KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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二ヶ月遅れのニューイヤー駅伝雑感

2017年03月08日 | 駅伝時評
一月は行く、二月は逃げるの言葉通り2017年も既に六分の一が過ぎた。元旦恒例のニューイヤー駅伝、久々に観戦記をアップしようと思っていたらズルズルと二ヶ月過ぎて、せっかくの美味しいネタも賞味期限が切れて腐りかけてしまったが、このまま生ごみにしてしまうのは忍びないと思い、なんとか料理してみようと思った。

なお、極力、「1月1日の時点での視点」で、書いてみようと思う。


拙ブログの原点であるサイトを立ち上げたのが2001年の元旦。その日開催のニューイヤー駅伝から、総距離が86.4kmから100kmに延長された。その変更によって、勢力図ががらりと変わった。2001年に初優勝のコニカ(現コニカミノルタ)が以後8回優勝、2011年にはそのコニカミノルタのコーチだった佐藤敏信が監督に就任したトヨタ自動車が優勝し、2016年にも優勝、日清食品グループが2度、中国電力が2度、富士通が1度優勝しているが、2000年に初優勝している富士通を除けば、これらのチームは群馬で元旦開催となってから1999年までには、トップ3にも入ったことが無いチームだったのである。

ヱスビー食品の駅伝撤退、もあったが旭化成やカネボウら20世紀の駅伝強豪チームがすっかり色褪せてしまった。長年、旭化成びいきだった自分にとっては残念なことであった。

現在のコースになって以来、外国人ランナーを擁するチーム、箱根駅伝出身(関東の大学出身)ランナーが主体のチームが「有利」になったかのようである。実際、2001年以降に「オール日本人」で優勝したチームは五輪や世界選手権の代表を揃えた中国電力しかない。

高卒のランナーが主体で、外国人ランナーは加入させない方針(陸上部の目的が「日本代表選手を育てる事」だからである。)の旭化成には、つらい時代が続いた。2008年には過去最低の27位まで沈んだ。宗茂監督の時代には、
「関東の大学を出たランナーが、なかなか延岡のような田舎には来てくれない。」
という問題があったが兄の後を継いだ宗猛監督が、体制を改革した。大卒ランナーは、東京に配属し、東京でトレーニングさせて、合宿等で合流させる、というものだった。これによって、岩井勇輝や幸田高明ら大卒の強豪が入社してチームに刺激を与えた。そして、2年前には市田兄弟や村山兄弟ら箱根を沸かせたスター選手が大量入社。かつての、大卒ランナーが入部したら、同年齢の高卒ランナーのあまりの強さに舌を巻いていたという雰囲気が逆転、高卒ランナーたちが、
「箱根駅伝を走った人たちと練習が出来る!」
と刺激を受けるチームになったようだ。村山紘太の10000m日本記録更新、佐々木悟のリオ五輪マラソン代表入りと言った活躍の傍ら、茂木圭次郎の世界ハーフ出場、丸山文裕のサブテンと、高卒ランナーも記録を伸ばしてきた。

4位に入賞した2014年に続いて、今回も全員大卒のラインナップ。昨年も優勝を期待されたが7位に沈んだ。古くは佐藤市雄、僕がリアルタイムで見ていた時期の秋吉慎一や現監督の西正幸や五輪代表になった川嶋伸次のような「駅伝の絶対王者」的なランナーがいないのが、今の旭化成の欠点かと思った。九州一周駅伝も朝日駅伝も無くなった今はそんなランナーは育ちにくいのかと漠然と思っていた。

正月三が日も出勤する仕事に就いて以来、なかなかライブで見られなかったニューイヤー駅伝、今年は久しぶりに休みが取れたのだが、ニューイヤー駅伝、かつてとは様相が変わっていた。

外国人ランナーの起用を2区に限定した現行ルールに、これまで僕は批判してきた。プロ野球で外国人に四番を打たせるな、Jリーグで外国人をFWに起用するなというようなものではないかと。しかしながら、このルールが出来てから外国人ランナーのレベルが向上した。九電工のポール・タヌイ、DeNAのビダン・カロキなどケニアの五輪代表にまで成長している。タヌイが日本で駅伝を走っている、なんてロナウドがJリーグに入っているようなものだぞ。

