出しているのか。」

と思った人もいるかもしれないし、

「長い歴史があって、毎年のように大騒ぎして、この程度か。」

と思った人もいるかもしれない。まあ、記録ランキングということでは'80年代以降のランナーが大半になるのは仕方ないと思う。昭和の伝説のマラソンランナーとしては、日本人で初めて五輪で入賞(1928年アムステルダム6位、1932年ロサンゼルス5位)した津田晴一郎氏(関西大)、1936年のベルリン五輪の表彰台に立った、もう1人の朝鮮出身ランナー、南昇竜氏(明治大)、戦後初の五輪のマラソン代表となった西田勝雄氏(中央大)、メルボルン五輪のマラソン5位入賞の“ザトペックに勝った日本人”川島義明氏(日本大)、ミュンヘン五輪代表の采谷義秋氏(日本体育大)といった人たちは箱根駅伝で区間賞を獲得している。西田氏は三年連続で5区の区間賞を獲得している。五輪代表にはなれなかったが、日本人初のボストンマラソン優勝者の田中茂樹氏(日本大)、アベベ・ビキラの世界最高記録を破った最初の男、重松森雄氏(福岡大)も、箱根駅伝の区間賞獲得者である。

ちなみに、南氏と川島氏は五輪出場後に、田中氏もボストン出場後の箱根駅伝で区間賞を獲得した。

トラックの五輪代表も箱根駅伝出身者は少なくはないが、区間賞獲得者となると、中央大出身者が多い。古くはベルリン五輪の長距離2種目で4位入賞の村杜講平氏、ヘルシンキ、メルボルンの800m代表だった室矢俊隆氏、東京五輪の代表には3000mSCの横溝三郎氏と猿渡武嗣氏、5000mの岩下察男氏が選ばれたがいずれも区間賞獲得者である。他にはメキシコ五輪の10000m代表の澤木啓祐氏(順天堂大)と鈴木従道氏(日本大)、3000mSCでミュンヘン五輪のファイナリストとなった(9位)小山隆治氏(順天堂大)も区間賞獲得者である。東京五輪の10000mで、選考レースで好成績を残しながら、日本記録保持者だった円谷幸吉氏が選出されて、補欠に回った土谷和夫氏はその後日本大で4年連続で区間賞を獲得している。

長きに渡って破られなかった1500mの前日本記録保持者の石井隆士氏も箱根駅伝の1区で区間賞を獲得しているが、800mのトップのランナーが箱根駅伝で区間賞、というのは現在では考えられないことだ。あるいは、こうした下地があったから日本の陸上界は中距離ランナーにも20マイルの走り込みを課すアーサー・リディアードのトレーニングを抵抗なく受け入れたのかもしれない。現在の800mの日本のトップランナーはリディアード式のトレーニングは行なっていないようだが。

さて、前回のランキングで、日本人のサブテンランナー中13人が箱根駅伝の区間賞獲得者であることをお知らせしたが現在日本最強と言ってもいい佐藤敦之が箱根で区間賞を獲得していない事を意外と思った人もいたかもしれない。そこで、今度は、他の箱根駅伝出身のサブテンランナーの箱根での成績を記してみた。○の中の数字は学年である。


佐藤敦之(早稲田大~中国電力) 2:07:13('07) 1区3位①4区4位②2区2位③
諏訪利成(東海大~日清食品) 2:07:55('03) 4区7位②2区5位③2区5位④
清水康次(大東文化大~NTT中国) 2:08:28('03) 4区5位④
藤原 新(拓殖大~JR東日本) 2:08:40('08) 1区10位①4区4位③
帯刀秀幸(亜細亜大~富士通) 2:08:52('01) 4区11位①2区11位②
大西雄三(駒澤大~日清食品) 2:08:54('08) 7区2位①3区4位②6区2位④
高塚和利(東海大~小森コーポレーション) 2:08:56('04) 10区6位①3区5位②3区12位③4区7位④
清水智也(日本大~佐川急便) 2:09:23('98) 7区6位①9区8位②4区2位③9区2位④
松田和宏(中央大~佐川急便) 2:09:49('03) 2区4位①2区4位②2区2位③2区3位④
新宅雅也(日本体育大~エスビー食品) 2:09:51('85) 4区2位②5区3位③2区3位④
野田道胤(日本体育大~本田技研) 2:09:58('03) 1区14位①1区2位②2区8位③2区3位④

また、箱根駅伝といえば、留学生ランナーの疾走を思い出す人もいるだろう。圧倒的な走りを見せつける、アフリカの留学生ランナーたち、かつて亜細亜大に在籍したビズネ・トゥーラ氏がエチオピア出身であることを除けば、全てケニア人出身であるが、卒業後、日本の実業団で競技を続けた彼らのマラソン成績が意外と良くないのである。
彼らの記録ランキングも作ってみた。なお☆は区間新記録である。


1位 ケネディ・イセナ(山梨学院大~トヨタ自動車) 2:12:19('92) 3区④☆
2位 デビッド・カリウキ(山梨学院大~九電工) 2:16:02('05) 4区④
3位 ビズネ・トゥーラ(亜細亜大~三英社) 2:16:32('98) 1区③
4位 ジョセフ・オツオリ(山梨学院大~トヨタ自動車) 2:16:33('97) 2区①②③
5位 オンベチェ・モカンバ(山梨学院大~アイデム) 2:17:02('07) 2位①④
6位 ステファン・マヤカ(山梨学院大~日立電線) 2:19:11('05) 2区①②


マラソンのベスト記録だけ見ると、大学時代の走りが嘘のような実業団ランナーとしては並以下のタイムである。その原因かどこにあるのかは僕には分からない。これも「駅伝偏重主義」の弊害と言うのであれば、ニューイヤー駅伝に外国人ランナーの出走区間を制限するルールが導入された今後は、どう変っていくだろうか。

今回、ランキングを作成していて思ったことは、箱根駅伝を走ったランナーたちについて、「その後」が語られることも、五輪や世界選手権マラソンの代表についても、そのランナーの「箱根時代」が語られることが少ないということだ。かつての「山の神」、今井正人が現在、どこの実業団に所属しているのか熱心な駅伝ファン以外にどれだけの人がご存知なのだろうか?昨年の北京五輪のマラソン代表、初めて代表全員が箱根駅伝経験者で占められたのだが、その事もさほど話題にならなかった。まあ、北京五輪自体、事前にはまともに開催出来るかどうかがばかりが話題になっていたけれど。2年前に「フリー・チベット!」
と声高に叫んでいた人たちは何処に行ったのだろうか?あのダライ・ラマ師が去年、松山にまでやって来たのには本当に驚いた。

話はずれたが、まあ、箱根駅伝からどれだけのランナーが巣立っていったかも知りもしないで、駅伝有害論など唱えるような事はするまいと思った次第である。


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