最長区間(22km)の4区、かつては「マラソンランナー区間」だったが、今は「箱根駅伝オールスター区間」に変わった。今回最高の「目玉」だった、神野大地の駅伝デビューに設楽悠太、服部雄馬、そして「元祖山の神」今井正人、村澤明伸らがしのぎを削る。ここでトップを独走するのがDeNAのルーキー、東海大卒の高木登志夫。資料を見ると5000mのベストタイムが14分台!それでエース区間に大抜擢。それを追うのが、服部、設楽の東洋大学の新旧エース。そして神野大地。箱根駅伝ファンにはたまらない、というよりもどうしてニューイヤー駅伝の視聴率が箱根の半分なのかと思ってしまう。かつてに比べて、「箱根では活躍したものの、実業団では泣かず飛ばずで消えて行ったランナー」は減っているようだ。

旭化成の市田孝。11位で襷を受け取り、次々と順位を上げて行く。1位の高木、2位がトヨタの服部、3位が市田、4位がコニカミノルタの神野と上位が全て実業団1~2年目のランナーばかり。そんな中、トヨタ九州の今井、MHPSの井上大仁、日清の村澤が神野を捉える。「スーパールーキー」が実業団の洗礼を浴びている。一方で設楽が順位を下げていく。富士通もルーキーの横手健が10人抜き。そんなルーキー大活躍の中で存在感を見せたのが今井正人。井上とともに市田を捉え、3位争い。服部もトップとの差を詰めた。襷渡し直前に井上が今井を逆転。

そして、5区。実はここが「真のエース区間」だった。

トヨタ九州、旭化成、MHPS、トヨタによる優勝争い。旭化成の村山謙太がスパートをかけてトップに立つ。2位争いはトヨタ、トヨタ九州による同門対決。トヨタ九州の押川裕貴は青梅30kmで優勝したこともある、ロードレースの巧者。トヨタの早川翼は2年前の優勝のゴールを切った男。そんな強豪との差をじわりじわりと広げていく。それにしても、上り坂でり最初のスパートは見事だった。相手が嫌がるところでスパートをかける、というセオリー通り。しかしながら、押川が粘る。差は広がらない。6区、市田孝の弟、宏に襷が渡る。トヨタ九州との差は7秒。3位はトヨタ、コニカミノルタが、去年のニューヨークシティマラソン4位の山本浩之の力走で4位に浮上。6区、トヨタ九州のルーキー奥野翔弥、一旦は市田に追いつくが引き離される。コニカのエース、宇賀地強が不調で5位に落ちる。トヨタの田中秀幸がトヨタ九州を抜いて2位に浮上。しかし、市田には追いつけない。4位のMHPSは入社2年目の的野遼大がコニカミノルタとの差を広げる。九州チャンピオンは伊達じゃない。富士通も2年目の前野貴行が快走し、宇賀地を捉えて5位に浮上。富士通は7人中5人が初出場、うち3人がルーキーという布陣でこの順位。市田からアンカーの佐々木悟に。2位との差は58秒。トヨタのアンカーはスピードのある宮脇千博。3位はトヨタ九州、4位にMHPS、5位に富士通、6位DeNA、富士通は7位まで落ちる。そして8位は日立物流。日立電線時代から数えても過去最高の順位だ。18位のJR東日本のアンカー、寺田夏生は國學院大時代に箱根駅伝のアンカーでコースを間違え、あわやシード権を逃しかけるところだったランナー。彼に逆転されて、シード権を逃した城西大のランナーも現在は郷里の愛媛に帰り、愛媛駅伝選手権に出場している。首位を独走する佐々木。トップで襷を受けた旭化成のキャプテンの独走風景は本当に久しぶりだ。谷口浩美、西政幸、川嶋伸次、佐藤信之、そんな大先輩たちのように走る佐々木。入賞争いも熾烈だ。コニカミノルタの野口拓也が4位に浮上。しかし5位のMHPS定方俊樹も離されない。彼の父親は安川電機で活躍し、長崎の実業団チームSUMCO TECHXIVの監督まで務めた。佐々木が独走し2位トヨタとの差を広げていく。その分、コニカミノルタとMHPSとの4位争い、中国電力と日清食品との8位争いが熾烈になっている。

佐々木悟、トップでゴール!18年ぶり22回目の優勝、まさしく「古豪復活」。オール日本人チームの優勝も2007年の中国電力以来。2位がトヨタ自動車、3位がトヨタ九州、4位MHPS、5位コニカミノルタ、6位富士通、7位DeNA、そして8位に日清食品グループ。

自分がネットにマラソンや駅伝の話を書き始めて、初の旭化成のニューイヤー駅伝優勝。
今年はいい年になるのではないか、その時そう思った。

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